第二話:自己紹介
街に戻って服屋で女性物の服を買い、ネフリティスにプレゼントした。
俺の好みで選んでみたんだが、この服を選んで大正解だったな。
ネフリティスの雰囲気や髪色に合ってて超可愛い。
肩が出ているタイプのブラウスにスカートだけど、スカートは丈が短めだ。
ハイソックスとの間に健康的な太ももが見えているのが素晴らしい。
しかも胸がかなり強調されたデザインなので、彼女の戦力は桁外れに上がっている。
銀色の髪に翡翠色の瞳ってのが俺の性癖に突き刺さってるしな。
エロ可愛いは正義。異論は認めん。
「どうだ、似合っているか?」
「あぁ、とても似合ってる」
「そ、そうか。それは良かった」
嬉しそうにくるくると回る姿に癒される。
はぁー。可愛いわー。
ちなみに最初はちゃんと生地の厚い服を選んだんだけど、エルフの血が入ってる彼女は気温の変化に強いらしく、そこは辞退された。
金額も高かったから助かったし、良いものも見ることができたし、俺にとっては得しかない。
なお、新品の服ってのはバカにならないくらい高いので中古品だ。
金貨一枚……一般人のひと月の稼ぎと同じくらいって言えばどれだけ高価な物か分かるだろう。
本当なら見栄張って買ってやりたかったけど、俺みたいな根無し草にはさすがに無理だったわ。
「さて、次は飯屋だな。落ち着いた所で互いの話と今後の予定でも話そう」
「む? 今後の予定とは……?」
「ネフリティスを放っておく訳にも行かないだろ。ちゃんと送り届けるさ」
実際彼女は金を持ってないし、エルフの森って言えばそこそこ遠い。
こんな可愛い女の子が護衛も雇わないで一人で旅をするなんて、それこそ襲ってくださいって言ってるようなもんだ。
助けてしまった以上は最後までやっておきたいしな。
「それは助かるが……良いのか?」
「ついでだからな」
魔石売った金があるからしばらくは働かなくても良さそうだしな。
美少女とお近づきになれるってんならやらない理由はない。
「貴様殿、重ねて礼を言う。それと我の事はネフィーと呼んでくれ。親しい者は皆そう呼ぶ」
「分かった。じゃあネフィー、行こうか」
「あぁ、よろしく頼む」
さぁて、飯だ飯。運動して腹も減ったし、何食おうかね。
※
厚切りの豚肉。それに塩コショウを振って焼いただけのシンプルな料理。
こいつが俺の好物だ。
表面がカリカリになるまで焼かれた肉は独特な香ばしさがある。
いや、実に食欲をそそるね。
ナイフを入れるとじゅわぁっと肉汁が溢れ出し、香ばしさに脂の甘い匂いが混じって堪らない香りになる。
大きめに切った塊にマスタードを塗ってからフォークを突き刺し、その柔らかな豚肉を一口で頬張る。
うめえぇぇ! やっぱこれだわ!
すかさず麦酒を流し込むとシュワっとした爽快な喉越しと仄かな苦味。
口の中の脂が全部無くなったところで、次の一口。
この流れが止まらない。
ガツガツと食い進め、あっという間に二人前を食い終わってしまった。
いやぁ、美味かった。ごちそうさん。
「ほう。貴様殿はよく食べるな」
「ネフィーはパンとサラダだけで足りるのか?」
「我にはこれで十分だ」
はぁー。女の子ってのはよく分からんな。
こんなちっぽけな量で足りるなんて信じられん。
まぁ本人が満足してるって言うなら良いか。
「さて、じゃあ改めて自己紹介と行こうか。俺はジェイド、傭兵だ。今回の戦争に参加していた」
「やはりか。腕は確かなようだ」
キラキラした笑顔を向けられた。
うーん、多分ネフィーが想像してるのは一騎当千の凄腕傭兵なんだろうなぁ。
実際はただのハイエナやろうなんだけど。
「我はネフリティス・グリーンランド。森で狩りをしている時に賊に襲われてしまい、あの場所まで連れて行かれた訳だ」
おいおい、誘拐かよ。国の兵士が何やってんだ。
敵国も酷いもんだったし、最近はどこも揃って馬鹿ばかりだな。
昔は戦上手な国王とか立派な騎士団とか居たもんだが、最近は質が悪いんかね。
「里までエスコートしてくれるのであれば、その時に礼をしたいと思っている」
礼か。森に引きこもってるエルフだと金は期待できないから、高く売れる魔導具あたりが貰えると良いな。
ネフィーと知り合えただけでも十分な報酬だけど。
あーあ、こんな可愛い彼女が欲しいなー。
俺みたいなクズとは合わないだろうけどさ。
「となると、まずは馬車で東に向かう必要があるか。渓谷を抜けるルートだが体力は持つか?」
いくら馬車に乗れるから徒歩より楽だと言っても、舗装されていない道を行くのは中々に体力を使う。
尻も痛くなるし、慣れていないと大変だろう。
瞬間転移の魔術を使える奴に頼むのもありだが、値段が馬鹿みたいに高いからなぁ。
そっちだと全財産使っちまうし、できれば避けたいもんだ。
「大丈夫だ。こう見えて旅は慣れているからな」
「そうか。じゃあ明日の朝に出発しよう」
俺の場合は旅支度なんてすぐに終わるし、早いに越したことはない。
ネフィーも心細いだろうし、急いでやろう。
「ところで貴様殿……一つ、お願いがあるのだが……」
俺が席を立とうとすると、ネフィーは短いスカートの裾を引っ張り下げながら真っ赤な顔で言った。
うん? なんだ?
「その、だな……非常に言い難いことなのだが」
「どうした? 俺に出来る事なら力になるが」
「…………ボロボロだったから、履いていないのだ。だから……新しい下着が欲しい」
その言葉を聞いて、ついスカートの方に視線を向けた俺を責められる男はいないと思う。




