邪神の呼び声
その戦いは老婆の詠唱から始まった。
「来たれ雷雲よ、落ちよ稲妻よ、我が呼びかけに呼応せよ!コール・ライトニング(招雷)」
たちまちオークの丘の上空に黒い雲が集まりだし、雷鳴と稲光が瞬き始めた。
「コール!」
老婆がライ麦畑を指差すと、そこに天空から稲妻が落ちた。
「コール!」
さらに畑の真ん中に立っていた案山子に、落雷する。
雷の直撃を受けて黒コゲになりながら、スケアクロウは老婆に向かって鎌を投げつけた。
「させません」
盾を構えたメイドが割って入り、飛来した鎌を打ち落とす。
「コール!」
2発目の雷を浴びて、麦わら帽子のスケアクロウが崩れ落ちた。
それを見た、もう1体のスケアクロウが、鎌を振りかざして畑の中を疾走する。
そこへ漁師が割って入る。
「こいつは珍しい獲物だぜ」
肩から背負った鋼鉄製の投網を、走る案山子に向かって投げつけた。
投網に絡め取られ、身動きを封じられた案山子に、老婆が容赦なく雷をたたきつける。
「コール!」「コール!」「コール!」
後には、炭化した棒切れが残っただけであった。
「麦畑は焼き払った方が早そうじゃのう」
老人はそう言って、火炎弾を解き放った。
「ファイアー・ボール!」
「コール!」
炎で燃やされ、雷で掘り返されたライ麦畑の中を、無数の小さな影が逃げ惑っていたが、やがてそれも燃え尽きてしまった・・・
「・・少しやり過ぎではないですか?」
熱気に煽られた神官が、無残な焼畑を見て呟いた。
「なに、あぶり出しを兼ねていたのじゃが、案山子以外は伏兵はおらんかったようじゃの」
老人は平気な顔して、むき出しになった洞窟の奥を覗っていた。
「次いくぞい」
老婆は、今度は召喚の呪文を唱え始めた。
「出でよ、ツンドラの覇者にしてあまたの獣を屠りし者よ!サモン・ツンドラ・タイガー(ツンドラ虎召喚)」
その力ある言葉に呼び出されて、2頭の白と黒のストライプ模様の大きな虎が現れた。
「この2頭に電撃耐性をかけるのですね」
神官がレジスト・エナジー・ライトニングの付与呪文を、ツンドラタイガーに掛けていった。
「そしてエンハンス・ビースト!」
老婆がさらに召喚獣の筋力と耐久力を倍増させた。
「いくのじゃ!シロとクロ!」
老婆の掛け声で、2頭の猛獣が、洞窟の中へと駆けていった。
「勇ましい割には普通の名前だな・・」
「どちらがシロで、どちらがクロなのでしょうか?」
漁師とメイドが、虎を見送りながら呟き合っていた。
「キャッチャーが全焼?」
「もえもえー」
「スケアクロウは?」
「こげこげー」
次は地下墓地に来ると思っていたから裏をかかれたね。主力を戻さないと・・・
「コア、ケンチームをこっちに呼び戻して」
「ん」 「「バウバウ」」
「ロザリオ部隊は水牢を抜けて転送魔法陣を使った方が早そうだね」
「了解した、全速で行く」
「狙撃班はまだ動かないで。陽動の可能性もあるからね」
「ん」 「ギャギャ(待機します)」
「コア、トラップルームにスケルトン・ファイター4体を火炎耐性でカスタムして通常装備で召喚」
「ん」
「タスクライダーチームは転送に備えておいて。場合によっては敵集団の後方に送り込むよ」
「ん」 「ギャギャ(承知です)」 「グヒィ」
けれど、次も敵が先手を取った・・
「とらとら!」
「召喚獣か!」
木の扉を突き破って侵入してきたのは、2頭の巨大な白黒模様の虎だった。
「防御専念で迎撃!」
「ん」 「「カタカタ」」
召喚しておいた骸骨戦士改が、戦列を組んで虎の移動を阻害しようとした・・・そこへ
「・・・我が腕に宿りし対極の魔力よ、1つに重なりて雷を成せ!ライトニング・ボルト!(雷撃)」
洞窟の外から、稲妻が走り込んできた。
雷鳴とともに骸骨戦士改は中央の2体が崩れ去り、さらに残りの2体は白黒虎の飛び掛り攻撃により瞬殺されてしまった。
「味方巻き込み上等のアウトレンジ攻撃か!」
しかも直撃を受けたはずの虎にはダメージが入った様子がない。電撃耐性持ちなのか、付与魔法でもかけてあるのか・・
「めいどくるー」
さらに虎の拓いた道筋を辿って、メイドと漁師が突入してきた。
「コア、ここの隣の通路にブラウンベアを電撃耐性でカスタムして2頭召喚して!」
「・・ん」
「あと電撃耐性があるメンバーというと、ミコトは・・・水がないと厳しいか・・」
「ぴちぴち」
そこへケンチームが参戦してきた。
「バウバウ」
「ケン、虎と組み合うと電撃が飛んでくるから、離れてブレスで!」
「ん」 「バウ!」
2頭の虎とメイドと漁師に、ケンのコールドブレスが吹き荒れた。
しかし、虎は冷気耐性もあるのか、あまり効いた感じがしない。他の二人にはそれなりにダメージを負わせたみたいだけど。
そこに2発目の電撃が飛んできた。ケン達は射線外にいるので平気だったが、正面奥の木の扉が耐え切れずに爆散した。召喚済みのブラウンベアがそれぞれ白黒虎に向かっていった。
「ケン達はメイドと漁師を牽制して。電撃の射線には注意!」
「ん」 「バウ」
「ロザリオはまだ?」
「今、地下水路を抜けたとこだ。ルカも連れて行くか?」
『えっ、そんなに危ないんですか~』
「ここも戦場になりそうだから、そこで待機してもらっといて」
「了解した。すぐに飛ぶ」
「待ってるよ」
「いや、誰も来やせんよ」
「誰だ!」
コアルームに、居るはずのない老人と神官服の男が立っていた・・・
DPの推移
現在値:2186 DP (3013DC)
召喚:スケルトンファイター・カスタム(火炎耐性)x4 -240
召喚:ブラウンベア・カスタム(電撃耐性)x2 -1080
残り 866 DP (3013DC)




