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THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
5章 神聖都市ルヴェール
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45 雪の女王捕縛

 雪の女王の魔力がついに底を着いた。6時間以上戦っていた。氷の城の中にいる全員が肩で息をしている。シンデレラさん、リーゼロッテさん、ラプンツェルさん、そして俺。前衛として戦った人達は、氷の刃による切り傷が絶えない。都度、回復魔法を掛けながら戦っているが、体の至る所に傷跡が目立つ。流血するような傷は、後衛のルーティアさんやアリスさん、そしてエインセールが回復魔法で癒してくれているが、それでも比較的深かった傷は、鞭で打たれた後のような赤い線が皮膚に浮かび上がっている。

 後衛の、特に火力担当であったアンネローゼさんも、普段の背筋を伸ばした気品ある立ち姿ではなく、杖に寄りかかってなんとか立ているという感じだ。シンデレラさんも、片膝をついて呼吸を整えているほどだ。

 かという俺もぼろぼろである。長期戦となって、俺たちは戦い方を変えた。雪の女王に休息の暇を与えないという目的で、リーゼロッテさん、ラプンツェルさんのコンビと俺、シンデレラさんのコンビの二手に分かれて、交互に雪の女王に近接戦を行っている。そして、アンネローゼさんの底をついた魔力が自然回復したら、遠距離からの攻撃を仕掛ける。

 そんなことを延々と続けていた。なかなか雪の女王の行動力を奪えるほどのダメージを与えられない。いや、与えてはいるが、すぐに回復をされてしまう。

 

 雪の女王が強敵である、ということは間違いがない。しかし、もっと問題なのは、俺たちが戦っている場所だった。俺たちが戦っている場所は、吐く息がそのまま凍ってしまうほどの極寒の地。攻撃の魔法で考えても、アンネローゼさんの放つ稲妻や炎を魔法で造りだすには負担が大きい場所だ。それに対して、雪の女王が操る氷は、そこらじゅうに腐るほどある。ほとんど魔力の消費をしないまま、強大な魔法を放てている。

 それに、この極寒の地の気温。長時間になればなるほど、体の汗が凍りつき、体を冷やしていく。そして俺たちの体力を奪っていく。ルーティアさんやアリスさん、エインセールが後衛として、俺たちの運動能力などを魔法で上昇させてはくれているが、体感で言うなら、その魔法の効き目が薄くなっている。むしろ、後衛の魔法の援助が無かったら、手は冷たく痺れ、剣や盾を握れないだろう。魔法で運動能力の底上げをしても、それだけ本人たちの能力が落ちているということになる。それに比べ、雪の女王の運動能力は疲れはじめてきて落ちているが、微減という程度のように思える。


「シンデレラさん、次は俺が一人で行きます。少し休んでいてください」と俺はシンデレラさんに声を掛ける。シンデレラさんの顔には、汗が水滴となって浮かんでいる。この極寒の地で、その汗の量は危険だ。


「いや、私だけ休むわけにはいかない。キツイのは皆同じだ」と、シンデレラさんは答える。確かに、シンデレラさんの性格上、自分だけ休むといことはしないだろうと俺は思いなおす。そして、置いていたカバンから最後のポーションを取り出す。液体であるが、氷の上に鞄を長時間おいていたためか、ポーションの中に氷が浮かんでいた。もうしばらくしたらどのみち凍りついて飲めなくなってしまうだろう。


「ポーションです。冷たいかも知れないですが、飲んでください」とシンデレラさんに俺は差し出す。


「す、済まない」とシンデレラさんは言ってそれを受け取る。普段なら受け取るとは思えないが、シンデレラさんも自分の体力の限界が近いことを分かっているのか、それを受け取る。


「抜かれた!!」と、ラプンツェルさんの声が響いた。


 俺は、シンデレラさんから雪の女王の方へ視線を移すと、氷の刃が俺に向かって飛んで来ていた。俺たちがポーションのやり取りで隙を見せた瞬間、リーゼロッテさんとラプンツェルさんの攻撃を掻い潜って、雪の女王が俺に魔法攻撃を放ったのだろう。

 しかも、もう躱せる距離じゃない。ポーションを探すために武器も防具も氷の上だ。防ぐことも難しい。俺は、とっさに両腕を顔の前で交差させ、顔や首など急所に氷の刃が届き、即死の傷を負うことのないような防御態勢を取る。


 が、俺の体に右から衝撃が加わり、俺の体が横に倒れた。とっさのことで俺は受け身を取ることができず、そのまま氷の床に左肩から倒れこむ。氷の刃は俺の顔の30センチほど横を通り過ぎていく。


 躱せた、と思ったその時が……


「きゃあ」という声が響いた。


 それは、エインセールの声だった。エインセールの右の羽を氷の刃が貫通していくのが見えた。俺を助けるために俺の体に横から体当たりしたのだろう。


 空中でバランスを失いゆっくりと地面に落下していくエインセール。俺は、氷の床から跳ね起きてそれを受け止め、「回復魔法を!!」と叫ぶ。

 すかさずルーティアさんが飛んできて、回復魔法でエインセールの傷を癒す。大事にはならないようだ。


「食らぇ!」


「狼さんパンチ!」


 と、2人の声が響く。王座の方では、どうやらラプンツェルさんのハンマーと、リーゼロッテさんの拳の両方の攻撃が雪の女王へと届いたらしく、雪の女王が空中を舞っているところだった。

 そのまま氷の床に背中から叩きつけられた雪の女王。


「エクスプロージョン」とアンネローゼさんが火球を雪の女王に向かって飛ばした。


 火球が治まると力なく倒れている。明らかにダメージを負っていた。しかし、雪の女王は立ち上がろうとする。本当に、しぶとい、と俺は剣を取り、雪の女王に切りかかろうとする。が、それよりも先にアリスさんが動いていた。


「アリス的に大チャンス!!」と、アリスさんは見事な空中回し蹴りを雪の女王に食らわせた。そして、そのまま氷の床に組み伏せ、手錠らしきものを雪の女王に取りつけた。雪の女王は後ろに手を回され、そして手錠を付けられていた。もう、抵抗が出来そうにない。


「離せ! 妾は誇り高き雪の…… ぐっ」と雪の女王が言葉を話そうとするが、それをアリスさんが雪の女王の脇腹に蹴りを入れて黙らせたようだ。


「この手錠は、魔法都市ノンノピルツ謹製の魔法の手錠だよ。もう、魔力を紡ぐことはできないよ!」とアリスさんは、雪の女王の頭を右足で踏みつけながら笑顔で言う。雪の女王も、何とか逃れようと抵抗をしているが、踏みつける力が大きいのか、体を芋虫のように震わすことしかできない。


「勝負あったようね」とアンネローゼさんが呟く。

 氷の上に倒されている雪の女王の周りに皆が集まる。エインセールも、ルーティアさんの回復魔法のおかげで、無事にまた空中を飛べている。


「みんなの勝利だね」と、リーゼロッテさんが嬉しそうに右手を挙げて飛び跳ねている。

 みんなボロボロの姿だが、全員生きている。俺は、安堵のため息をついた。

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