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THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
3章 冷たい西の海を目指して
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15 城塞都市シュネーケン

「デジレさん、港町ウォロペーレアへはこちらですよ~。導きのランタンがこちらを指示しています!!」

 エインセールは、教会の町アルトグランツェの東の方へと飛んでいく。時々宙返りをしたりして楽しそうに空を飛んでいる。誰かを導くとか道案内するのが妖精としてのエインセールなのだろう。本領発揮というような感じで空を舞っている。ちゃんと前を見ながら飛んでいるのか心配になるくらい……。


「って、ちょっとエインセール! 港町ウォロペーレアは、西の方角だろ? どうして、東に向かってるんだ。方向逆だぞ」と俺は前に飛んでいるエインセールに呼びかける。ウォロペーレアは、アルトグランツェの南西の方向にある町のはずだ。東に向かっては遠ざかるだけだと思う。


「導きのランタンがこちらを示しています! ご安心ください」とエインセールは構わず進んでいく。


 そしてたどり着いたのが、城塞に囲まれている都市だった。土色の煉瓦が高く積み上げられている。都市の中心には、大きな噴水がある。これがこの都市の水源なのだろう。噴水の東側には大砲が並んおり、その横には大砲の弾が積み上げられている。また、壁にはぎっしりと、よく手入れの行き届いた槍がぎっしりと並んでいる。いつでも、戦争が出来る状態のようだ。都市の各所に立っている兵士たちも、アルトグランツェにいた兵士たちのようにフランクな態度ではなく、直立不動で都市を見張っている。訓練が行き届いていると言えるが、どこか物々しい印象を受ける。


「デジレさん! ここが城塞都市シュネーケンです。この都市は、白雪姫アンネローゼ様が治めている都市なんですよ」と、城の前でエインセールが言った。城も、分厚そうな煉瓦で造られていて、いばらの塔のように美しさを求めた城ではなく、防衛ということだけを考えて合理的に造られた城のようだった。


 俺たちは、さっきまでウォロペーレアに行こうと言っていたはずなのだが、なぜエインセールは、嬉しそうにシュネーケンを紹介しているのだろう……。


「あ、あそこにいるのは、アンネローゼン様ですね。何やら、忙しそうですね」とエインセールが言った。


 アンネローゼンさんは、城壁の南門の近くにある家の前で、数人の人と打ち合わせをしているようだった。その家の屋根の上には数人の大工風の男達がいて、ロープで鉄製の板を引き上げていた。どうやら、その家に看板をかける作業をしているところのようだ。

 そして、その看板には、『クエスト協会本部』という銘が刻んであった。先ほど、シンデレラさん達との会議で設立が決まったクエスト協会の本拠地を作っているのだろう。それにしても、アンネローゼさんは、仕事が早いと言った水準ではない。すでに、クエスト協会の設立を見越して、すでに準備をしていたのだと思う。前もって、看板を発注していたからこそ、先ほど会議で決まったばかりであるにも関わらず、協会の本部の場所を用意し、そして立派な鉄製の看板を掲げられるのであろう。


 しかし、考えてみると順調すぎるのではないだろうか?


 アンネローゼさんは、いばら姫が呪いによって眠りについてから3週間。たったの3週間という期間の中で、クエスト協会の構想を練って、それを実現したのだろうか? アンネローゼさんのお姉さんが呪いによって寝てしまうという状況で? 魔物が突然増え始めてみんなが大混乱をしている中? さらに、アンネローゼさんは、改革派のリーダーとして姫たちを纏め、保守派と伍する勢力を作り上げてもいた。

 シンデレラさんは、自分がこの3週間、何もできていなかったと落ち込んでいたが、それは逆なのかも知れない。アンネローゼさんが、臨機応変に動き過ぎなのだ。

 2000年以上も聖女によって平和が保たれていた世界で、聖女となるはずのルクレティア様が呪いによって倒れる。はっきりといえば、今までの常識、平和のシステムが覆されたということだ。そんな状況において、たった3週間の間に、騎士によって困った人々を助けるというクエスト協会というシステムを考え出せるものなのだろうか? アンネローゼさんの話を聞けば、相互扶助のすばらしい仕組みだ、みんなの役に立ちそうな協会だ、と思えることができる。しかし、そんなことを短時間で発想、発明することができるものなのか? アンネローゼさんは、天才だ…… 、人々を導くこと器を備えている人だ、と言ってしまえば簡単だ。しかし、俺の頭の中を悪い考えがこびり付いて離れない。


 アンネローゼさんは、いばら姫が眠りにつくことを予期していたんじゃないのか? そして、すでに前からクエスト協会などの準備を水面下で進めていたんじゃないのか? いや、予期していただけならまだマシだ。もしかして、アンネローゼさんが、いばら姫を? でも、まさか自分の姉を呪いにかけるなんて…… そんなことがあり得るのか? しかし、雪の女王が呪いに何らかの形で関与していることは間違いないだろう。そうなら、アンネローゼさんと雪の女王は裏で繋がっている?


 俺が、アンネローゼさんを長く見つめながら思考していたせいか、俺の視線にアンネローゼさんが気づいたようだ。そして、めんどくさそうな足取りで、俺のほうへと歩いてきて、紙を差し出した。


「あなたは、さっき会った騎士ね。これがクエスト協会の騎士になることの申込書兼誓約書よ。さっさと、この用紙に記入して、あそこの受付に渡しなさい」と紙を俺に無理やり受け取らせた。


「あの、アンネローゼさん。少し聞きたいことがあるのですが」と俺は言った。俺の荒唐無稽な考えが当たっていないことを確かめたかった。


「私、雑談に興じる趣味はないの。貴方は貴方が為すべきことを為しなさい」と取り付く島もなく、アンネローゼさんはまた、クエスト協会の方へと行ってしまった。


「ここで、立ち往生していても仕方がない。進もう、エインセール」と俺は行った。不吉な気持ちが晴れないまま、俺は森の中へと飛び込んで行く。

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