78.ラーラからのホログラムメッセージ
先王ロードは、自室で明かりもつけず、頭をかかえ深いため息をつき途方に暮れていた。
すると突然、目の前にキラキラと銀の光が舞い、そこから15歳の美少女となったラーラの姿が映し出された。
立体映像である。
しかし、立体映像など見た事もないロードは一瞬、ラーラが帰ってきたのかと驚き、喜んだ。
「ラーラ!良かった!帰ってきたんだな」
そう言って、立ち上がり抱きしめようとしたが、その手はラーラの体をすり抜けた。
「なっ!なんだ?ラーラ!お前、帰ってきたのではないのか?」
よく見れば、その姿は透けている。
すると、そこに映ったラーラはペコリとお辞儀をした。
『ロード様、急に出て行ってしまってごめんなさい。でも安心してください。住むところも決まりましたし、私にはこのタマチャンがいます。このコは、私が眠っていたときも片時も離れず見守ってくれていました。これからも守ってくれる。だから…心配しないでください。無事に生活の基盤が出来たし大丈夫だってつたえたかったのです。これまで、本当にありがとうございました。』
「ラーラ!もうお父様とは呼んではくれないのかっ!?」そう叫ぶロードだが、一方的に話す立体映像からは返事すらない。
「ラーラ!ラーラ!あああっ!お前が望むなら努力しよう!お前を妻に迎える!だから帰って来てくれ!私の元に!」ロードは叫んだ。
しかしラーラには届かない。
立体映像は、同じセリフを三回繰り返すとキラキラと光り消えていった。
寂しそうな綺麗な笑顔を残して…。
そして、ロードの『妻に迎える』という言葉もラーラには、伝わらなかった。
例え、伝わったとしてもラーラがそれを良しとする筈もなかった。
ラーラは努力して自分を妻にしてほしい訳ではない。
無理をさせたい訳ではないのだ。
だからこそ、その想いを断ち切り諦める為にロードの元を去ったのだから。
ただ、このラーラの無事を知らせる立体映像は、少しだけロードを冷静にさせた。
人智を超えたタマチャンという存在が、ラーラを守っているという事もわかり、とにかくラーラは無事なのだと。
ロードはその日からまた遺跡を巡る旅に出かけた。
再びラーラに会える日を信じて…。
そして、サラは騎士団に復帰し騎士たちを使い、バート王は影を使い、三人はラーラを探すのだった。




