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異世界で勇者をやることになりました  作者: 陽山純樹
勇者進撃編

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仲間と悪魔

 声に対し俺は振り向いた。その人物は――


「アキ!」

「まったく、出だし早々からいなくなられるのは困るわよ」


 魔法によって生み出した鞭を手にするアキ――森の中であるため鞭という武器は結構大変だと思うのだが。


「けど、転移によって分断させることがシュウ達の目論見だったってことね」

「……もしかして、俺がいなくなって場が混乱したのか?」

「そういうわけじゃないわよ。それに、そんなことを考える余裕もなかったし」

「余裕が、なかった?」

「相次いで仲間達は強制転移したから」


 アキがそこまで告げたと同時、周囲のモンスターが咆哮を上げた。

 話し合っている時間はなさそうだ……俺は改めて剣を構え直し、


「はいはい、焦らない。ここは私に任せて」


 アキが前に出た。俺はそれに驚き、


「大丈夫か?」

「心配してくれてありがとう。けどまあ、勇者としてはここできっちり働かないと」


 鞭をしならせる。同時にモンスター達は突撃を開始した。


「レンはまだ戦わなくてもいいよ……進みながら状況を説明しようか」


 語る間にアキは鞭を放った。横一文字の攻撃はしかとモンスター達に直撃し、例外なく光となって消滅する。

 さらに後方から気配――と思った矢先またもアキが鞭を放つ。それはしならせて放つというより、まるで蛇のように一個の生物のような動きであり――


「魔法で制御しているのか?」

「そういうこと」


 質問にアキが応える――なるほど。魔法で的確に鞭を操れば、障害物の多いこの森の中でも問題なく対応できるというわけか。

 さらに言えば、彼女の能力は多数の敵に対し非常に有効な手法……俺が対応するよりもずっと早く敵を殲滅できる。どうやら俺の出番はなさそうだ。


「さて、話の続きといこうか」


 アキは語りつつ前へと進む。俺がモンスターの気配を感じた矢先に彼女は鞭を放つので、俺達の周囲に敵の存在はない。


「レンが消えた直後、相次いで他の仲間が転移した……おそらく魔力に合わせて転移魔法が発動するようになっているのだと思う。で、私も御多分に漏れず転移したんだけど……そこで、モンスター達を倒す戦士達の交戦音が聞こえてきた」

「何かしたのか?」

「援護のつもりで、使い魔を」


 あの闘技大会で見せたやつか……けど、あれは――


「一応言っておくけど、きちんと森の中に対応した人型くらいの大きさよ」


 俺の想像を否定するように彼女は語る。なるほど、それなら――と考えている間に、アキは続きを話す。


「で、さすがに私の魔力を多量に使って生み出すわけにもいかないから、ある程度の数を出して……そのまま移動開始。とはいえこのまま突き進んでいくのもと思った時、レンを見つけたってわけ」

