表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
176/478

バレなきゃ犯罪じゃ

 ダンジョンバトル委員会控え室 インターバル中


 「はぁ~、なんとか前半終了ってところですわね」

 「お疲れ様です、部長、お茶お入れしましょうか?」

 「い、いいのよ、じぶんでするから。貴女は今回の殊勲者ですからね。そこでゆっくりしていてくださいな」

 「わあ、いいんですか。フカフカのソファにお菓子食べ放題とか、夢のようです~」

 「まさか、私も貴女のドジに助けられるとは思いもしませんでしたわ・・」

 「えへへ、褒められましたー」


 あの時、彼女がデスクを間違えて、ヘッドホンをオンにしなければ、バトルが進行中であることも分からなかったし、ズッコケて後ろのロッカーを開かなければ、「ヤンデレ」の暴挙が判明するのは事が終わったあとだったろう。そうなれば委員会の責任問題で、理事の首が何人かすげ替えられていた可能性もある。

 本来なら「ドジっ子」には臨時ボーナスの上に昇格さえありえたのだが、そこは以前の負債が大きく、溜まりに溜まったペナルティーを相殺することで決着がついた。

 昇格が無しになるほどの累積ペナルティーというのも怖ろしいが、本人は過去の失敗で怒られなくなった事に、素直に喜んでいる。

 なお、実行犯の「ヤンデレ」であるが、事情聴集という名の尋問の後で、反省房という名の独房に吊るされている。それでも本人は黙秘を貫き通し、時たま「うふふふ」と不気味に微笑んでいるという。


 「それで、どちら側が勝ってるんですか?」

 「現状ではイーブンですわね。両陣営の探索済み領域はお互いに6割ほど、探索チームの損耗も無し。残してあるDPの分、コアのマスターさんが有利かもしれませんわね」

 「ふわあ、相手がオババ様なのに、すごいですねー」

 「あら、貴女もオババ様を知っているの?」

 「はい、師匠ですー」

 「・・いったい何のですの?」

 「家事全般ですうー」

 「・・・そ、そう、大変だったわね・・(オババ様が)」

 「はい、大変でしたあ(怒られっぱなしで)」



 オババ陣営 インターバル中


 「いったいどういうことなのじゃ!30分たっても攻略できてないとは、ワシの顔に泥を塗る気かい!」

 探索チームと連絡がとれた瞬間に、オババの罵声が飛び込んできた。


 「カタカタ(はっ、真に申し訳なく・・)」

 「相手はぽっと出の新人で、マスターレベルもこっちの半分もありゃしないんだ。圧勝して当然のバトルで、何ちんたら遊んでるのじゃ、お前達は!!」

 「カタカタ(それが、敵はガーディアンを一切配置せずに、広大なダンジョンと罠だけで時間稼ぎしていて・・)」

 「言い訳は見苦しいよ!ダンジョンが広くても、聖なる道程を使えば迷うこともないじゃろう」

 「カタカタ(ですが、敵もそれを想定して構築しているようで・・)」

 「馬鹿言うんじゃないよ。11Lvの秘蹟呪文を想定して、防衛ダンジョンつくる新人が、居るわけないじゃろうが」

 「カタカタ(で、ですが・・)」


 結局、キャスター達がインターバル直前までねばっても、3枚目の扉は試すことができなかった。

 1枚目の石扉を開くのに、西のプレート、2枚目の扉を開くのに東のプレートを踏む必要があった。残った二人で、南階段の2つ目の宝箱を開いて、中から銀の鍵を見つけ出したが、その先の扉をあけるには北のプレートを踏む必要があるのだろう。

 導きの光は北を指したまま、持続時間が切れて、術が途切れた。


 「カタカタ(プレッシャープレートを踏む役目の眷属を3体送っていただければ、すぐにダミーコアルームに到達できるものと思われます)」

 「その言葉、信じて良いのじゃな」

 「カタカタ(はっ、この身に代えましても)」

 「いいじゃろう、スケルトン・ファイターを3体増援に送ってやろう。じゃが、失敗は許さんぞ」

 「「カタカタ(ははーー)」」



 モフモフ陣営 インターバル中


 「しーきゅー」

 「感度良好っす」

 「そっちの状況はどう?」

 「皆、元気っすよ。戦闘は1回しかしてないっす」

 「ノーミンは?」

 「いま食事休憩中っす。呼んだ方がいいっすか?」

 「あ、いや、ワタリが報告してくれるなら問題ないよ。それで障害としては何が残ってるかんじ?」


 「広いプールで待ち構える大蛙の集団っすね。足場悪いだろうし、飲み込まれるとやっかいっす」

 「なるほど、ラスボスらしき奴は見かけた?」

 「それっぽいのはマダっすね。蛙の先にいるのか、隠しルートがあるのか、わからないっす」

 なるほど、大蛙を突破してから探すのかな。


 「タスクライダーが突進出来そうな広さがある?」

 「ああ、そうっすね・・DPけちってあるから、狭いっすよ、ここ」

 そうなんだ。まあ眷属のランクが高ければ、攻撃重視になるのも仕方が無いかもね。その反動で防御が薄くなるなら、ありがたいし。


 「そしたら、増援はベニジャとケン・・・は防衛にまわすかもだから、ロザリオを送るね・・」

 「その微妙な間は、圧力に屈したっすね」

 「ああ、わかった?」

 「ここまで、プレッシャーが届いたっすよ」

 いや、そっち隔離された仮想空間なんだけど・・


 「コア、ベニジャとロザリオを通常装備で転送して」

 「あいあい」

 「主殿、汎用装備では5割の力しか出せぬ」

 「アタイの三つ又矛がーー」

 「大丈夫、向こうで受け取って」

 「「え?」」


 「コア、スケルトン・ファイターに、主武器:三つ又矛、副武器:ミスリル・ソード、鎧:ミスリルメイル、盾:黒鋼のカイトシールドを固定武装化して、転送して」

 「みつゆー」

 「ギャギャ(それって反則なのでは?)」


 「アズサさん、バレなきゃ反則じゃないんですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 81話の『盤上の敵』で、コアじゃなくて自分のミスだな、と冷静に分析していたりと、すごく良い上司だなぁ、と思っていたんですが。 オババが話を聞かず、罵声を浴びせているのを見て、やっぱり働くなら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