表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
5章 神聖都市ルヴェール
49/72

43 姫会議

 馬車は進み、城塞都市シュノーケンにたどり着いた。通常、姫会議が行われる場所は、どの姫にも属していない中立の町、教会の町アルトグランツェだ。だから、俺が最初に教会の町アルトグランツェにたどり着いた時も、町の湖の周りで話し合いがもたれていたということだそうだ。しかし、馬車でアルトグランツェに向かっている途中、空の草原エングヒンメルを馬車が通っているとき、アンネローゼさんから魔法の鏡で一方的な会場変更の通達をシンデレラさんが受けた。

 勝手な会場変更に関して、シンデレラさんが激怒した。馬車を引いている馬がおびえてしまうほどの大きな声でアンネローゼさんと鏡越しに口論を始めたのだ。

 俺もエインセールも、そしてジークフリードさんも、そして馬もたまらず草原へと非難をした。


「シンデレラさんの声、滝壺の轟音と同じくらい響いていますね」とエインセールが遥か下の谷間へと落ちている水の流れを見ながら言う。


「そうだね」と俺は、暇つぶしに吹いていた草笛を加えたまま答えた。


 ・


 しばらくして、「待たせたな。行こう」とシンデレラさんが馬車の扉を開いて俺たちを呼ぶ。シンデレラさんの顔は、真っ赤で、眉間に皺が寄ったままだった。


 結局、姫会議の会場は城塞都市シュノーケン。そして、馬車は向かうが、移動中ずっとシンデレラさんは不機嫌で、アンネローゼさんに対する愚痴を到着までずっと俺は聞く羽目になった。エインセールは、馬車の窓から飛んで逃げ出し、御者台のジークフリードの隣で日向ぼっこをしていたそうだ。

 シンデレラさんの愚痴は、2人が初めてあったのはシンデレラさんが10歳の時の舞踏会だったらしい。

「あいつは、出会いがしらに、『カボチャみたいなダサい馬車ね』と言ったのだぞ! 信じられるか? 私の馬車にいきなりケチをつけたのだ!」とシンデレラさんは愚痴を延々と続けている。

 どうやら、シンデレラさんとアンネローゼさんは、昔から仲が悪いと言うか、反りが合わないようだ。


 愚痴が終わらないうちに、アルトグランツェを過ぎ、シュノーケンに到着していた。距離的な問題もあるだろうが、俺たちが会議場に入る最後だった。会場は、シュノーケン城の大広間。各自が座る座席も指定されているようだ。長い机の両面、左側に保守派、右側に改革派という配置になっている。

 俺が会場に入ったのに気付いたリーゼロッテさんは、笑顔で手を振ってくれる。体面に座っているアンネローゼさんを始め、後ろで控えている騎士たちは険悪な感じだ。ラプンテェルさんも腕を組んで厳しい表情をしている。リーゼロッテさんは癒しだと俺は改めて思った。そして、左側にはルーティアさんがいた。普通に座っていたからびっくりをした。人魚だから、椅子に座るのはきついのだろうと思っていたが、足が生えていた……。あれ、下半身は魚のヒレのようだったはずだけど……。人間の足になっても、相変わらず露出の大きな服装には変わりないけれど……。


 シンデレラさんは、アンネローゼさんの対面に座る。そして両者は睨み合っている。


「デジレ、生きてたんだ~。雪に埋もれて今頃、氷像になってると思ってたのに! 氷像になってたらアリスのお部屋に飾ろうと思ってたのになぁ」と、俺にアリスさんが意地悪そうな笑顔で話しかてきた。割と酷いことを言っている……。アリスさんと一緒に雪の女王を倒しに行かなかったことをまだ根に持っているようだ……。


 会場にドン、という音が響いた。アンネローゼさんが持っていた杖で大理石の床を叩いたようだ。

「さて、やっと全員そろったのだから、姫会議を始めましょう」と、アンネローゼさんが言うと、会場が静まる。


「まず、私から1つ報告をさせていただこう」とシンデレラさんが発言をする。「皆も知っている雪の女王ヴィルジナルの件だ。彼女に関して様々な噂が流れている。聖女ルクレティア様を眠りにつかせた犯人が彼女だ、という噂。彼女が各地で魔物をけしかけているという噂。耳にした覚えがある人が多いはずだ。今までその噂は、憶測の域を出ることはなかった。しかし、その噂は事実だった!」

