第百二十五話 お互いの信用
めっちゃ遅くなりました
申し訳ありません
買い物に出かけた舞達を待つこと数十分。部屋の掃除をしておこうと思い窓を開けてから掃除機を掛けたりテーブルを拭いたりする。舞と明菜が来てから家事をすることが減ったからなんだか久しぶりに一人でこうしてる気がする。もっとも、料理はさせてもらえなさそうだが。そんなことを思って思わず笑みを浮かべてしまう。それとそんなことを考えられる余裕がある日常になったことに安堵する。
「本当に、終わったんだな……」
傷跡の残る肩に手を当てる。痛みは不思議とほぼないまでに回復している。けれどこうして触れるほんの少しだけ痛みはまだある。まぁ普通ならば傷跡が塞がるまで何ヶ月必要な怪我が一ヶ月で治ってるんだからほんの少しだけの痛みなら安いものだろう。掃除機を掛け終えるとすぐに片付け、窓も閉める。そしてある程度綺麗になったら大人しく待ってようと思ったらインターホンが鳴る。気配からして恋華達ではないので星華達が来たのだろう。
「来たわよ、秋渡君」
出ると冬美が声を掛けてきてその後ろに星華、愛奈、美沙、そして幸紀が鞄を持って共にいた。来るにしては早いなと思ったが、家の近くに愛奈の老齢の執事だろう人がいて、黒い車……と言うかリムジンがあった。……そりゃ全員拾っても来るのは早いだろうな。執事が一礼すると目だけで感謝を伝えると執事は微笑んでから車に乗り込み、そして立ち去った。それを見送ってから皆を中へ招く。
「「「「「お邪魔します!」」」」」
中へ入りリビングへ通すと冬美がキョロキョロとし、僕を見る。
「あら?舞ちゃん達はどうしたの?」
「ああ、夕飯の買い出しに行った。恋華の親父さんが車出したから直に帰るとは思う」
ふと星華と愛奈の手にそれぞれ袋に入った食材と飲み物が見えた。
「……食材、私達も持ってきた」
「私は飲み物を。美沙さんと幸紀さんと一緒に選んできました」
「ん、ありがとな」
食材と飲み物の袋を受け取ってからキッチンに置く。すると星華が鞄からエプロンを取り出す。そこでふと僕は思う。
「そういや皆大荷物だな?」
皆の鞄は大きめであり、まるで泊まる支度をしてきたかのようだった。泊まり掛けでとは言った覚えはないから何でだろうと思った。
「あ、うん。明日は休みだから丁度いいじゃないって。ダメなら仕方ないんだけど……どうかな?」
上目遣いで遠慮がちに尋ねてくる美沙に恐らくその仕草は素なんだろうなと思いながら答える。勿論、何の事かは聞くまでもないだろう。
「構わない。けど親御さんは大丈夫なのか?」
特に印象がよく感じられなかった星華と冬美と美沙の両親が気になる。なんとなく刺々しい感じがしたし。まぁ後から本人達は震えてたと聞いたけど。質問には冬美が答える。
「あ、それなら大丈夫よ。お父さんもお母さんも承諾はしてくれたし。秋渡君が怖かっただけの可能性もあるけどあの戦いを見て色々と納得したんだと思うよ」
冬美は「あはは」と苦笑いしながら言う。星華は鶏モモ肉を袋から出しながら頷いていた。星華は手を洗い、「……道具、借りるね」と聞いてくるので「構わないぞ」と答える。というよりも手伝った方がいいだろうと思いキッチンに向かうが、その前に幸紀が立ち塞がる。
「秋渡さんは恋華さん達が帰るまで待っていてあげてください。荷物もあるでしょうから」
「……なぜ最近はキッチンに立つことを許されない事が多いんだろうか」
少しショックを受けながら幸紀に思わず零すと幸紀も苦笑いを浮かべるが、それでも言ってる事は分かるので大人しく戻る。結局キッチンには星華と冬美が並んでいた。そして愛奈と幸紀は僕と一緒に食器の準備等をする。それと恋華達に星華達は泊まる旨を伝えておく。すると何故か秒で返信が来て「私も泊まる!」と返ってきた。……流石にこれだけの人数だと布団が足りないな。
「愛奈、幸紀。少し頼みがあるんだが……」
仕方なく二人を呼ぶと二人は振り返る。愛奈はめっちゃ嬉しそうに、幸紀は疑問に思いながらも笑顔でいた。
「流石に布団が足りないから買いに行こうと思うんだが流石に一人だと運べなくはないけど危ないんだ。車を動かして欲しいんだが大丈夫か?」
「え、それなら私が手伝おうか?」
幸紀がそう言ってくれる。だが僕は首を振ると付け加える。
「ありがたいが流石に四つ分のセットになるとな。それに……な」
僕は照れ臭い気持ちになりながら頬をかく。
「手が塞がれてたら守ってやることが難しいからな」
その言葉に愛奈と幸紀が顔を赤らめる。僕は恥ずかしくなって顔を背ける。
「だから頼みたいんだが……どうだ?」
「それなら私が頼みますね。先程は愛奈さんに頼んでいたので。いいですか?」
幸紀が愛奈に確認をとる。普段の愛奈ならば譲りはしないだろう。が、今は違う。
「ええ、構いませんよ。ですが……」
愛奈はそう言って僕に擦り寄る。今までなら振りほどいているだろうが流石にもうしない。
「私は秋渡さんと同じベッドでも構いませんよ?」
「む、それなら私も秋渡さんと一緒がいいですよ!」
「二人とも、喧嘩するなよ……」
呆れながら宥めると、二人は膨れている。仕方ないのでとっておき、というか今ではないが未来の事実を伝えようか。
