殿中でござる
「それでは、僭越ながら新参者の長として、このハクジャが乾杯の音頭をとらせていただきますです、ジャー」
今、僕らは地底湖の湖畔に宴会場を増設して、祝勝会を始めようとしている。
親方達が整地した場所に、丈夫な木の床を敷き詰めて、臨時に大勢で食事ができる場所を設置したのだ。
ここを会場に選んだのは、水棲のミコト達も皆の顔が見れる場所で参加できたらいいねという、アズサの発案からだった。
問題になったのは、コアルーム側で待機していた獣メンバーとアップルチームの移動で、最初は転送でパアッと終わらせようとしたけど、ワタリ達に止められた。なんでも、DPが溜まると使い方がめちゃくちゃになるから、監視しているそうだ。
もう大量のDPにも慣れたし、そんな事しないと思うんだけど、ねえ、コア?
「ぷる」
ん?どうかした?DP溜まっても2000ぐらいでしょ?
「ぶる」
え?4900?はは、そんなわけないよ、コアの最大容量に迫るとか、ありえないし・・・
だって撃退・吸収したのって・・・・・あれ?あれれ?
「やばいっす、マスターが現状に気がついたっす、メディック!メディック!!」
「主殿、宴会をすれば一気に減るから、皆、腹を空かせて待っていたから、底なしに喰うから」
ワタリとロザリオが血相を変えて走り寄って来た。
「いやでも、これ以上、DP溜まるとコアが破裂するかもしれないし、ここは3000ぐらい使っても」
上級精霊の泉とかどうだろう、せっかくの特技だし活用しないとね。
「いやいや最大容量を越えてもダンジョンコアは壊れないから、保管できずに消費されてしまうだけだから・・・あっ」
「ギャギャ(ロザリオさん、それ禁句)」
「・・・DPが溢れて無駄になる・・・溢れて無駄に・・・」
「大丈夫っすよ、まだ容量には余裕があるっす。溢れたりしないっすよ」
「・・・大丈夫・・まだ大丈夫・・・」
「ギャギャ(今のうちにコアさんに頼んで食材の変換を)」
「ぷひゅ」
「え?キャッチャーがヘラジカ捕まえてDPが45増えた?」
「「「キャッチャー、空気読めええ!」」」
その後、宴会が終わるまで、それ以外のDP使用は自粛するという事で落ち着いた。
「僕がマスターだよね?」
「もちろんっす」
「ギャギャ(マスターは悪くありません、悪いのは貧乏です)」
「うむ、落ちついたらきっと我らに感謝してくれることであろう」
なんか腑に落ちないけど、皆が泣いてすがるから宴会が終わるまでは待つことにした。
コアはアンティーク家具のリストを眺めっぱなしだけど、あっちは止めなくていいのかな?
「ギャギャ(カタログは眺めてるだけで購買欲が満たされますから、大丈夫です)」
なるほど、深いね。
会場の設営を進めるとともに、メンバーの移動も同時に行った。
秘密の階段から水牢に降りて、ミコト達の誘導でルカの洞窟に移動、その後、水中呼吸の呪文を付与してもらって、地下水路を高速移動した。コアだけは安全を期して転送で飛んでもらった。
転送は僕やコアにも使えるけど、LVがランク相当なので、結構DPがかかる。ただ非常事態で緊急脱出に使うには便利かもしれない。
コアルームの警備は、悪いけどスケルトンファイターの皆にお願いした。食事できないしね。
メンバーの移動が終わったら、皆のリクエストを聞いて、食材と料理の変換だ。
ハクジャ達は魚でも肉でも昆虫でも何でもいけるらしい。備蓄が少ないので、食事の量は通常の半分以下に節約していたから、お腹一杯食べられる事が幸せだそうだ。
頼みの生簀の紅鮭が流出してしまったときは、餓死を覚悟したそうである。
ごめんなさい。
罪滅ぼしに、特製スタミナ丼をつくってあげた。
ライ麦を茹でてオートミール風にして、身をほぐした紅鮭と薄くスライスした猪肉とコオロギを、軽く炒めて塩で味付けした。
「これがダンジョン特製スタミナ丼!」 「うまー」
これが思ったより好評で、アップル達にもせがまれたので、コアに吸収・分解してもらって大量に変換した。
ハクジャもベニジャも喜んでスタミナ丼を食べていた。なにげに栄養バランスもいいし、定番メニューになりそうだ。
蜥蜴人は雑食で、昆虫も好んで食べるそうだ。そしてやはりコオロギは高級食材らしい。
コオロギって実は万能かも。
「キュキュ」
DPの推移
現在値 4994 DP
変換:丈夫な木の床x12 -60* (宴会場の床板が記載もれ)
撃退:ヘラジカx1 +45
転送:Lv5 -125
変換食材:ライ麦、紅鮭、猪肉、コオロギ -60
変換料理:虹鱒の串焼き、ヘラジカのステーキ、スタミナ丼等 -360
変換:土器セットx16 -80* (ルカとスケルトンカスタムの分を追加)
吸収:ヘラジカx1 +45
残り 4399 DP




