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13 シンデレラ

 クエスト協会の設立が決まり、アンネローゼさんは、各町や村に設けられるクエスト協会の支部で、それぞれが受けたクエストを共有する情報網の構築、報酬規定や服務規程など、実際的な内容を矢継ぎ早に発表した。そしてそれが終わると、改革派の姫達であるアンネローゼ、リーゼロッテ、ラプンツェルとその騎士達は、『これらか忙しくなるぞ』と言わんばかりに急いで各自の町へと帰っていた。

 保守派の姫達の騎士と思われる人達も、さきほどいばらの塔の探索から帰って来たばかりであったのだろう。塔の探索の疲れを癒やしたいのか、散会していった。

 湖の畔に残っているのは、シンデレラさんだけだった。俺は、いばらの塔での出来事を話すために、シンデレラさんの所へと向かった。


「デジレ殿か。いばらの塔に入ったそうだな。無事に戻って来てなによりだ。やはり、剣の腕は確かなようだな」とシンデレラさんは言う。

 俺が、いばらの塔に入ったということを知っていたのに一瞬驚いたが、俺自身が自分で塔に行くと言っていたし、塔の見張りの兵士からでもその情報を得たのだろう。


「なんとか、無事に戻って来ました。シンデレラさんも会議お疲れさまでした」と俺は挨拶をした。そして、雪の女王ヴィルジナルが塔の扉を氷で覆い、先に進めなくなってしまったことを俺は話そうとした。


 しかし、「会議か……」とシンデレラさんは深いため息と共にそう言った。シンデレラさんは普段の凜々しい表情ではなく、楽しみにしていた舞踏会に行けなくなってしまって悲しむ女の子のような顔をしていた。


「ルクレティア様がお眠りになられてから3週間ほど、私は一体何をやっていたのだろうな。ただ、どうするべきかを話し合っていただけだ。ルクレティア様をお助けせねばならないという気持ちだけが空回りしていた。私がこの3週間でやっていた事と言えば、アンネローゼと口論をしていたことぐらいだ。一方のアンネローゼは、困っている者達の為にクエスト協会なるものを設立しようと考えるなど、自分の信念に基づいて行動をしていた。クエスト協会か…… 有効な策であることは間違いない。私では、そんなことを思い付くことすらできないであろう。ルクレティア様を目覚めさせることで頭がいっぱいで、だが、それすらもなんの成果も出せないでいる……。私は視野く狭量であった。なんとも情けない話だ」

 シンデレラさんは、俺に話しているのだろうか、それとも独り言を言っているだろうか。空は青く澄み渡っているが、シンデレラさんが顔を向けている地面は、雨が降ったようだった。


「泣かないで、シンデレラ。私も泣いてしまいそう……」と、いつのまにか、シンデレラが腰掛けているベンチの裏の泉の水面からルーツィアさんが顔を出し、今にも泣きそうな顔をしていた。


 いつも陽気なエインセールまで、静としていた。


 俺は、シンデレラさんの話を聞いていて、ちょっと違うんじゃないかと思った。さっき知り合ったばかりのシンデレラさんではあるが、シンデレラさんだって、一生懸命やっていたと思った。


「シンデレラさん。差し出がましいかもしれませんが、シンデレラさんも、行動を起こしていたと思います。いばらの塔ピリシカフルーフに騎士を派遣してルクレティア様を捜索するように指示を出していたのだってあなたですよね? アンネローゼさんとは形は違うかもしれませんが、シンデレラさんだってしっかり行動を起こしていたではありませんか! 気持ちは一緒だと思います。ただ、それが違った形となっただけです。これからのことが重要なのだと思います」と俺は言った。


「優しいな。デジレ殿は……。確かに、後悔をしても始まらない。アンネローゼが提案したというのは癪に障るが、あれは良いシステムだ。気落ちなどしていられないな。私も、ルクレティア様を目覚めさせる方法を探しつつ、私は人々の剣となり、盾となろう! 恥ずかしいところを見られたな、どうか忘れてくれるとありがたい。デジレ殿」とシンデレラさんは言った。いつもの強い、意思の宿した瞳だった。


「いえ。俺は、別に」と、シンデレラさんの瞳に俺は射貫かれ、ちょっとばかり恥ずかしくなった。


「私も、我が神聖都市ルベールにクエスト協会の支部を作り、民の安全と平穏を確保しようと思う。また、それと同時に、当然のことではあるが、ルクレティア様の捜索と、目覚めさせる方法を探そう。癪ではあるが、クエスト協会を使ってでも有益な情報や収穫を得るつもりだ。それで時に、デジレ殿。いばらの塔に言行ったと聞いたが、何か分かったことはないだろうか? 先ほど捜索を終えた騎士達は、残念ながら目新しいものは発見できなかったどうだが……」


「そうなの! そうなの! とっても大変なことがあったんだよ!!」とエインセールが俺の右肩の上で言った。

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