「結婚した後ならいくらでも出来るだろ?だから今は我慢してくれよ」
二人の頭を撫でながらそう言うと二人は動きを止めて愛奈は顔を蕩けながら、幸紀は嬉しそうにしながら笑い、されるがままになる。
「そう……ですね。愛奈さん、すみませんでした」
「いえ、私こそごめんなさい。そうですね。折角共に家族になるのですから喧嘩は良くないですね」
二人共大人しくなり、それにホッとすると幸紀は早速電話して尋ねていた。それを眺めていたら横からクイクイと袖を小さく引っ張られる。そちらを振り向くと美沙が不安そうに僕を見上げていた。よく見たらキッチンからは星華と冬美も見ていた。
「どうした?」
聞くと美沙はモジモジしながらキュッと袖を少しだけ強く握ってくる。うん、可愛い仕草だな。
「わ、私も……秋渡くんと一緒に寝たいな……」
「……私も一緒に寝たい」
「わ、私もよ……。二人だけは狡いわ」
「…………」
……うん、これだと何も変わらんな。まぁ全員将来的に一緒に寝る事は出来るんだがこれだと今日ですら我慢できないって事なのかな?キリがないんだが。とりあえず僕は不安がってる美沙を撫で、キッチンの方に顔を向ける。
「安心しろ……と言えばいいかは分からんが結婚した後ならば皆で話し合いして一緒に寝る事は許すから。だから今は我慢してくれ」
そんな言葉で皆頷きはした。ただの口約束だが一応納得はしてくれたようだ。少なくとも結婚するにも高校を卒業してからになる。だからそれまでは我慢してもらうしかないのだ。まぁそれでも舞は入ってくるからそれを知られたら怖いな。流石にこのメンバーが一緒ならそんなことをしないとは思う……思いたい。
「あ、秋渡さん。車は手配して貰えましたよ。すぐ来るそうです」
「分かった。星華、冬美。何か追加で買ってくるものとかあるか?」
幸紀から車の用意が出来たことを聞いて調理中の二人に尋ねる。食材は追加されるだろうが泊まるにあたって何か必要かもしれないし。準備はしてきたと言うがそれでも急ぎだったのは間違いないだろう。だから尋ねた。星華と冬美は思案顔になるが、すぐにそれはなくなる。
「私は特にないわ」
「……同じく」
「ん、分かった。愛奈と美沙はどうする?一緒に行くか?」
頼んだ相手の家の車なので幸紀は確定で行く事になる。あとはこの二人だが……。
「私は今回はやめておくよ。二人の準備も手伝わないとだし」
「私もです。あ、二人だからって幸紀さんは秋渡さんとベタベタし過ぎないでくださいね!」
「えへへ……。善処します」
……美沙はともかく愛奈が断るとは思わなかったな。正直愛奈には付いて来てもらった方が寝具のこととかで文句が出ないか心配だったんだが。まぁ幸紀がいるから多少は大丈夫か。とりあえず本当にすぐ来たらしく前に会った執事の気配が外からしたので僕は幸紀と出掛けるのだった。リビングを出る前に見た星華達は誰一人として幸紀に嫉妬する気配を見せなかったからやはり彼女達も互いを信じてるのだろう。それが僕にとっては嬉しく思えた。
ア「どうも、アイギアスです!」
秋「秋渡だ。くたばれ」
ア「ごはっ!?」
美「美沙です。秋渡くん容赦ないね……」
ア「流石にここまで遅くなったことは謝罪します……ゲホッ!」
秋「しぶといな。……全く、待ってくれてる人もいるのかもしれないのにな」
美「作者さん、血塗れになってるよ……。うぅ、気分が……」
ア「あ、そこは大丈夫ですよ。ほらこの通り!」
秋「傷も血も一瞬で消えやがった。まぁ美沙の事を考えるとこれ以上はここではやめておこう」
美「ありがと、秋渡くん」
ア「イチャイチャするのは後にしてくださいね?私が悲しくなるんで」
秋「まぁ恋人いないからな」
ア「……そのせいで進みが遅れてるんですよ」
秋「…………」
美「あ、秋渡くんが流石に目を逸らした」
秋「ん、んん!それで、今度はお泊まり編って所なのか?」
ア「そうなりますけど私の都合上(文章力の問題)で長くは続かないです」
秋「まぁ仕方ないな。……ん?つーか普通男一人に女八人て僕気まずくないか?」
ア「今更気にするような事ですか?重婚宣言しておいて」
秋「……否定は出来んな」
美「えへへ♪改めてそう思うとやっぱり照れ臭いね」
ア「普通修羅場になると思うんですけどね」
秋「……そういや大きな喧嘩してる所は見たことないな」
美「ふふ♪秋渡くんに嫌われたくはないからね。それに、重婚してくれるから争う理由があまりないんだ」
秋「なるほどな。やれやれ、皆が喧嘩しないよう僕も気を付けておこう」
美「秋渡くんなら大丈夫だよ。皆に気を配れるくらい優しいんだから」
秋「……ありがとな」
ア「では、今回はここで終えましょう。それでは……」
ア・秋・美「また次話で!」
おまけ
秋「しっかし今更だがそうなると子供が出来たら色々と大変そうだな……」
美「ふふ、皆のお父さんになるからね」
秋「そしてもしかしたら同年代に世刻の苗字が数人になる可能性もあるんだな……」
美「頑張ってね、皆のお父さん♪」
秋「ああ、頑張るよ。だからしっかり支えてくれよ?」
美「勿論だよ!夫を支えるのは妻の役目ですから♪」




