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THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
5章 神聖都市ルヴェール
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35 魔法の手鏡

「アリス、どうしたんだ?」とシンデレラさんは尋ねる。アリスさんは、左手を腰に当て、右手でブイサインを作り、座っている俺達にウインクをしてきた。何かのポーズなのかも知れない。


 一応、シンデレラさんはこの神聖都市ルヴェールのお姫様だし、部屋にノックもしないで入って来るというのは、常識的にどうなのかと思うのだけど、シンデレラさんの対応は普通だった。おそらく、アリスさんの登場はいつもこのようなものなのだろう。シンデレラさんが不作法を咎めないのであれば、客人である俺がそれを指摘するは憚られる。


「えへへ〜ん。アンネローゼからのお届け物だよ」と言って、アリスさんは右手の一差し指で空中に丸い魔方陣を描き、その中に手を突っ込む。


「じゃじゃん! 魔法の鏡だよ」とアリスさんは言って、その鏡を抱えたままシンデレラさんの横に座る。


「魔法の鏡? なんだそれは?」と、シンデレラさんはアリスさんが持って来た鏡をのぞき込む。俺も、釣られて鏡を覗き込む。外縁に綺麗な彫り細工がしてあるだけの普通の鏡のように見えるが……。


「これは、魔法都市ノンノピルツの魔法の粋を集めた物なんだよ〜! これを使えば、離れた人と会話が出来るのです。これをクエスト協会の支部に置いて、支部や本部と密に連絡を取り合って、情報の共有をするのが目的だって。クエストが殺到している都市があれば、他の支部から騎士の応援を要請したりできるってのがアンネローゼの建前だね!! 大量に発注して貰って、ノンノピルツの魔法職人達は大忙しだよ。儲かったから、アリス的にはほくほくだけどね」と、アリスさんは説明をした。


「アマーリエ母上が持っている鏡と同じようなものだろうか?」とシンデレラさんが言う。


「あの何でも教えてくれる鏡とはちょっと違うかな。持って来たこの鏡は、この鏡と同じタイプの鏡に映っている人と話ができるという鏡なの。百聞は一見に如かずかな〜!!」と言って、アリスさんは、手鏡の表面を撫で始める。

 俺とシンデレラさんはその様子を興味津々に眺めて居る。魔法の手鏡を覗き込むと、そこには文字が浮かんでいる。


「この鏡の文字の部分で、お話したい人を選ぶんだよ。この鏡の文字が現れるってことは、その人が鏡の前にいるってことね。ちなみに、この『全員』というのは、鏡の前にいる人全員と1度に話ができるんだよ。会議とかで使える機能かな〜!! とりあえず、ラプンツェルがいま、手鏡に写っているみたいだから、彼女に話しかけてみるね!」と言って、アリスさんは魔法の鏡を操作している。


「ん? アリスではないか。それに…… 後ろにいるのは、シンデレラと…… デジレ殿か。何かあったのか?」と、アリスさんが持っている鏡には、確かにラプンツェルさんが写っており、そしてその写っているラプンツェルさんの口も目も、まるで本物のように動いていた。


「おぉ〜!!」と俺とシンデレラさんは同時に簡単の声を上げた。まるで、鏡の中にラプンツェルさんが入っているようだ。まるで、水面に映ったラプンツェルさんを見ているようだ。この場にいない人の姿が映っているなんて、とても不思議だった。


「えへへ。アリス的にね、岩山の猿どものボス猿の間抜け面が見たくなっただけなんだ〜!!」


「なっ! 貴様っ!!」とラプンツェルさんが顔に血管を浮かべて激怒している様子が見える。


 プチィ、という音が魔法の鏡から聞こえ、そして魔法の鏡は普通の鏡のようになり、アリスさんやシンデレラさんの顔、そして俺の顔を写している。ただの鏡に戻ったようだ……。


「あははっ! あんなに顔を赤くして怒ってさぁ。赤いのはお尻だけじゃないってことだね。超楽しいぃ!!!! やっぱり猿だぁ」と、アリスさんは大笑いをしている……。いや、笑い事じゃないと俺は思うが……。


「魔法都市ノンノピルツと鉱山都市ピラカミオンは、考え方が合わないらしく、昔から仲が悪いのだ」と、シンデレラさんが冷静に解説をしてくれた。


「まぁ、こんな感じで使えるのが、魔法都市ノンノピルツ謹製の魔法の鏡だよ。ピラカミオンの猿には造れない品物だね」とアリスさんは笑顔で毒を平然と吐きながら言う。


「なるほどな。これで、連絡を取り合えば今以上に情報の交換などができるだろう。ときにアリス。この魔法の鏡の注文は、アンネローゼから受けた、と言ったな?」とシンデレラさんが襟を正して言う。


「ん? そうだよ」とアリスさんはニヤニヤしながら言う。


「いつ、この注文を受けたのだ?」とシンデレラさんが単刀直入に聞いた。


 俺はなるほど、と思った。この魔法の鏡を魔法都市ノンノピルツが注文を受けたのがいばら姫ルクレティア様が眠る前だとしたら、アンネローゼさんはこの世界の危機を予め知っていたという証拠になるはずだ。


「ん〜とね。残念だけど、いばら姫が眠りに入った直後だよ。そうだよね〜。アンネローゼさんって、怪しいよね。何か悪いことを考えているって感じ。アリス的には楽しければなんでもいいんだけどねーー」とアリスさんは言う。


「やっぱり、アリスさんもアンネローゼさんが悪いことを考えているように思いますか?」と俺は尋ねる。


「ん? だって、そう思わない? そのクエスト協会の申込書兼誓約書って、めちゃくちゃ怪しいじゃじゃん? 変な魔法がかけてあるしさぁ。アリスたんの目はごまかせないのです」と、机に置かれている俺とシンデレラさんが置いた二枚のクエスト協会申込書を指差しながらアリスさんは言った。


「え?」と意表を突かれた、俺とシンデレラさんだった。

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