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第六十三話 父親との電話

秋渡side


ーー

帰りの電車で目を覚ましてからは舞と雑談していたらあっという間に時間が過ぎた。舞の心配や不安はまだ拭えていないはずだからなんとも言えないがそれでもまだ顔色はよくなってる方ではある。帰ったら親父達に報告とどこで何をしてるかの問い詰めだな。それと、黒坂対策だな。前みたいに機械人形は間違いなく出てくるだろうし。はぁ……。問題は山積みだな。


「とりあえず帰るか」


「そうですね、お兄様。明菜さんと恋華お姉様もお待ちしているでしょうから」


電車を降りて深桜戻ってきたらもう夜の八時を回っている。この時間だと帰ってから何か作るのは大変そうだ。明菜と恋華が何か作ってるのも想像できるがどうだろう?ひょっとしたら恋華は今日は来てない可能性だってあるわけだし。両親のことを苦幻夢を受けてから心配するようになったから無理はない。

ともかく僕と舞は特に寄り道もせずにそのまま家へ帰った。


ーー

家に着くと靴が一つしかなかった。ということは明菜だけいることになる。キッチンからは香ばしい匂いがすることから何か作っているみたいだ。僕と舞は靴を脱いでからリビングへ向かう。リビングに入ると明菜が一生懸命カレーを作っているのがわかった。慣れている手付きでルーをお玉で混ぜていてカレーのいい匂いが鼻を擽る。


「明菜、戻ったぞ」


声をかけるタイミングは見付からなかったがよくよく考えたら明菜は僕や舞が帰ってきた気配は感じ取れるだろう。なので混ぜているところで声をかけると明菜は振り返る。


「お帰りなさい、でいいのかな?」


「大丈夫ですよ。ただいまです、明菜さん。カレーですか?」


「うん。いつ頃帰るかわかんなかったから何にしようか迷ったけどカレーなら少し時間を置いても大丈夫だから」


そう言って明菜はお玉をカレーの鍋に入れたまま食器棚からカレー皿を三つ取り出す。そして炊飯器を開けてご飯を適量盛り付けようとしてその手を止める。明菜は僕と舞の方へ向き、


「ご飯どれくらいいる?」


と聞いてきた。僕と舞は昼に少し飯を食べただけなので腹は空いてる。とりあえずリビングのテーブルを軽く布巾て拭いてから答える。


「大盛で僕は大丈夫だ」


「私は普通で大丈夫ですよ」


と、それぞれ答え明菜は頷いて一皿は多めに、二皿は普通盛りに盛り付けてルーを皿に入れる。そしてリビングのテーブルへカレーを運ぶと鍋に蓋をしてからリビングの椅子へ座る。僕達も座り、三人で食べる。


「「「いただきます」」」


一口食べるとカレーはあまり辛すぎないようにしたのか、少し甘い。舞はそれを美味しそうに食べ、明菜は僕と舞の反応から安心して食べ始める。


「悪いな、わざわざ」


「ううん。住まわせてもらってるんだからこれくらいはね。風呂も掃除はしておいたよ」


「広かったから大変だろう?」


「まぁね。けどやりがいはあったからいいよ」


明菜は淡々と答える。こいつ、家事全般得意そうだな。櫻井のところでずっとやっていたのかもしれない。


「カレー美味しいです♪」


「ふふ、それはよかった。辛いのは平気かわからなかったから甘めにしたけどどう?」


舞の言葉に明菜は嬉しそうに笑い、次に僕を見て聞いてくる。


「甘いのはそこまで好きじゃないがこれくらいなら全然平気だぞ。もっとも、作ってもらって文句を言うつもりもないがな」


「お兄様は甘いものが苦手ですからね」


「……バレンタインがトラウマなんだよ」


甘いものというかどっちかって言うとチョコが苦手なんだよな。バレンタインは毎年渡されるが量が量だから正直言ってかなりしんどい。渡してくれるのは嬉しいのだがそれでも限度がある。あんま量は……いや、これ以上考えるのはやめよう。また今年も地獄を見るんだろうな。


「ふふ、秋渡にはいっぱい渡されるだろうからね」


「ちなみに昨年はどれくらいでしたか?」


「…………紙袋五個分」


「「えっ?」」


去年はなぜか深桜だけじゃなくて他の学校も少しいたんだよな。名前どころか顔もあまり思い出せないけど。思い出すのは大体チョコの量だからな。橋本と相澤がいなきゃと思うと辛い。


「じゃあ今年はもっと大変ね」


「なんでだ?」


「凛桜学園ですよ」


「……あ」


そ、そうだ。今年はあの時計破壊戦に出てたから凛桜の女子が……。いや、まだ僕に渡すとなったわけじゃない。きっと大丈夫だ。と、自分に言い聞かせるが不安はでかい。バレンタインの時どこかに行ってようかな……。半ば本気で考えながらカレーを食べ終える。舞と明菜も食べ終えていた。


「ふぅ。ごちそうさん。片付けはやっておこう」


「お粗末様。じゃあ先にお風呂いただいてもいい?」


「ああ、構わんぞ」


「明菜さん、一緒に入りませんか?」


「い、いいけどさらりと言うね、舞」


「はい♪ではお兄様、お先に失礼しますね」


「ああ」


舞と明菜は二人でリビングから出る。僕は食器を洗いながら黒坂との戦いについて考える。奴の銃器は奴の手によって改良が加えられてるのが多い。まぁどうにか対処するしかないか。高須は多分新崎に任せてもいいだろうが黒坂の機械人形の対策も考えておかなきゃな。さすがに黒坂と機械人形の同時相手はしんどいからな。


「(斬撃は放てるが場所によっては色々斬っちまうからな。臨機応変に動くしかないか……)」


今回は前よりも大変だなと思いながら僕は食器を洗い終えた。そして手をタオルで拭いてからリビングにある電話に向かう。親父に色々報告するためだがあまり電話したくねぇな。が、しないと何も始まらんから渋々でも親父の携帯番号にかける。意外にもすぐに出た。


『よう、急にどうしたんだ?秋渡よ』


「相変わらずピンピンした声をしてるな。いつくたばるんだ?」


『かけてきておいてそれは酷くないか?』


その言葉とは裏腹にどこか楽しそうな声をしてるんだから不思議だ。親父は元気なのはわかったがお袋はどうなんだろうか?


