53 魔法都市ノンノピルツ
赤や青などさまざまな色の屋根がある家が整然と並んでいる街。街に植えられている木々は綺麗に剪定されている。城の前には、庭木でアーチ状が作られている。屋根の色が街の陽気にしている。緑々とした木々が、町に清潔感を与えている。
俺はクエスト協会を探しながら町の中を歩き回る。もちろん、警戒をしながら。街の角を曲がった瞬間、ひょっこりとアリスとであう可能性がある。
街のあちらこちらにある街灯。夜になれば光を灯すのだろう。神聖都市ルヴェールにですら、城の前に1つ街灯があるだけだ。ノンノピルツの街は豊かなのだろう。魔法学で栄えた町。もしかしたらこの街灯も魔法で明かりを灯す仕組みなのかも知れない。
家の角を曲がると、ひらけた空間があった。透明なガラスで出来た小屋があった。その中には白い花が咲いている。興味をひかれてその小屋の中に入ってみると、花の甘い香りが小屋の中に詰まっていた。小屋の中の外気よりも少し生暖かい空気。寒さに弱い植物をここで育てているのだろう。
俺が見たことのない植物だと思い、花弁に触ろうとした瞬間、花弁が一斉に開いた。そして、その中から現れたのは、黄色い目玉が一つ。すべての花びらの中に目玉が一つずつ。そしてその目玉には意志があるようで、何百と言う黄色い目玉が俺を凝視している。
魔物だ! と俺は判断をした。しかも、囲まれている。俺は、直ぐにガラスの小屋から脱出した。外に出て、魔物の追撃に備えたが、攻撃の意志はないようだ。むしろ、また花弁は閉じ、元の普通の花のようになった。
街の中で栽培されているなら危ない魔物ではないのだろうけど…… 観賞用にしても気味が悪い。花びらの中に大きな目玉の入っている花なんて、見ていて綺麗だなんて思うわけがない。
この花は一体なんなんだ? やっぱりこの街は普通じゃない、と考えていると
「お兄さん、見かけない顔だね」と、後ろから声がした。
俺が振り向くと、頭に猫の耳、そして尻尾を持った女が立っていた。薄紫色のチャシャ猫だ。両腰にそれぞれショートソードをぶら下げている。
「俺は、旅をしている。ちょっとこの街に立ち寄らせてもらっただけだ。名前はデジレだ」と俺は言う。アリスを討ち取ったらこの街を去る。別に嘘は付いていない。
「私は、アリス様直属の三銃士「ティーパーティー」の紅一点。人は私をリューゲと呼ぶ。フッ」と、リューゲと名乗った猫の亜人は、腰をくねらせ、右手を頭に。そして、左手はお尻の辺りに持っていき、猫をイメージしたようなポーぞを取った。
そもそも、誰が見ても、猫人間なのだから、そんなに猫アピールをする必要はないだろう。変な奴だ。しかし、アリス直属という言葉は捨ててはおけない。
「デジレ……。フッフッフッ…… ここで会ったが百ね……」
俺は、リューゲの言葉が終わらないうちに、喉元に剣を突きつける。
「お、おい! 話を聞かないか!」と、リューゲは尻尾を上下に揺らしているが、俺は悠長に話をするつもりはない。
「アリスの居場所はどこだ? それ以外の話は聞かない」と俺は言いながら、ゆっくりと剣先をゆっくりとリューゲの喉元に押しつける。
「アリス様がどこにいるかなんて知らない!」
「直属なのだろ? シラを切るといるなら……」と俺は言って、喉元に向けて剣を少しだけ押す。さすが、クルシオンから鍛えた剣である。リューゲの首筋からほんの少しだけ血が垂れ流れる。
「本当に知らない! こうなったらお前、アレだぞ、その…… 人目をはばからずに泣くぞ!!」とリューゲは言う。真剣な顔をして言っているが、はっきり言って意味が分からない。こいつは変な奴だ。
「おいおい。そこの君。女性に剣を向けるなんて、紳士じゃないな。紅茶の木に水をやりにきたら、とんだ修羅場に出くわしたもんだ」と言いながら、ステッキを持ち、へんてこな帽子を被った金髪の男が近づいてくる。
ステッキを持っているが、身のこなしは武術を修めた人間の歩き方だ。おそらく、ステッキに何か仕込みがしてある。ステッキの先から飛び道具が出るなどの仕掛けがあるだろう。俺は、リューゲの動きに注意を払いながらも、近づいてきた男を観察する。
「あっ。でも、そいつは猫だから女性じゃなくて、雌か! それならいいかぁ。ひゃはははははぁ」と何故か突然笑い出す。こいつも、変な奴だ。俺は、確信した。