 会場全体からざわめきが起こる。小声で隣の人と話始める人もたくさん出始めた。

「静粛になさい」とアンネローゼさんが声を上げ、また会場は静まり返る。そして、「その証拠はあるのかしら?」とアンネローゼさんが言う。


「ある。先日、雪の女王ヴィルジナルとこの、デジレ殿が戦った。そしてその際に、ヴィルジナルはその事実を認めたのだ」


「なるほど…… それで?」とアンネローゼさんは話の続きを促す。アンネローゼさんは、左手で顎を触り、何か考え事をしながら聞いているようだ。


「私は、雪の女王ヴィルジナルを捕えることを提案したい。だが、雪の女王ヴィルジナルは知っての通り、強力な力を持っている。ここは、改革派、保守派と考え方が分かれて対立している我々だが、協力をし、一致団結をして雪の女王ヴィルジナルを捕えるべきだ」とシンデレラさんは力強く言う。


「なるほど…… 保守派の力だけでは捕えることができないから、私たちに協力を仰ぎに来たということね」とアンネローゼさんは冷ややかに言う。安っぽい挑発だ、俺は思う。


「なんだと! そんなことは無い! 協力を惜しむというのであれば、私達だけで雪の女王を捕らえてみせる」と、両手で机を叩きシンデレラさんが言った。いや、なんで、あからさまな挑発に易々と乗っちゃうかなぁと、俺は後ろで苦笑いをした。シンデレラさんの性格を動物に喩えるとするなら、猪かも知れない……。


「協力をしないとは言ってないわ。分かりました。私達も協力をしましょう」とアンネローゼさんは言う。


 え? と俺は思う。そんなあっさりと? という感じだ。そしてその思いはシンデレラさんだって同じだったらしく「ど、どういうつもりだ?」と聞いた。いや、そんなことを率直にアンネローゼさんに聞いたら、こっちに裏があると思われてしまうけど……。


「どういうつもりだと言われても? だって当然じゃない。魔物が各地で暴れ回っているのが雪の女王の仕業というなら、その原因を排除するのが私達の使命。聖女なんていなくても、私達は平和に暮らせるということを証明する絶好の機会じゃなくて?」とアンネローゼさんは答える。


「その通りだが……」とシンデレラさんの語調が弱くなる。アンネローゼさんの真意が分からないのだろう。もちろん、俺にも分からない。俺もシンデレラさんも、アンネローゼさん率いる改革派は、理由を付けて協力を断ると思っていた。少なくとも、難癖を付けるだろうと思っていた。俺も、雪の女王が確かにそう言った、ということを自ら証言する心づもりでいた。しかし、それすらも不要。あっさりと協力する。逆にそれが不可解だ。


「それで、ヴィルジナルはどこにいるんだい?」とアンネローゼさんの隣に座っていたラプンテェルさんが口を開く。


「アリスは知っているよ。雪の女王は、エヴィヒグラス氷山にいるよ。デジレにやられた傷を本格的に治療しているみたいだね〜」とアリスさんが言う。本当になぜ、アリスさんはそんなことまで知っているのだろうか。


「それなら、極光の湿地帯マグノーリアから北北西に向かえば良いわね。ただ、彼処は環境も厳しいし、魔物も強い。大人数で行くよりは、少数精鋭が賢い策ではないかしら?」とアンネローゼさんが言う。


「そうだね。弱い人が言っても、どっかの誰かさんみたいに、雪崩で雪下に埋もれうかなぁ。あはは」と、アリスさんは俺を指差しながら言った。やはり、アリスさんはまだ、例の件を根に持っているらしい。


「それならば、私達姫が直々に行くべきであろう」とシンデレラさんが言う。


「それに賛成。そうと決まれば、さっそく氷山へ向かいましょう」とアンネローゼさんが言って席を立つが、「まっ、待て。もう一つ話がある。それは、クエスト協会の申込書に密かに込められている魔方陣の話だ!」とシンデレラさんがアンネローゼさんを呼び止める。


「魔方陣? ああ、あれね。あれは、雪の女王を捕らえてからゆっくり説明してあげるわ」とアンネローゼさんは何事でも無いかのように言う。


「しかし、あれも重大な問題であろう!」とシンデレラさんが言うが、アンネローゼさんは取り合うつもりがないようだ。


「ねぇ、シンデレラ。行くの? 行かないの? あんまり時間をおくと、雪の女王の傷が癒えちゃうよ? アリス的には絶好の機会だと思うんだけどなぁ」とアリスさんまで席を立つ。


「…… 分かった。絶対に説明をしてもらうからな!」とシンデレラさんも席を立つ。姫達は、出口へと颯爽と向かう。


「ねぇ、君は来ないの? やられっぱなしのお間抜けさんなの?」とアリスさんは俺に言った。


「もちろん、俺も行く!」と俺は答えた。


「理論通りの反応だね! アリス的にも、君が来てくれると助かるよ!」とアリスさんは笑顔で言った。どうやら、アリスさんの機嫌は直ったらしい。先日の件は水に流してくれたようだ。


 俺は、シンデレラさんを説得し、俺も同行する許可を貰った。6人の姫と俺、そしてエインセールは、雪の女王を捕らえに、エヴィヒグラス氷山へと出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