<おとぎ話5>
ある世界のある時空に、城壁に囲まれた大きな都市があります。その都市には、東西南北に1つずつ、大きな門がありました。そして、その東門には2人の門番がいます。長い間、2人は門の両脇に1人ずつ立って、門を守っていました。
しかし、2人が門を守っている間、東門を通った人はだれもいませんでした。それは、とてもとても昔に、その都市の王様がその門からの出入りを禁じ、さらにはレンガを積み上げてその門を塞いでしまったからでした。
ある日、東門の門番の1人が、頭上を越え、高い城壁を越えていく太陽を眺めながらその門番はふっと思いました。そして、大声でもう1人の門番に話しかけました。大声で話しかけたのは、その門はとても幅が広い門で、大声で話しかけないと反対を守っている門番に声が届かないからです。
「おぉ〜い。ふと思ったのだけれど、どうしてこの門を2人で守っているんだ? どちらか片方だけで十分なんじゃないか?」
しばらくして、声が門の端から帰って来ました。
「十分か十分じゃ無いなんて、誰にも分からないさ。そんなつまらないことを考えている暇があったら、しっかりと働け」
負けじと、門番は言い返します。
「それなら、他の門の様子を見てこようじゃないか。他の門の門番が2人いたらな、やっぱり2人必要なんだ。南門の方を見てくるよ」
またしばらくしてから、声が帰って来ました。
「そんな無駄なことはやめておけ。せっかく太陽が城壁に隠れて、影が出来たんだ。やっと涼しくなる。日陰で頭を冷やしていれば、そんな疑問なんて消えてしまうさ」
しかし、もうすでに門番の1人は南門へと歩き始めていて、その声は届きませんでした。
どれほどの時が過ぎ来たでしょう。東門に残っていた門番は、北の方から城壁に沿って歩いてくる人の姿を見つけました。それは、もう1人の東門の門番でした。
「結局、城壁を一周してきてしまったようだ」と、戻って来た門番は言いました。
「それで? どうだったんだ?」と残っていた門番は言います。
「それがなぁ。門番どころか、門すら見当たらなかったんだ」と戻って来た門番は答えます。
「そいつはとんだ無駄骨だったなぁ。さっさと元の場所で大人しく門番を続けるのだな」と残っていた門番は笑います。
「いや。他の門と、門番をもっと探してみようと思う。それじゃあ」と戻って来た門番は言うと、今度は東に向かって歩き始めました。
残った門番は、東に向かっていく門番の後ろ姿を見送り続けていると、地平線の先から太陽が顔を出しました。東に向かって歩いていく門番の姿は、朝陽に飲み込まれて見えなくなりました。




