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THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
6章 It takes all the running you can do, to keep in the same place.
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58 トランプの兵士

「トランプの兵士達よ。ネリーを追いなさい!」と女王が叫ぶと、足並みの揃った兵士達が生垣の曲がり角を曲がって一列で歩いてきた。


 俺は、その姿を見て思考が止まった。親父? どうして親父が? いや…… 親父は死んだはずだ。それに、刻印の数が違う……。きっと別人だろう…… しかし…… 似ている。似すぎている……。


 これは、いったいどういう事なんだ?


「51人全員揃いました」と、左手に剣を持ち、首まで伸びた髪も髭もカールした、ハートの刻印を持った男が言った。


「ネリーの行方を追いなさい」とイザベラ女王が指示を出すのを俺は茫然と見ていた。


 ただ、目の前の光景が信じられず、ただ立ちすくんでいる俺をよそに、兵士達はイザベラ女王の前に整然と4列で並ぶ。ダイヤの刻印を胸に1つ付けた兵士が先頭に立ち、そしてその後ろには、ダイヤの刻印が2つある兵士が並び、同じように後ろに行けば行くほど、ダイヤの数は増えていく。ダイヤの数が10個ついた兵士の後ろは、「J」、「Q」、「K」と文字が書かれた兵士が並んでいる。その横には、クローバーを象ったマークを胸に付けた兵士が同じように並んでいる……。そして心臓の形を象ったマークのも同じように並んでいた。そして…… 最後の四列目の、剣を象ったマークの刻印のある兵士は、1つ目から始まらず、2から始まっている。そして、10個、「J」、「Q」、「K」と続く。剣を象った兵士だけ一人足りない……。


 剣を象ったマークの刻印を持った兵士。本来は、13人いるはずが、1人足りない。それも、刻印をただ1つだけ持つ兵士がいない。その理由は……っ!!


 俺は、剣を抜き、「母のかたきだ! 魔女!!」と叫びながら、イザベラ女王に斬りかかる!


 親父が言っていた。俺には母親がいたと。そして、親父、母、産まれたばかりの俺。3人で仲良く暮らしていたのだと。母は、とても優しく、美しかったと……。それを、突然現れた魔女に街が襲われ、全てを奪われた……。母と幼い俺を助ける為に親父は魔女の交換条件を飲んだ。そして、親父は、魔女の兵士となり、自らの記憶を奪われたのだと。

 だが、ある時、親父は突然全てを思い出した。全てを思い出した親父は、母と俺を探した。だが、時は既に遅かった。魔女は、約束を反故にし、俺の母親を得体の知れない魔術の実験体にした。俺も、あと少し体が大きくなっていたら魔術の実験台にされているところだったそうだ。すんでの所で、俺は親父に救い出され、そして親父と逃げ延び、人里離れた山奥での生活が始まったのだと。

 親父は震えていた。「記憶が全部戻ったわけじゃないからはっきりとは思い出せない…… だが、あの魔女の、背筋が凍るような笑みだけは忘れない」

 勇敢だった、1度も剣術で勝てなかった、強い父だった。そんな父が震えていた。


 間違いはない。親父の記憶を奪い兵士にし、そして母を殺したのは、このイザベラだ! あの整列している兵士達は、父と同じ姿をしている。あんな姿の兵士は、教会の町アルトグランツェにも、ピリシカフルーフにも、シュネーケンにも、ウォロペーレアにも、ルヴェールにもいなかった! 雪の女王の配下にもいなかった! 


 斬りかかった俺から魔女を守ろうと、兵士達が俺と魔女の間に割って入ってきて、魔女を守ろうとする。


「邪魔をするなぁー!」と俺は、兵士達を押し倒す。


「お前等だって、きっと無理矢理兵士にさせられたんだろ!! 思い出せ!」と俺は叫ぶが、次から次へと兵士達は俺に斬りかかってくる。数が多すぎる! それに、親父と姿が重なる。斬ることが躊躇われる。


「どうしてわかっちゃったのかなぁ? アタシ的には、名演技だったのに!! せっかくあなたを騙してあげたのに!!」と、魔女は下品な笑い声をあげながら紅茶を堪能している。


「巫山戯るな! 親父を無理矢理兵士にし、そして欺し、俺の母を殺しただろっ!!」と、兵士達を峰打ちして意識を奪い、少しずつ兵士の数を減らしていく。だが、魔女と俺の間には、まだ30人ほどの兵士がおり、俺の行く手を阻む。


「あんたの親父? あぁ、そういえば、小癪にも逃げ出した兵士がいたわねぇ。スペードの1だったかしら? あなた、もしかして、あの時の赤ん坊? おっきくなったわねぇ〜。もう実験できないほど大きくなっちゃって…… アタシ的には、とっても残念〜!! もう、首を刎ねるしかないって感じ? アリス!!」と魔女は叫ぶ! 


 アリス!? 匿っていたのか! しかも、やっと兵士が一桁になるまで倒せたのに! やっかいな相手を呼びやがって! 黒い空間が魔女の横あたりで突然開き、そしてアリスが飛び出してきた。


「はいは〜い! アリスちゃん登場ぉと! あれあれ? デジレだ? すってきー! 最高にイカれてる! 私にわざわざ殺されにきてくれたんだぁ!」

 アリスは、嬉しそうに右手でメイスをくるくると振り回している。やる気満々って面だ。ここで、母の仇も、エインセールの仇も取る!


「じゃあ、私は、野蛮な戦いなんて見たくないから、お先に失礼〜」と魔女は、ティーテーブルから席を立ち庭園の奧へと消えて行く。


「まっ、待て!」と俺は叫ぶが、


「とぅるてってーん! キミの相手は、アリスなのです」と、アリスが俺に向けて空中回し蹴りをしてきた。魔女を追うには、まずアリスを倒す必要がありそうだ……。


 じょ、上等だっ!! まずは、エインセールの仇からだっ!

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