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檻の中の錬金術師 その③

「でも、このままだとクルシュさんは死刑ですよ。どうにかして脱出しないと。そうだ、ピンチになって私のエルフ(ぢから)が覚醒しているかもしれません。今なら鉄格子くらい一捻りかも」


 キナは立ち上がり鉄格子を握ると、両サイドに引っ張った。


 なんと! 鉄格子はひん曲がり人が通れるスペースが―――できるわけないか。


「む、無理でしたぁ……ごめんなさいクルシュさん、お役に立てなくてぇ……」


 涙目でこちらを振り返るキナ。


「まあ、そうなるだろうなとは思ったよ」

「しかしどうする気だ? 魔石が無ければお主もただの人間だろ、クルシュ」


 フィラが大きな瞳でこちらを見上げた。


 俺は軽くウインクを返しながら、


「そんなこと言っちゃって。お前ならなんとかできるだろ、この状況」

「……その汚いウインクの借りはいつか返して貰うからな」


 はあ、とため息を吐いた後、フィラは口の中で何か呪文のようなものを唱え始めた。


 フィラが両手を開くと光のようなものがその手のひらに集まり、金属製の物体を形作った。


 キナが目を見開いた。


「フィラちゃん、もしかしてそれって」

「この牢屋の鍵だ。こんな狭くて薄暗い場所に長い時間いては気が滅入ってしまうだろう。さっさと出るぞ」


 そう言ってフィラは鍵を握った手を牢屋の外に出し、そのまま鍵先を鍵穴へ入れようとして―――入らない。


「……………」

「い、いや違うぞ。これは別に妾の手が届かないとかそういうことじゃなくて、身体の構造的に難易度が高い動作を強いられているというだけだ。手が短いからとかいう理由じゃないんだからなっ!」

「はいはい、分かってるよ。ほら貸してみろ」


 俺はフィラから鍵を取り上げると、鍵を開けた。


 普通に届いた。牢の扉が簡単に開いていく。


「………な、なんなんだよぉーっ。そんな風にされたらまるで妾が子どもみたいだろぉーっ!」

「だって子どもじゃん……」

「妾は数百年生きる誇り高き妖狐族なのだぞ! もっと敬え!」

「い、痛い痛い、脛を蹴るな脛を! とにかく扉は開いたんだからさっさと逃げるぞ! 誰かに見つかると厄介だし」

「ええい、なんて不躾な男だ! 鍵を作ったのは妾だぞ、礼の一つくらい言えないのか!?」

「あーはいはいありがとうありがとう、お前のお陰だよ」

「ふん。これも貸しにしといてやる。いつか利子を付けて返すのだぞ」

「分かってる分かってる。お前がいなきゃ脱出できなかったよ――――」


 不意に、頭の中で何か閃きのようなものを感じた。


 なんだろう、これ。どういう……。



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