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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第7章 冥底湖の魔女編
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世界で一番〇〇な

 薄暗い洞窟の中で、大釜が焚かれる火だけが赤々と燃え盛っていた。窯の中では、紫色のドロドロとした液体が、沸々と泡を立てながら異臭を漂わせていた。

 楡の木の杖で、紫の液体をかき混ぜていた老婆が、ぶつぶつと独り言を呟いている。


 「やはり、去年の魔草じゃ反応が悪いね。あの忌々しいハ-フリングの小僧め。どうしてくれようか」

 老婆は、杖を放り出して部屋の隅に移動した。そこには大きな鏡が壁に埋め込まれていた。


 「鏡よ、鏡。世界で一番憎たらしい、ハーフリングのハーヴィーの居場所を教えておくれ」

 すると、鏡に写っていた老婆の姿が薄れて、新たに野外の風景が映し出された。それは森の中にある、小さな丘の遠景だった。


 「おかしいね、直接、中が覗けないなんて。結界の中にでもいるみたいじゃないか。どこかの神殿に逃げ込んだ様子もないが・・」

 その丘は、あちこちに洞窟の出入り口がある他は、人の手が入っているようには見えなかった。


 しばらく観察していると、洞窟の一つから奇妙な亜人がふらふらと歩き出てきた。


 「蛙頭のハーフリングじゃと?なるほど、あれがハーヴィーかい。中途半端に術を解くから、あんな姿になったんだねえ。ひっひっひっ、いい気味だ」

 すると、すぐに同じ洞窟から、見たことのある蛇娘とデカいオークが駆け出してきた。

 二人はハーヴィーを両脇から抱え込むと、慌てて洞窟の中に連れ戻していった。


 「おやおや、あの二人は綺麗に解呪されてるねえ。どうやら其れなりの術者が居る様じゃないか」

 老婆の声に多少の苛立ちと、ほんの少しの好奇心が混ざった。


 「せっかく居場所もわかったことだし、押しかけて行って、嫌がらせをしてくるのも良かろうて、ひっひっひっ」

 老婆は意地悪な笑みを浮かべながら、旅支度を始めた。


 「そうそう、腕にモノを言わせる展開もありじゃろうから、奴等も連れて行こうかね。たまには外の空気を吸わせるのも良いじゃろう」

 そう呟いて、洞窟の奥へと足を運んでいった。


 そこは鍾乳洞に囲まれた地底湖だった。

 青白い光を淡く放つ鍾乳石に照らされて、地底湖の水も青白く光っている。

 その湖底には数十体の白骨死体が直立したまま並んで立っていた。まるで、軍団長の閲兵を待つ兵士たちの様に・・・


 「7番、13番、21番、26番、出ておいで」

 老婆が声をかけると、呼ばれた4体の骸骨が、ゆっくりと湖底から歩み出てきた。

 「少し遠出するよ、護衛として付いて来な」

 その命令に、右手を胸に引き寄せて軍隊式の敬礼をすると、4体の骸骨は老婆を中心に四方を守るように展開した。


 「さてさて、少しは歯ごたえがある奴だといいのじゃが、ひっひっひっ」

 老婆の笑い声だけが鍾乳洞に木霊していった・・・



 その頃、ダンジョンでは


 「まずい、後をつけられたみたいだ」

 「ギャギャ(そんな、あれだけ注意を払っていたのにですか?)」

 「ああ、奴らの執念を甘く見てたよ」

 「どうするっすか?」

 「迎撃するしかないね。もうこの場所の位置はバレていると思ったほうがいい」

 「主殿、キャッチャーに誘い込んだらどうだ?」

 「無駄だよ、奴らは一直線にこちらに向かってきてる。ここで迎撃するしかない」

 メンバー達に緊張が走る。


 「せめて、分断できるように手はうっておこう。コア、触れたら鉄格子の罠を、こちらの出口に再配置して。トリガーは、入って右の扉って、なかったね。じゃあついでに青銅の扉(覗き窓付き)も設置して、扉に触れたら洞窟の出口に鉄格子降ろすかんじで」

 「ふぁじー」


 「有志による迎撃部隊は、リンゴの間に集合して」

 「「ラジャー」」


 「せっかくできた蜂蜜を守りきるぞ!」

 「「おお!!」」


 短期集中で花の蜜を集め廻っていた蜜蜂が、奴らの注意を惹いてしまった。

 そう、森の熊である。

 奴等は蜂蜜のことになると、狡猾で執念深くなる。(一部、偏見あり)

 巣に帰る蜜蜂をこっそり追跡し、その場所を特定すると、蜂蜜を目当てに強奪にくるのだ。


 「ギャギャ(甘味はぜったい死守します)」

 「そうですねー、美容にも健康にもいいですからねー」

 「私は別に無くてもいいが・・」

 「ギャギャ(ロザリオさん、やる気だしてください。モフモフはみんな蜂蜜大好きですよ)」

 「キュキュ」「ギュギュ」

 「まかせておけ!熊の10頭や20頭、この新たな愛剣の錆にしてくれる」

 どうやら女性陣の方が、戦意が高いようだ。なぜかルカまでが出張してきている。


 「アタいは蜂蜜より酒の方がいいな、ジャジャ」

 「ギャギャ(ベニジャさん、蜂蜜酒って飲んだことあります?)」

 「なんだい、その旨そうな酒の名前は、ジャー」

 「ギャギャ(蜂蜜から造れるみたいですから、杜氏さんにお願いすれば出来ますよきっと)」

 「よっしゃ、モンモンチームは全速で助っ人に行くぜ!ジャー」

 「「ケロケロ」」

 アズサの人心掌握術が、達人級になってる気がするよね。まあ、ベニジャは間に合わないと思うけど。


 「はにーぷー」

 あ、もう来たのか。数は・・・3頭もきたよ。敵も本気ということだね。


 最初に飛び込んできた1頭が、蜂蜜の匂いを嗅ぎつけて、青銅の扉をガリガリっと引っかいた。

 ガラガラガラ ズシャーーン

 洞窟の入り口を鉄格子が塞いで、後続の2頭を分断した。


 「敵は罠にかかった。総員、戦闘に移れ!」

 「「ウラーー!!」」


 後にワタリ曹長は、この戦いを振り返ってこう語ったという。


 「あれは、戦闘ではなく、殺戮だったっす。オイラは敵とはいえ、狂ったような女性士官の攻撃で次々に倒れていく彼らを見て、同情の念を覚えたほどっすから」


 なお、ワタリ曹長は、戦闘のどさくさに紛れて、蜂蜜を盗み舐めしたのが発覚し、現在は独房送りになっているという。 

 DPの推移

現在値: 1973 DP

再配置:触れたら鉄格子 -25

設置扉:堅牢な青銅の扉(覗き窓付き) -15

撃退・吸収:ブラウンベアx3 +1080

残り 3013 DP


 召喚リスト その53


 ブラウンベア:茶色熊

種族:獣 召喚ランク6 召喚コスト360

HP48 MP12 攻撃15 防御8

技能:爪、牙、嗅覚、登攀、水泳、追跡

特技:ハウリング(咆哮)、ベアハッグ(抱き竦め)

備考:咆哮 使用MP3

   抱き竦め 使用MP1 抱え込んで獲物の背骨を折る、ダメージ18防御無効

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