「……お袋は元気なのか?」


『おいおい、父さんの心配はしてくれないのか?』


「そんな必要はねーだろ。声で元気なのはわかったんでな」


『そうかそうか!まぁ舞渡(まと)も元気だぞ。それで、本当にどうしたんだ?俺らの安否の確認じゃあねーんだろ?』


「そう言ったところだけは鋭いな。お袋を含めて色んな女性の好意には鈍感な癖に」


『その言葉、そっくりそのまま返すぞ。どうせ何人もの女の子を攻略してるくせしてよ。血は争えんな!』


「……できれば平穏に過ごしたかったがな」


『はっはっは!そりゃお前五神将って時点で無理だろう!』


親父はさらりと五神将と言ったがさすがに親だから僕が五神将ということは知っている。だが日本にあまりいない二人だから追求されることはなく、実力を隠してた僕に問い詰められることはなかった。ちなみにお袋の名前は舞渡で親父の名前は秋雨(あきさめ)という。


「……まぁいい。それよりも報告だ」


『……なんだ?』


僕は溜め息を吐いた後に本題に移る。親父も僕の声に真剣さを感じたのか真面目な声になる。


「爺と婆さんが死んだ」


『……』


さすがの親父もこれには笑えなかったらしく、黙ってしまった。が、少し声がすることからお袋に話してるのかもしれない。


『舞のことは?』


「心配するな。もう家にいる」


『……そうか。ならよかった』


「それと今は訳ありで一人後輩も一緒に住んでる」


『聞かない方がいいか?』


「いや。親父は櫻井有栖って知ってるか?」


『櫻井有栖?櫻井ファミリーのか?』


「ああ。そこの元部下がいる」


それだけ説明すると親父は少し黙った。


『なるほど。オッケー、仕送り増やしとくわ』


しかし親父は深く追求する気はないようだ。


「サンキュ。……用件は以上だ。そっちは何かあるか?」


『あー、最近思い出したことなんだが……』


「ん?」


親父が言い淀むなんて珍しいな。旅の話でもされたら即座に切ろうと思ってたが……。あんまないことだから思わず驚く。


『……黙ってても仕方ねぇ。驚くなよ?』


「……なんだ?」


僕はさっきの逆で親父の言葉を聞き逃さないようにする。親父の声も真剣なことから余程大事な話なんだろう。


『実はな、お前に婚約者がいるんよ』


「………………………………………………………………………………は?」


親父の予想外の言葉に僕は思わず固まってしまった。




ア「どうも、アイギアスです!」

秋「秋渡だ」

幸「幸紀です」

ア「今日は珍しくヒロインが一人ですね」

秋「そうだな」

幸「えへへ、秋渡さんを独り占めしてるみたいでなんだか嬉しいです♪」

ア「おや?これは何かのフラグでしょうか?」

秋「やめろ、演技でもないことを……」

幸「そういえば秋渡さんのお父さんは何をしてる人なんですか?」

秋「詳しくは教えてもらってないが世界中を回る仕事ではあるな」

幸「そ、相当偉い人なんですね……」

秋「ん?別に社長だとかそういったやつじゃないぞ?」

ア「そうなんですか?」

秋「簡単に言っちまえばボランティアみたいなもんだ。どうやって金を稼いでるのかは僕も知らん」

幸「ボランティアですか……。いいですね、そういう活動してる人がいるのって……」

秋「んー、そうか?その分僕は昔から色々と一人でやることになって大変だったがな……」

ア「だから家事はできるんですね」

秋「……なぜか裁縫だけはできないんだけどな」

幸「きっと秋渡さんと将来結婚する人はできる人ですよ。……秋渡さんの理想のタイプってどんな人ですか?」

秋「理想?そうだな……。やっぱり裁縫とかができるのは前提としてあとは頼ってくれる人、かな。それと物事を一人で抱え込まない人、だな」

幸「頼ってくれる人……一人で抱え込まない人……」

秋「ああ。折角結婚までしたならもう一人じゃないだろ?なら友達に話せないこととかはせめて愛する相手に話してほしいって僕は思うぞ」

ア「秋渡君、意外と優しいですね」

秋「僕は思ってることを言っただけだ」

幸「ふふ、それなら結婚相手の人は幸せになるでしょうね。羨ましいです」

秋「わからんぞ?ひょっとしたら幸紀が僕の愛する人になるかもしれないぞ?」

幸「ふにゃっ!?」

ア「……これ多分素ですよね?」

秋「そうだが?」

ア「とりあえず今回はここまでにしましょう。それでは!」

ア・秋「また次話で!」

幸「ゆ、夢じゃないですよね……?えへへ♪」


ーー

秋「そういや続編?みたいのはどれくらい書いたんだ?」

ア「……ひょっとしたら知らないうちにこの作品より多くなるかもしれないです」

秋「……まだ暁すら出てないんだが……」

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