39 雪原ルイヒネージュ
真っ白な地面に、真っ白な風が流れ、真っ白な空がある。雪原ルイヒネージュはそんな場所だった。まだ明るいように感じるが、日が暮れたら一気に暗くなる。それに、風が強くなり始めている。吹雪になりそうな気配だ。
「エインセール、これ以上進むのは無理だ。今日は、この斜面に雪洞を掘ろう」と俺は言って、荷物からスコップを取り出して雪面に穴を掘り始める。エインセールは、俺が掘り出した雪塊を両手で抱えて、外へと運び出していく。周りは雪だらけなのに空気は乾燥していて喉が渇く。雪を口に含んで水分補給をしたいが、これ以上、体温を奪われるのは良くないと考えてぐっと我慢をして、作業を続ける。
俺とエインセールが横に寝っ転がるほどの雪洞を掘り進め、その中に入る。雪洞の入口はマントで風が入らないように塞いだ。
雪洞の中は、天井に吊り下げたエインセールのランタンの光で仄かに明るい。
「デジレさん、お鼻が真っ赤になっていますよ」とエインセールは、ランタンに両手を当てて暖を取りながら言う。
「暖かいスープを作るよ」と、俺は鍋の中に雪を入れ、そして既にカチコチに凍っている干し肉とパンを入れて煮る。お互い疲れているのか、会話をすることもなく、雪洞の中は、お湯が沸騰する音だけが響く。
出来たスープを取り分けてやると、「美味しいです」とエインセールは笑顔で言った。エインセールの頬や鼻も真っ赤になっていた。スープを作った熱気のお陰で雪洞の中も温まり、そして暖かいスープを飲んだお陰で、体も温まった。そして眠たくなる。
「デジレさんと一緒に行動してから、海の底に行ったり、雪の世界に行ったり、本当にいろんなところに行きますね。とっても楽しいです」と俺の体と寝袋の間に入り込んだエインセールが呟く。
「俺だって、こんな場所に来るなんて想像すらしてなかったよ。親父が言っていたような、夜でも街灯の光が輝いている、たくさんの人が住んでいる都市に行くんだろうな、ってことしか考えていなかったよ。エインセールは、次に行くとしてらどんな所へ行きたい? ここは寒いから、次は砂漠とか?」
その答えは無かった。疲れてエインセールは眠ってしまっているようだった。静かな寝息が聞こえる……。俺は、エインセールを起こさないようにゆっくりと雪洞の天井に手を伸ばし、ランタンの明かりを消した。
雪洞の外からは、強い風の音が聞こえる。外は、嵐のようだった……。




