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71.国王と女騎士

「嫁ぐならお父様に!」そう言ったラーラの爆弾発言は国王バートに相当なダメージを与えたようだった。

バート王の手がわなわなと震えている。


「へ…陛下?」

それに気づいたサラがバート王に声をかけた。


「何故だ?知らなかったとはいえ自分を置き去りにしていた父親なんぞに…」

ぶつぶつと呟くバート王にサラは焦りとにかく何か励まそうと言葉をさがした。


盛大に兄であるバート王が父親に焼きもち?を焼いている?


サラは思った。

無理もない、だって若く見目麗しいバートをさしおいてのまさかの父親趣味(おやじずき)


「え~と…そ、そう!姫様は()()()()父親への憧れが強かったのかもしれませんわ。だって普通ならどう考えても先王陛下よりもバート国王陛下ですものっ」


「え?」

必死でバート王を励まそうとしたサラはテンパって自分が何気に告白めいた事を言っている事に気づかず言葉をつづける。


「ラーラ姫様はあんなに可愛らしいのに男性の好みだけは謎ですわ。正直言って私だったら絶対ロード先王陛下よりバート国王陛下の方が若くて麗しくて何よりお優しくて…って」

そこまで言ったところでバート王の頬が何やら赤く染まっているのが目に入り、自分が何を言ったのか気づき慌てた。

そりゃあもう慌てた。

「きゃぁああああ!」


「え…と…それは?」

バートが何か照れくさそうにサラに目をむける。


「あわわわわわ!ち!違うのです」


「違うのか?」


「ち!違わないけど」


「どっちなんだ?」バートは困惑したように聞き返す。

もはや妹のファザコンな発言も頭から飛んで消えているようだった。


「違うと言うか!あわわっ!すっすみません!不敬な事を」

もやは真っ赤になって頭の中でぐるぐると思想を巡らし手足をバタつかせ口をぱくぱくさせるサラは男勝りな騎士とは思えないほど純朴で可愛らしかった。


その様子に、先王ロード(ルゼルジュ)やラーラは呆気に取られながら見ている。

そしてラーラは『くっ!なんてお似合いな!羨ましいっ!』と心の中で思った。

十八歳と十六歳の二人は誰が見てもお似合いだった。


父であるロードもこれはいい傾向だと喜んでいる。

伯爵令嬢であり騎士として優秀なサラならば王妃もつとまるだろうと。


そしてラーラは心の中でひとりごちた。

『お兄様よ…女嫌い治ったみたいだね。ヨカッタネ~…けっ』…と。

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