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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第8章 暗黒邪神教団編
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それは南からやって来た

 ビスコ村から狭い街道を南に2日ほど下ると、大きな村にたどり着く。周囲を竹林で囲まれたその村は、誰からともなく「たけのこの里」と呼ばれ、北の玄関口として知られていた。

 この里には、北に延びる細い街道以外にも、東西南に走る太い街道が交わっていて、隊商の移動の拠点となっていた。


 その筍の里に1人の旅の商人が、大きな荷物をロバに積んで、南の街道からたどり着いた。

 ところが里の入り口で、物々しい格好をした兵士に止められてしまう。


 「待て、名前と出身地を名乗れ」

 「は、はい、手前はミッドガルと申しまして、領都の出身でございます」

 「この里には商用か?」

 「いえ、商いは北のビスコ村で行う予定で、ここは1泊するだけですが」

 「ふむ、後ろの荷を検めさせてもらうぞ」

 「それは構いませんが、何かご不審でも?」

 この里で、荷物検めなどされたことはなかった商人が首をかしげて尋ねてきた。


 「辺境伯様のご指示でな、しばらくは主要な宿場で検問が行われる。お前達のような商人には煩わしいだろうが、まあ、諦めろ」

 最初はこの兵士が、袖の下でも要求しているのかと、気を揉んだ商人だったが、自分の後ろに着いた馬車の隊商にも、新手の兵士が出てきて対応していたので、安心した。


 「何か大切な物でも盗難にあいましたか?」

 辺境伯直々の命令と聞いて、領都で国宝級の何かでも盗まれたのかと尋ねてみた。


 「いや、物でなくて人だ。しかも北に来るかどうかもわからんし、お前のようなロバ商人には関係ないとは思うが一応な」

 そういって兵士は、人が潜り込めそうな大きさの荷物を2つほど開けて中を確かめると通してくれた。

 「いってよし。里から出るときも確認されるが、文句は辺境伯様に言ってくれよ、ははは」


 兵士の微妙な冗談に、なんと答えてよいのか迷った商人は、中途半端な笑みを浮かべて里へと入っていった。

 里の中も、いつもよりピリピリしている感じがあった。

 見かけない兵装をした騎士が、5・6人の集団をつくってあちこちにたむろしている。


 「戦争でも起きそうな雰囲気ですね・・」

 行きつけの宿に向かってロバを引き連れながら、商人は今後の事を考えていた。

 「こんな北の果てまで検問してるとなると、辺境伯爵領内で物流の停滞がおきそうですね。だとすると、領都と近隣の街を往復するだけで、それなりの売り上げが見込めそうではあるんですが・・」

 逆に、確実に物資が不足するビスコ村のような開拓地に高値で売りさばくチャンスでもあった。


 「どちらにしろ、これは商機です。うまくすればロバから馬車に乗り換えることも・・」

 そう夢想していた商人の耳に、爆音と怒号が響いてきた。


 「えっ?」

 驚いて振り返ると、今さっき自分が通り抜けた南門で、1台の馬車が爆発炎上していた。

 その周囲には爆風で吹き飛ばされて、上半身を焼かれた兵士達が、うめき声をあげながら転がっている。

 周囲にいた騎士達が、怒声をあげて剣を抜きながら、燃え上がる馬車に向かって殺到していった。


 「・・・あれ、私の後ろに着いた馬車ですよね・・・」

 一つ間違えば、自分もあの爆発に巻き込まれていたと思いついた商人は、相棒のロバと一緒に、通りの真ん中でへたり込んでしまった・・・



  ビスコ村冒険者ギルドにて


 「ギルド長、さきほど筍の里で自爆テロが起きたそうです」

 受付嬢が、マスタールームに飛び込んでくると、驚愕の報告をしてきた。


 「なんだと!、暗黒邪神教団の連中か?」

 「南門を通過しようとした馬車に信徒が1人、潜んでいたようです。馬車の持ち主との関連はまだ不明です。応対した貿易商の反応に怪しい雰囲気はなかったそうなので、信徒が無断乗車していた可能性も否定できないとのことです」

 荷台に潜り込まれて気がつかないのは不自然ではあるが、幌馬車だと野営の際に無賃乗車を狙う不届き者が忍び込んでいることも無いではない。

 もしそうだとしたら、荷馬車の商人にとっては災難である。


 「背後関係の洗い出しはあちらに任せるとして、問題は、その信徒が単独で逃亡していたのか、集団の尖兵として偵察していたのかという点だ」

 「現状では判断材料が少な過ぎます」

 さすがの受付嬢でも、今回の事件は想定外だったらしく、いつものセリフは出てこなかった。


 「だが、この開拓村の近隣にも奴らの影がちらつき始めた以上、最悪の事態を想定しておく必要がある・・」

 「では、戒厳令を発動いたしますか?」

 「・・それはまだ早い。まずは駐屯軍の指揮官殿に報告を・・」

 「手配済みです」

 「・・では冒険者達に不審人物の洗い出しを・・」

 「手配済みです」


 「・・・あと何が残っているのかな?」

 ヤケになったギルド長が受付嬢に問いただした。


 「王都に提出した報告書が、そろそろ届く頃です。オークの丘の考察に、例のカルトの名があがっていますので・・・」

 「あちらのテロ事件の詳細を尋ねるために送ったあれか!」

 「そこに今回の事件ですので・・・」

 ギルド本部にしてみれば、末端の組織からあげられた報告書に、予兆が記されていたが、間に合わなかったとみるかもしれない。

 

 「だとすると・・・」

 「聖堂騎士団が動く可能性があります」


 それはこの開拓村が、泥沼の宗教戦争に巻き込まれることを意味していた。


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