83.求人募集② ターニャ(綺羅)視点
「あの?すみません。掲示板に張られた紙を受付に渡せば、お仕事を紹介して頂けると伺って来たのですが…」と、尋ねる。
すると私を見て赤くなっている何人かが口をパクパクさせながら、何やら口ごもっている。
「え?」「あ、ああ」「えっと」と何やら汗迄かいていらっしゃる?え?そんなに怒ってるの?
「???あの、何か間違って…ましたか?ごめんなさい。何分、今まで働いた経験がなくて…」
すると、求人の髪らしきものを手にした女性が横から話しかけてきた。
「まさかと思うけど、貴女、依頼じゃなくて仕事を探しにきたんですか?」
「え?そ、そうですけど?」
「だとしたら、間違ってないですよ?でも、その求人だけはやめた方がいいんじゃないかと皆、思ってつい声をあげちゃったんですよ」と、私と同じくらいか少し年上かなと思われる女性が話しかけてきた。
「ええ?そうなんですか?」
「「「嘘だろう?」」」「「「ほんとに」」」「「「まさか」」」となぜか、周りがざわついている。
「え?あの…おかしいですか?」
「そりゃ…貴女は、どうみたって良家の若奥様でしょう?そんな方がそんな雑用のような仕事なんて」
「え?え~~と。いいえ。一年前に主人が事故で亡くなって、貯えもそろそろ尽きそうなので、私にも出来る仕事が無いかと探しにきたのですが」
「えっ!貴女、そんなに若くて綺麗なのに未亡人なの?」とその女の人が大きな声を出して驚いた。
すると何故だか、周りの冒険者?らしき方々まで「「「「おおおっ!」」」」と驚くような声をあげる。
何故、皆、私の方を見ているのだろう?ものすごく注目されている気がするのは勘違いでは無いと思う。(多分)
そんなに珍しいのか?女性が職を探すのが?(うん、珍しいんだな?この国では?)
「えっと…その、私、ターニャ・ロイズと申します。あの…貴女は?貴女も仕事を探しに来たわけではないのですか?」
「え?私?いや違う違う!わたしは、依頼しにきたんんですよぅ。うちは旦那が薬師で、薬に使う薬草採取を頼みに来たの」
「まぁ、そうだったんですね?」
「私はマーサって言うの。悪い事は言わない。その求人だけは辞めいたほうがいいですよ」
「えっっ!何故?」
「「「そうだそうだ!」」」
「あんな偏屈な学者のとこなんざ、やめといた方がいい!」
「何人辞めたかしれやしないんだ」
等々…。皆が口をそろえて言ってきた。
そこまでっ?
そう、あんなに紳士的だったルゼルジュ様は私がいなくなってからというもの『伝説のキラ・キリィ→つまり桐生綺羅=私』の研究に埋没するあまり、すっかり偏屈な学者として有名になっていたらしい。




