新たな魔石 その②
「えーっ!? 本当に!? クルシュ天才じゃん!」
「元とはいえ特級錬金術師だしな。このくらいは出来て当然って感じかな。フッフッフ」
思わず笑いが漏れてしまったが、コルナが思いのほか神妙な顔をしていたので慌ててやめた。
「……ねえ、本当に王都へ戻ってくる気は無いの? ナクファ様もクルシュの力が必要だって言ってたよ?」
「その話ならナクファにも直接言ったけど、俺は先約があるんだ。それが終わるまでは王都に戻る気はない」
「そう。なら仕方ないね。私は……クルシュがいなくて寂しいけど」
呟くようなコルナの言葉を、俺は聞こえないふりをした。
「とにかく、これで劣化版の魔石もなんとかなるってわけだ。ゴートを助けるような形になっちゃうのは癪だけどな」
「……え、待って。この組成式をどうやって広めるつもり?」
「そこはお前に任せるよ。世紀の大発見とか言って発表したらいいんじゃないのか?」
「でもこれってクルシュのアイデアでしょ? 人の手柄を横取りするようなこと、私はしたくないな」
「じゃあゴートにでも教えてやれ。あいつなら喜んで自分の手柄にするよ」
「またそういう言い方する……。この研究成果をきっかけに自分の無実を証明することだってできるはずじゃん」
「そういう回りくどいのはイヤなんだよ。俺はただ魔石の研究が出来ればそれで良かったんだ。とにかく頼むよ、コルナ。今の俺にはお前しか頼れる人間がいないんだ」
俺が言うと、コルナは満更でもなさそうに、
「そ、そっか。頼る人が私しかいないならしょうがないね。ナクファ様にも相談してみる。うん。私、何とかしてあげるよ」
「ああ、助かる。じゃあ俺はそろそろ行くから」
「もう行っちゃうの?」
「キナやフィラが待ってるからな」
「それなら私が王都の外まで案内するよ。心配だし」
「本当か? すまないな、世話になりっぱなしで」
「良いのよ。忘れないで、私は君の味方だからね」
「ああ、ありがとう」
俺が研究室のドアに手を掛けようとしたそのとき、ドアが勢いよく向こう側から開けられた。
息も絶え絶えで室内に飛び込んできたのは、昨晩バイクを届けてくれたナクファの私兵だった。
「く――クルシュ様! どうぞお助けください!」
兵士はそう言うと俺の前に膝をついた。
その鎧には大小さまざまな傷があり、何らかの戦闘を終えたあとだということが見て取れた。
「お、落ち着けよ。何があったんだ?」
「ナクファ様が――王宮が、襲撃されたのです!」
「王宮が……?」
想像もしていなかった言葉に、一瞬何も考えられなくなる。
俺は無意識の内にコルナの顔を見ていた。彼女もまた、状況が理解できないと言いたげな表情を浮かべていた。
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