敵の敵は敵
「中隊長、各小隊の準備整いました」
「よし、第2は右、第3は左、第1小隊は私と共に正面に向かう。アンデッドと人族の奇襲に注意せよ」
「「はっ!」」
アイン様の残された手記には、この遺跡にはレイス級のアンデッドが巣食っている可能性が高いと記されていた。十分な対策をとって探索に向かわれたはずなのに、お戻りになられないのは、先程の人族のような雇われ者達に不意を討たれたに違いない。
アイン様とお供の者達が囚われているなら救い出す。すでに亡き者にされているなら、例の家の関わりを示す証拠を集めて、糾弾する。
どちらにしろ、締め上げて情報を聞き出すには、冒険者に偽装したあの連中は最適だったが、遺跡の奥に逃げ込まれたようだ。半数に矢傷を負わせたから、回復する前に叩くとしよう。
「この先にいるエルフ以外は全て敵だと思え。遠慮はいらない、見かけたら直に攻撃せよ」
「「はっ!」」
コアルームにて
「十字路を3方向同時侵攻かー。普通なら下策だけど、現状だと対策を取り辛いから、むしろ攻める側としては正しいのかもね」
各個撃破できないし、左右から挟撃もできない。中央の罠にかかってくれると楽になるけど、エルフは探知能力高いからバレるだろうし・・・
「主殿、どうせなら中央ホールから仕掛けるか?」
「左右を抑えられてるから、魔術兵を阻害できないのがまずいね。ロザリオはまだしも、スケルトン部隊は持たないよ」
後方に戦力を転送させる手もあるけど、あの6人組がネックなんだよね。わざわざエルフを助けたりはしないだろうけど、こっちのメンバーに攻撃されると実質的には挟み撃ちになる。
「だったら、あの6人組にも少し引き受けてもらうのが筋だよね」
「しぇあー」
「コア、玄関ホールにスケルトンファイター2体を風耐性カスタムで召喚」
「・・ん」
「すぐに階段を登らせて泉の分岐を曲がったところで待機させて」
「ん」
簡単な囮だけど、エルフは乗ってくるかな・・・
「中隊長!後方に召喚魔方陣です。数は2!」
「術者は視認できるか?第1小隊は後方を確保する、弓隊構え!」
「術者は見当たりません。敵はスケルトンです」
ちっ、こちらの主力が弓兵なのを見越して襲ってきたか。
「魔術兵、範囲呪文で蹴散らせ!」
「敵2体、階段へ退却しました!」
「馬鹿者!退却ではない、あれは退路を断ちに行ったのだ。追え、術者に合流させるな」
スケルトンは階段途中の分岐を右に曲がると、そこで待ち伏せしているようだ。
「所詮はアンデッド、待ち伏せしているつもりなのだろうが、盾の端が見えているぞ。魔術兵、ウィンド・バーストだ!」
「はっ!ウィンド・バースト!」
T字路に炸裂した風の範囲呪文で、スケルトンは2体とも吹き飛ばされたようだ。盾が床に転がってきた。
「中隊長!通路の先に奴らが」
「しまった、誘い込まれたか!」
分岐の先は広い部屋になっており、例の偽冒険者達が待ち構えていた。
「私が前衛に出る。もう一人盾に換装して並べ。4人は後方から援護射撃だ」
「「はっ!」」
ここで下がれば階段出口を封鎖される。遺跡の奥から本隊が襲ってくれば、我々は袋のネズミだ。なんとしてでもこいつらは倒す。
「レッドベリー家に栄光あれ!」
「「栄光あれ!」」
六つ子の視点
薬草を摘み終えて、出発の準備ができたところで、階段から旋風が吹き付けてきた。静穏の結界のせいで外の音が一切聞えなかったので、ビックリするほど突然だった。
「え?何?」
「風の呪文でウェブが吹き飛ばされた、来るぞ」
「通路の骸骨は何?下から来たの?」
「下では派手に遣り合ってるみたいだな。こっちは無視してくれれば良かったんだが」
「きちゃった者は仕様が無いよね、あちらもやる気満々だし」
「出口は一つだ、突破するぞ」
「あいさー」x5
再びコアルームにて
「よし、遭遇した。これであの小隊は無視していいね」
「主殿、残りの2小隊はどう動いた?」
「右の小隊が十字路の中央に移動したね。さすがにこの状況で先には進まないかな」
左の小隊は動かないね。覗き窓の罠探知でもしてるのかな?主力は牢屋番の部屋で待機してるから、こっちは早く入ってくれると各個撃破できるんだけど。
「よし、仕掛けよう。コア、アサマを牢屋番の部屋に転送して」
「ん」
「アサマは囚人に食事を与えに行く振りをして牢屋まで移動して。途中でエルフが飛び込んでくるかも知れないから、注意してね」
「ギャギャ(お任せを)」
「エルフが引っ掛かったら、待機してるメンバーでよろしく」
「「バウバウ」」
DPの推移
現在値: 1083 DP
召喚:スケルトンファイター・カスタム(風耐性)x2 -120
転送:R4x1 -80
残り: 883 DP




