<おとぎ話4>
未亡人とその息子、小さな男が、ノーサンバランドのローズリー村の近くの小屋に一緒に住んでいました。ある冬の晩、男の子は母親に寝室に行きなさいと言われましたが、言うことを聞きませんでした。男の子は、まだもうちょっと長くその場に居たかったのです。
「だって……眠くないんだもん」と男の子は言いました。母親が子供に何度も言い聞かせましたが、無駄でした。そしてついに母親は息子に言いました。
「もし起きているのだったら、きっと妖精がやってきて、連れ去りに来るよ」
男の子はその言葉を聞いて笑い出しました。母親は諦めて一人で寝室に行きました。男の子は、暖炉の側に座ったままです。
男の子が暖炉とその暖炉で温まって間もなくのことです。子供の人形ほどの、美しい姿の者が、煙突から降りてきて、暖炉の前に座ったのでした。その子供は最初は驚きましたが、それに好印象を与えようと微笑みを崩しませんでした。そして、男の子は恐怖に打ち勝ち、親しげに質問をしました。
「君の名前は?」
「Ainsel よ」とその小さいのは偉そうに答えました。そして、女の子は同じ質問を男の子にしました。
「君の名前は?」
「My Ainsel さ」と、男の子は答えました。
そして、二人は新しく知り合った2人の子供のように一緒に遊びはじめました。2人は、暖炉の炎が弱まるまで無邪気に遊び続けました。暖炉の火が弱まったので、男の子が火かきでかき混ぜはじめます。男の子が暖炉の中をかき混ぜたことによって舞い上がった熱い火の粉の1つが、一緒に遊んでいた女の子の足に落ちてしまいました。
とても小さい女の子の泣き声が、恐ろし声を呼び出しました。そして、男の子が、寝室で寝ている母親の後ろに隠れると同時に、女の子の母親の恐ろしい声を男の子は聞いたのでした。
「誰がこんなことを? 誰がこんなことを?」その女の子の母親は恐ろしい声で叫びながら聞きます。
「My Ainsel がやったのよ!」と女の子は答えます。
「それなら、どうして……」と女の子の母親は言いながら、女の子を煙突から外へと蹴り上げました。「どうしてそんなに騒いでいるんだい。自分でやったのなら誰も責めたりできないよ」
<おとぎ話4>の出典:
Keightley, Thomas, "The Fairy Mythology, Illustrative of the Romance and Superstition of various Countries;", new edition, revised and greatly enlarged (London: H. G. Bohn ,1850), pp. 313.(著作権切れ)
邦訳者:池田瑛
訳者解説:
・このおとぎ話のタイトルは『Ainsel』です。ノースサンダーランド(イギリス)に伝わる類似した話では『Me A'an Sel』というタイトルがつけられています。Joseph Jacobsの『More English Tairy Tales』では『My Own Self』。また、スコットランドに伝わる話では、男の子は自分の名前を『Mysel' an Mysel'』と名乗ります。ノルウェーでは、『My name is Self』と女の子が名乗ります。・日本語だと分かりにくいかも知れませんが、「My Ainsel」「Me A'an Sel」「Mysel」が、「Oneself」とか「My Own Self」など「私自身」という意味の単語と発音が似ているということがこのおとぎ話の面白さです。




