<おとぎ話1>
むかしあるところに、とても可愛らしい女の子がいました。その女の子は、いつも野山を駆けまっています。
ある日、その女の子は、とってもへんてこなウサギを山で見かけました。元気なその女の子は、そのウサギを追いかけ始めました。
小川を飛び越え、林を通り、藪の中を進み、女の子はウサギを追いかけます。
ところが、ある場所で女の子はウサギを見失ってしまいました。女の子は、辺りを見回してもウサギの姿を見つけることはできませんでした。腕利きの猟師さんに教えてもらったように、ウサギの足跡を探してもみますが、足跡も見つけることはできません。その代わりに見つけたのは、細かい細工の入ったガラス瓶でした。ガラス瓶の中には、ヨモギをずっとずっと煮込んだような濃い緑色の液体が入っています。女の子は、そのガラス瓶の蓋を開けてその液体の匂いを嗅いでみました。とても苦く臭い匂いなので女の子は涙が出てしまいそうでした。そのガラス瓶をこのまま捨ててしまおうとも女の子は考えたのですが、ガラス瓶の細工が気に入ったので、女の子は蓋をしっかりと閉め、ガラス瓶をポケットの中に入れました。
そして、またウサギを女の子は探しました。今度見つけたのは、茂みの中の小さな穴でした。女の子は閃きました。きっと、あのウサギは、この穴の中を通っていたのだわ。
女の子は穴の中をくぐり抜けて行きます。茂みの長い長いトンネルでした。トンネルを抜けると、赤色から青色の薔薇まで、様々な薔薇が咲き誇る花園でした。あまりに美しい薔薇とその香りに、女の子は我を忘れてしまいそうでしたが、さきほど嗅いだガラス瓶の液体の匂いが鼻の中に残っていて、自分はウサギを追いかけていたのだったということを思い出しました。花園の中を歩き出し、ウサギの姿を探し始めます。そして、その花園の中を歩いていると、大きな笑い声が聞こえてきました。女の子は、その方向に向かって歩き出します。
女の子は、その方向に向かって歩き出しました。声のする方向へと歩いて行くと、真っ赤な服をきた女性が紅茶を飲んでいるのが見えました。テーブルには、美味しいお菓子が沢山並んでいます。女の子が見たこともないようなとてお美味しそうなお菓子でした。
女の子は、テーブルに近づきすぎてしまったのでしょう。紅茶を飲んでいる女性に気付かれてしまいました。そして、紅茶を飲んでいた女性は、「お茶会を覗き見するなんてなんて礼儀知らず!! あの子を掴まえなさい。そして、首を刎ねてしまいなさい!!」と叫びました。それを聞いた女の子は、すぐさま逃げ出しました。自分が来た道を必死に走ります。女の子をトランプの兵士が追っかけます。
ついに、足の速いトランプの兵士が女の子に追いつき、女の子を捕まえました。女の子はなんとか逃れようと暴れますが、そのトランプの兵士の力はとても強く、女の子は逃げることができません。そんなとき、女の子はポケットの中のガラス瓶を思い出しました。女の子はポケットの中からガラス瓶を取りだし、トランプの兵士の口のような場所にそのガラス瓶の中の液体をぶちまけました。すると、兵士は苦しみだして、女の子を離しました。女の子は、これを好機とばかりに逃げ出します。
女の子は、やっとさきほどの花園に辿り着きました。しかし、なんということでしょう。女の子が通ってきた穴が、無くなっています。場所を間違ったのかと、別の場所を探しているうちに、トランプの兵士がたくさんやって来て、女の子を取り囲んでしまいました。女の子は逃げることが出来ず、捕まってしまいました。そして、紅茶を飲んでいた女性の前に引っ立てられてしまいました。
「あなたには、どんな罰を与えようかしら。あのウサギのように、時間を奪ってしまおうかしら。トランプの兵士達のように、苦しみを奪ってしまおうかしら」と紅茶を飲んでいた女性が言います。
女の子は、恐くなって泣き出してしまいました。
「キャハハハハハッ!! 泣いてる!! 泣いてる!! じゃあ、二度と泣けないように哀しみをあんたから奪ってあげる!! 私的に超楽しぃ——!!」と言って、その女性は魔法を唱えました。
するとどうでしょう。女の子は泣くのをピタリと止め、楽しげな表情となり、笑い始めました。それから、その女の子は、いつも楽しいことばかりを考える、笑顔の絶えない女の子になりました。
哀しみを失い、自分の名前すら忘れさせられてしまった女の子は、紅茶を飲んでいた女性と、いつも笑顔で楽しく過ごすようになりました。
めでたし、めでたし。




