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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
215/478

トレンチコートの下は・・・

 突進して渾身の正拳突きを放とうとした逃亡奴隷の足元が、急に無くなった。体重を踏み出した足に移動していた大男は、たまらずポッカリと開いた落とし穴に落下していった。

 「キマリス!」

 筵女が名前を呼んだが、答えは落下した水音が返ってきただけであった。


 「おのれ、姑息な手を!」

 筵女は、筵の中からレイピアとマンゴーシュを引き抜くと、落とし穴を飛び越えて骸骨戦士に切りかかる。

 片方の盾をマンゴーシュで切り払い、その隙をついてレイピアで背骨を切り裂いた。崩れ落ちる骸骨戦士は無視して、もう1体の攻撃を華麗な体捌きで回避した。まるで作業のように、もう1体も解体されてしまう。

 邪魔な衛兵を排除した筵女は、さらに筵の中からロープを取り出すと、落とし穴の底に向けて垂らした。

 「キマリス!生きているなら登って来い!」


 その頃、水牢に落下した大男は、5体のモンスターに囲まれていた。

 「俺としたことが、あんな単純な罠にかかるとはな」

 立ち泳ぎをしながら周囲のモンスターを牽制しているが、足首の鎖が思ったより動きを阻害していた。


 「ぬかったぜ、チャームポイントとか言って、そのままにしておくんじゃなかった・・」

 足技は使えないし、パンチも腰が入らないのでダメージが乗らない。鎧を着ていないから沈むことはなさそうだが、その分、周囲のオオトカゲの牙には防御力が心もとなかった。

 そこに天井からロープが降ってきた。


 「ラウムか、ありがたい」

 ロープを掴んで、身体を引き上げようとした瞬間、2頭のホワイト・リザードがブレスを吹いた。

 「こんちきしょうめ!」

 宙に浮いた状況では、回避もままならない。直撃を受けた大男は大ダメージを受けるとともに、水に濡れていた両手が凍り付いてしまった。


 「くそっ!」

 握力がなくなり水面に滑り落ちた大男に、水中から3体の魚影が忍び寄る。それらが、水中で青白い放電を放っていることに気が付いた大男は、死を覚悟した。

 この状況で電撃系の攻撃を3連続でくらえば、必ず失神するに違いなかった。あとは溺れ死ぬか、噛み殺されるかの違いしかない・・


 大男は、天井に向かって叫んだ。

 「ラウム!先に逝っているぞ!」


 その瞬間、大男の全身に紫色の刺青が浮かび上がり、爆発した。



 ズドオオオオン


 地下墓地全体に爆音が響き渡った。


 「えっ、何?範囲攻撃魔法?」

 「主殿、狂信者が自爆した。己を生け贄に捧げたサクリファイス(犠牲)の邪神版だ!」

 「水牢に落ちたカポエラもどき?水中班の被害は?」

 「ぷかあー」


 元々水中だったミコトチームと、とっさに潜ったクロコ達は、爆発のダメージは火炎系だったこともあって、なんとか凌いだらしい。ただ、水中に伝播された爆発の水圧をくらって、気絶したみたいだ。

 「ベニジャ、急いで水牢に移動してミコト達のカバーに入って。敵は自爆するから注意して」

 「ラジャー、ジャジャ。だけど自爆ってどう注意したらいいんだ?ジャー」


 「ええっと、即死させる?」

 「無茶だぜ、ジャー」

 「そしたら爆発の範囲外から攻撃して止めを刺す」

 「なるほど、それで爆発の範囲ってどれくらいだ、ジャー」

 「水牢全体かな・・」

 「・・駄目じゃん、ジャジャ」



 水牢で爆発音が響き渡り、大量の水が吹き上がったのを確認した筵女は、ロープを手放すと、レイピアとマンゴーシュに持ち替えて、周囲を観察した。

 すると奥の両扉がゆっくりと開き、広い縦長のホールに待ち構える、銀色の骸骨騎士と、両壁にずらりと並んだ骸骨弓兵が見えた。


 銀色の骸骨騎士は剣を振りかざすと、古代帝国語でささやいた。

 「ココガ、オマエノ、ハカバダ」

 「・・オークと同じ場所に葬られるのは嫌だ・・」

 「キグウダナ、ワタシモダ」

 「オマエは豚男爵の子孫じゃないな・・」

 「イカニモ」


 その瞬間、筵女が突進してきた。

 待ち構えていた骸骨弓兵が一斉に弓を放つ・・


 だが、女は、身に纏っていた筵をマントのように頭上にひらめかすと、飛来する矢をことごとく絡め取ってしまった。銀色骸骨騎士まであと半分・・・


 「下着はベージュのもっさりしたタイプっす」

 影から聞えた声に筵女の足がピタリと止まった。


 身体を隠していた筵を堂々と矢避けに使ったので、見られることに頓着しないか、見られて興奮するタイプかと思っていたら、気にする方だったらしい・・

 硬直した筵女に、3方向から短剣が突き刺さった。

 そのどれもがクリティカルヒットになり、筵女は致命傷を負った。


 「・・覗き野郎は爆発しろ・・」

 そういい残すと、全身に紫色の刺青が浮き上がって、轟音をあげて爆散した。


 「止めを刺しきれなかったっすね。敵ながら見事な最期っす・・」

 「ギャギャ(ワタリさん、格好良いこといってますけど、最低です)」

 「ギャギャギャ(確かにあれはないな)」

 「でも味方の被害は最小限っすよ」


 ホールの中間で爆発したので、4隅に潜んでいた隠密ゴブリンと、端に近いスケルトン・アーチャーは影響を受けなかった。壁際でも中程に近い位置に居たスケルトンアーチャー2体が巻き込まれて爆死、正面にいたロザリオが魔法抵抗で威力を半減して軽傷を負ったに留まった。


 「まあ、手段はゲスだったけど、あれで即死していれば被害なしですんだわけだし、ワタリのお手柄かな」

 「あざっす」

 「しかし爆死されると死体も吸収できないから、冒険者より性質悪いね」

 「世界中から嫌われるわけだな」

 ロザリオは直にエルフクレリックから治療を受けて回復した。

 その後、倒れた弓兵の遺骨をまとめると、何かの祈りを捧げていた。


 「主殿、次からは火炎耐性の部隊に編成を変えて欲しい」

 「だね、効果範囲が広すぎて、避け切るのは難しいそうだね」

 バーンチーム以外に火炎耐性がついているメンバーはいないから、突っ込まれて自爆攻撃されると苦戦しそうだね。コアルームで爆発されたらとんでもないことになりそうだ。


 「コアは耐火バリアーとか張れない?」

 ダメモトで聞いてみた。すると・・・


 「こうしりょくー」

 コアの周囲に光の多角形の障壁が出現したのだ・・

 試しに指先で突いてみたら、パリン と音をたてて割れてしまった。


 「だめー」

 

 いや、突いて割れる障壁は意味ないよね・・


 DPの推移

現在値: 1558 DP (3013DC)

撃退:逃亡奴隷 (グラジエーター Lv8) +320

  :乞食女  (スウォッシュバックラー Lv7) +245

残り 2123 DP (3013DC)

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