真の天才 その②
「俺たちを助けに来てくれた――わけじゃなさそうだな」
「お前を殺すのに邪魔だから前もって殺しておいた。それだけだ」
気づけば、王の間にいるのは俺たちとゴートだけになっていた。
「王宮が襲撃されているんだぞ。こんなことやってる場合か?」
「もはや王宮がどうなろうが、僕には関係ない。決着を付けるぞ、クルシュ。僕と貴様のどちらが本当に特級錬金術師に相応しいのか分からせてやる」
「話し合いは無用ってわけか。……下がってろ、キナ。まずはこいつとの因縁にケリをつける」
「クルシュさん、これを」
キナが俺の手に何かを握らせた。
赤く輝く魔石―――インテレストの動力源だ。
「良いのか?」
「はい。インテレストと私の命、クルシュさんに預けます」
俺は何も言わずキナに向かって頷いた。
キナは俺に頷き返すと、壁際に下がった。
その周囲には半分だけ焼けた死体が転がり、煙を上げていた。
「別れの挨拶は済ませたか、クルシュ」
ゴートの落ちくぼんだ瞳が俺を捉える。
「ああ、おかげさまでな」
「そうか。だったら―――高純度で錬成した雷属性の魔石、その威力を味わうといい!」
ゴートが俺へと魔石を向ける。
次の瞬間には激しい雷撃が俺の目前に迫っていた。
「速い――っ!」
インテレストの魔石の組成を、俺の身体に適合するよう書き換える。
胸の孔に魔石を押し込む。
全身に動力が伝わる。
俺は転がるようにして雷撃を回避し、胸の魔石の組成を更に書き換え、水の属性を付与した。
「やはり追放では甘かった! 処刑しておくべきだったんだ、お前を!」
ゴートが電撃を放つ。
俺はそれに合わせて、水魔法を発動した。
「!」
周囲にまき散らされた水で雷撃が拡散する。
ゴートが驚いたように目を見開く。
「歯ぁ食いしばれ、ゴートぉ!」
強化された身体能力でゴートへ肉薄し、その顔面に右拳を叩きこむ。
ゴートの身体は宙を舞い、絨毯の上に落ちた。
「クルシュさん!」
駆け寄ってこようとしたキナを、俺は右手で制した。
「動くな! ……まだ終わってない」
俺の言葉に応えるように、ゴートがゆっくりと立ち上がる。
「その通りだクルシュ。まだ終わってない。僕のお前に対する恨みは、まだまだこんなものじゃない」
「恨みだと?」
血まみれになった顔を歪ませるようにして、ゴートは笑みを浮かべた。
俺の背筋を冷たい汗が流れた。