「こうやって合流できたのは……偶然だろうか?」

「さあね。けど相手の作戦通りなら、この後どうするかは気になる所かな」


 語る間もアキはどんどんモンスターを屠っていく。その能力は圧倒的であり、俺達は速度を緩めず森の奥へと足を進める。


「この調子だと、私達が一番かもしれないわね」


 そんなことを呟いた時、またも気配。ただ今度はここまでで出現してきたモンスターとは違う。


「……悪魔、か?」

「さすがに全部が全部これほど簡単にはいかないって話か」


 アキは呟きつつ気配を感じる真正面へ視線を流す。見えたのは人型の悪魔……ただ頭に一本角が生えている。

 その後ろには相変わらずのモンスター達……とはいえ、悪魔に付き従っているのか動き出す気配はない。


「アキ、どうする?」

「私がまずは攻撃してみる」


 言うや否や彼女は鞭を放った。獲物を見つけた蛇のように地面を這いながら光の鞭は悪魔へ向かう。

 それに、悪魔が動いた。右手を翻し、真正面から迫って来た鞭を弾く。かなりの速度で鞭は放たれたわけだが、それをものともしない悪魔――いや、


「多少は、効いたみたいね」


 彼女の言葉通り、弾いた右手が多少ながら損傷していた――しかし、すぐさま右腕を振ると瞬時に再生される。


「再生能力か……これは、厄介だな」

「無闇に突撃してもまずそうね……さて」


 言うとアキは鞭を引き戻す。悪魔は突撃してもおかしくない様子だったが……動かない。


「無理に仕掛けてこようとはしないようだな」

「賢明ね。相手にとっては時間稼ぎが目的だし。それに牽制してこちらが退却でもしようものなら、大戦果だし」


 アキは語る……接近し魔王を滅するような力で斬れば、さすがの悪魔も消滅せざるを得ないだろう。しかし、それは俺の魔力が消費されることを意味する……少しでも魔力を温存しておきたいこちらとしては、無理に仕掛けることができない状況。

 とはいえここでもたついてもまずい。それは敵が望むところだろうし、突破するのは大前提。後は俺がどれだけ力を使うか判断するだけなのだが――


「レンはまだ見ていて」

「……アキ?」

「こんな所で立ち止まっていたら、勇者の称号が泣くわ」


 ……俺の事じゃなくて、アキ自身のことを言っているのだろう。彼女はすぐさま鞭を構え直し、悪魔をにらむ。


「さあて……レン、進むけど覚悟はいい?」

「……俺は、何もしなくていいのか?」

「もし危なかったら自分の身を守るくらいはして。けど、私の援護はいらない」

「わかった……アキ」

「ええ」


 俺は「無茶するな」と言おうとしたが、それを返事で止められた。同時、彼女は走り出した。


 アキを先頭にして、俺達は森の中を疾駆する。同時に悪魔やモンスター達は迎撃のためか動き出した。さすがにこちらが動けば静観ではなく応じるらしい。

 戦力を小出しにしても意味がない……そういう見解に至ったのか、場に見えるモンスター達が全員、俺達へ動き出す。


 直後アキが動く。鞭を生じさせている右手を振り、挨拶とばかりに横薙ぎを放つ。その範囲は剣とは比べ物にならない――展開していたモンスター達に直撃し、俺達から見て右側から鞭が当たり順々に消滅していく。

 そして悪魔に到達しようとして――悪魔は左腕でガードした。威力は間違いなくあったが、それでも鞭を押し留められてしまった。


 だがアキの攻撃は終わらない。鞭を防いだ悪魔を始点として光が折れ曲がる。結果、L字型に折れ曲がった光は左側に存在していたモンスター達を襲い――消滅させていく。

 そしてしなる鞭はモンスターを全て滅した後背後から悪魔へ迫る――すると悪魔はそれを察したか動く。押し留めていた左腕を離すと、すぐさま光から脱するべく跳躍した。


「おっと」


 アキは即座に鞭を消し、再度生み出す。同時に着地した悪魔――距離は相当近くなっている。だが、まだ剣の間合いからは程遠い。

 すると、悪魔は再度駆けた。モンスターがいなくとも突撃は敢行――そう思った矢先、悪魔が口を大きく開けた。


 まさか――考える間に俺は横に跳んだ。刹那、悪魔の口から炎が吐かれる。それは俺達が立っていた場所を正確に射抜き――これを放つために接近したのだとわかった。

 アキもまた回避。だが俺は左、そしてアキは右と左右に分かれる。


 悪魔はどちらを狙うか――思考した矢先、相手はこちらを向いた。魔力に反応しているのかそれとも偶然なのか……ともかく、標的は――


「させないわよ!」


 アキが鞭を放った。すると悪魔は即座に視線を外し、鞭を弾く。威力はやはり十分で腕を損傷させたが、瞬間的に再生する。


「……さすが、と言いたい所だけど」


 アキはそこで不敵な笑みを浮かべる……ここまでの戦闘で、何か掴んだか。


「もう対処法はわかった……ここから、反撃開始といかせてもらうわ」


 宣言し、アキは再度鞭を放った。


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