再会 その②
「お前、こんなところで何してるんだ? 地方の錬金術研究所に派遣されてたんじゃなかったのか?」
「ゴートに呼び戻されたのよ。あいつホント偉そうになっちゃって」
「特級錬金術師だからな。偉そう、じゃなくて偉いんだよ」
「でも色々大変そうだよ。ゴートが特級錬金術師になってから製造が始まった魔石だけど、もう不具合が報告されてて。みんな製法が変わったからだって薄々気づいてるんじゃないのかなあ」
「俺はその責任を負わされて処刑されようとしていたんだ。久しぶりの再会は嬉しいけど、悪いが先を急ぐんでね。またどこかで会えたらゆっくり話をしよう」
そう言ってコルナと離れようとした俺だったが、すれ違いざまコルナに腕を掴まれ、叶わなかった。
「ちょっと待ってよ。私は君たちを逃がしに来たの。このまま逃げても見つかるだけよ。脱出路を確保してあるから、そっちから逃げようよ」
「……本気か? 念のため言っておくけど、俺は国家反逆者だからな」
「でも無実なんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「だったら良いじゃん。それとも、下手に王宮内をうろうろして、もう一度捕まりたいわけ?」
「それは困る。俺は自分の意思で引きこもるのは構わないが、誰かに閉じ込められるのは嫌いなんだ」
「相変わらずめんどくさい奴だねー、君は。まあ、そういうとこも変わってなくて安心した。じゃ、ついてきて」
コルナは俺たちに背を向け、階段を上り始めた。
俺達もその後を追う。
途中、キナが俺の耳元で囁いた。
「誰なんですか、あの方。錬金術師というのはお聞きしましたけど」
「コルナっていってな、一緒のタイミングで錬金術師の試験に合格した同期みたいなもんなんだよ」
「ふうん」
キナが眉を寄せる。
「なんだよ、不満なことでもあるか?」
「コルナさん、クルシュさんの元カノか何かですか?」
「あのなあ、王都にいた頃の俺には恋愛みたいなものに現を抜かしているような時間も精神的な余裕もなかったんだよ」
「あー、そうですか。言われてみれば確かにそうですね。いえ、変なこと聞いちゃってごめんなさい」
心なしかキナの足取りが軽くなった。
一体どうしたんだ、キナ。ちょっと変だよな。もしかして毒の影響か?
「遅いよクルシュ。ほら、急がないと見つかっちゃうよ!」
階段の出口辺りで立ち止まったコルナが、こちらを見下ろしながら怒鳴る。
「あまり大きな声を出すな! そのせいで脱出がバレたらどうするんだよ!」
「あ、そっか。ごめんごめん。でもクルシュも声、かなり大きかったよ?」
「うるせーよ。で、次はどっちに進めばいいんだ?」
「一度王宮の裏手に回って地下通路から脱出する。ちょうど警備の人たちもシフト交代の時間だから、隙だらけでチャンスだよ。さあ、こっち」
コルナは左右を気にしながら、王宮の廊下へと駆けだした。
周囲に人影はない。窓の外はもう夜になっていた。
久しぶりの王宮だけど、特に感慨深いものは無い。思い出といえばあまり思い出したくないようなことばかり―――うん、さっさと脱出するに限る。
コルナの背中を追いかけるようにして、俺は走った。
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