46 堂々巡り
両手の自由を奪い、魔法の力を手錠により封じた俺たちは、雪の女王を囲んでいた。
「雪の女王ヴィルジナル、ルクレティアはどうしたら目覚めるのだ?」と、シンデレラさんが雪の女王に問いかける。
そして、そのアンネローゼさんの質問の回答を黙って全員が待つ。雪の女王は、世界を混乱に招き入れた。それは間違いがない。聖女ルクレティア様を眠りに落とし、魔物を追い立てた。しかし、その目的が分からない。雪の女王は何をしたかったのか。何を目的にしていたのか。はっきりとしたことがまだ分かっていない。
「黙ってないでさぁ」とアリスさんが今度は雪の女王の右肩を蹴った。俺が砕いてまだ完治していない場所にアリスさんの靴のつま先が激突する。雪の女王の顔を苦痛で歪む。じっと歯を食いしばって耐えている。
「アリス、もう彼女は抵抗が出来ないのだ。これ以上、無用だ」とシンデレラさんがアリスさんを怖い顔で睨んだ。俺を含めて、アリスさん以外の人も、シンデレラさんの考えと同じらしい。ルーティアさんは、雪の女王に治癒魔法を掛けたほうがよいと考えているのか、右手に回復魔法の光が集まっている。アリスさんはまるで、蟻や虫を無邪気に踏み潰す子供のような顔から、拗ねた子供のような顔になった。
「さて、そうは言うものの、黙りこまれては私たちも分からない。もう一度問おう。雪の女王ヴィルジナル、ルクレティア様はどうしたらお目覚めになるのだ?」とシンデレラさんが尋ねる。
「愚かね。どうせ、彼女は口を割ったりなどしないわ。原因である彼女を捕えたのだから、魔物の被害は沈静化の方向に向かうはず。未だ街道に溢れている魔物はクエスト協会の方で始末するわ。これで、すべてが解決でしょ?」とアンネローゼさんが言った。明らかに、聖女ルクレティア様の事を放置すると言外に含ませている物言いだ。
「そんなことは断じてない!! ルクレティアが目覚めてこそ、全てが解決するのだ。それに、ルクレティアは貴女の姉だろう。彼女を目覚めさせる方法を探すべきだ。聖女の祈りによってこの世界は平和を保っていたのだぞ。それを忘れたのか」
「馬鹿馬鹿しい。お優しい姉上に、世界を背負う力など無いわ」
シンデレラさんはまた口論を始める。しかも、俺が知っている限り、ほとんど同じ内容の口論を2人がしているのを聞いたことがある気がした。リーゼロッテさんやルーティアさんは、『また始まっちゃったよ』と顔に書いてあるかのような苦笑いを浮かべている。
「お前たちは、何も分かっていない。ルクレティアは自ら眠りにつくことを望んだのだ。妾はそれを手助けしたに過ぎない」と雪の女王がため息と共に呟いた。
「なっ!? それはどういうことだ」とシンデレラさんが驚きの声をあげた。
「お前たちはこの世界を覆い隠そうとしている強大な闇がわからないであろう…… あいつは、その闇を抑えるのに集中するために眠りについたのだ。今、あいつを起こせば、闇を抑えきれなくなり、この世界は一気に闇に飲み込まれるだろう」
「嘘を言うな!!」とシンデレラさんは怒鳴り声に近い声をあげる。
「本当だとも。だからこそ、妾は眠っているあいつの体を隠したのだ。それに、その話が本当だからこそ、お前はあいつを起こそうと躍起になり、妾を追い回していたのだろう?」
雪の女王は、地面に伏せながらも首を起こし、そして1人の姫を睨み付ける。そして、雪の女王の視線の先には、いままでの彼女からは想像もできないような邪悪な笑みを浮かべた1人の姫の姿があった。




