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THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
4章 ヴァングロットの戦い
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26 カイベルハルト

 氷塊に近づく俺たちの前に、蒼穹色の鎧兜を装備した男が立ちはだかった……。


 右手ではすでに剣を抜いており、マントは殺気と海流で揺れている。


「どこぞの者かは知らぬが、立ち去られよ」と、男は持っていた剣先を俺たちに向ける。その男の目は、昆虫のような複眼で、その1つ1つの目がダイヤモンドのように輝いている。立ち姿や鎧、兜を着ている外見では人間のように思えるが、中身はおそらく人ではないだろう。


「断る。お前が、海を冷たくしている張本人だな! 魚たちが寒い寒いと迷惑している。お前こそここを立ち去れ。元の暖かい海へと戻すんだ!」と俺は剣を抜きながら言う。すでに相手は剣を抜いているのだ。遠慮することなどない。


「愚か者め。貴様、その姿形をみた限り、騎士であろう。まずは啖呵を切る前に名乗るべきであろう。我は、雪の女王ヴィルジナル様が騎士、カイベルハルトだ」と男は言う。


「俺は、デジレ。まだ、仕える人は決めていないが……。騎士見習いだ」

 最初、名乗らないでいきなり剣先を向けて警告をしてきたのはそっちの方だ。なんて勝手なやつだと俺は腹がたったが一応、名乗った。


「私は、エインセールよ!!」


「私はウォロペアーレを統べる人魚姫ルーティアが姉、ベアトリクスよ。魚たちが住むべき場所を返してもらうわ」と、エインセールに続き、ベアトリクスさんも名乗る。


「愚か。道理も分からぬ奴らよ。だから、貴様等はヴィルジナル様の冷たさに隠れた温もりが理解出来ぬのだ……。悪いことは言わぬ。さあ、早く立ち去るがよい」とカイベルハルトは、冷たい冷気と殺気を俺たちに向ける。


「早く、その氷を溶かせ。さもないと……」


「笑止。さもなくばどうするのだ? 小僧!!」

 カイベルハルトの冷たいブルーの瞳が一瞬光ったと思うと、彼の周りに凍りの弓矢が無数に現れはじめた。そして、それが俺達に向かって飛んでくる。


「マジックプロテクト」と、エインセールが唱え、大きな六芒星の光が俺とカイベルハルトの間に現れる。そして、氷の弓矢は、その六芒星に当たるのと同時に、粉々に砕け散っていった。粉々になった氷の破片が乱反射し、万華鏡の中のような光景を作り出した。


「海に溶け込む太陽よ、私に力を……。プロミネンスボウ!」とベアトリクスさんは唱えた。ベアトリクスさんを囲む周りの海水が突然、海の中にマグマが現れたかのように沸騰し始めて、ベアトリクスさんの姿が見えなくなるほどの気泡が発生した。そして、その気泡が収まると、水中でも炎が蠢いている弓矢を構えたベアトリクスさんの姿があった。


「デジレ君、私が援護します。あの人から氷属性の魔法を感じます。海を冷たくしているのはあの人です!」とベアトリクスさんが言う。ベアトリクスさんの黄金色だった髪も、夕暮れのような真っ赤な髪となり、そして弓矢の周りの海水が熱せられて上昇気流が発生しているのか、ベアトリクスさんの長い髪も逆立ちながら揺れている。


 俺は、その言葉を受けて、カイベルハルトの元へと走り出しながら、「シールドスタンス」のスキルを唱え、ガード能力を向上させる。さすがは、シンデレラさんからもらった碧の盾シンデレラシールドだ。程よく暖めたナイフでパンを切ったときのように、スムーズに俺の魔力が盾へと馴染んでいく。


「ウィークショット」と、ベアトリクスさんがスキルを使って弓矢を放ち、二本の弓矢がカイベルハルトが向かう。弓矢の1本は盾によって防がれるが、1本が右肩に突き刺さり、大きな火柱となる。


「ぐぅう」と、カイベルハルトは苦しそうな声を上げた。

 やはり、奴の属性は氷なのだろう。炎の属性に弱いのは道理だ。


「ベアトリクスさん! 効いています!」と俺は攻撃の効果を伝えつつ、傷を負って手薄となっている右側に回り込む。右肩に刺さって燃え続ける弓矢に、カイベルハルトは剣を右手で振るう余力などないだろう……。親父の教え……「相手の弱点を見つけたら、そこを徹底的に攻撃しろ。それが生き残る道だ!」だ。

 俺がカイベルハルトに対して振り下ろした剣は、左手に持っていた剣で防がれる……。


 が、盾を俺に向けたことによって、カイベルハルトはベアトリクスさんの弓矢を盾で防ぐことはできない。


「ぐぁあああ」という雄叫びがヴァングロットの穴に響く。


 ベアトリクスさんの放った弓矢が、カイベルハルトの背中に突き刺さっている。弓矢が燃え続ける痛みか、盾を持っている左手もお留守になっている。


「今だ!」という確信を持って、俺は兜と鎧の隙間を狙って剣を横に一閃……。


 俺は、狙い通りに、カイベルハルトの首を胴体から切り離すことができた。ヴァングロットの穴の底に落ちる首。


 俺達は、勝った……。

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