67.ラーラ本人は…01
急に大きくなってしまった私に周りは大慌てだったが、こういう現象がこの世界では普通にあり得る現象だったという事に安心した私は、見た目に相応しいようにと、騎士でありながら伯爵令嬢でもあるサラさんに、この国のマナーやダンスを教わった。
これまで”時狭間”というものに囚われてしまった不幸な人々は、歳をとると共に知能もそれ相応の年月を経ていたようだったらしい。
つまり私が中身三歳では無く見た目の十四歳くらいになる文にはさして違和感はないようだ。
つまり、”時狭間”という現象は、別の世界?別の場所でその消えた間の年月を過ごして戻ってくるらしい…。
それが異世界だったり、はたまた時空を越えた同じ場所だったのか、それとも同じ世界でも遠い場所だったのか…定かではないというのだ。
だから、当然、それなりに中身も大人になっていたりする訳なのだが、その世界での記憶がある者はほとんどいないらしい。
しかし中には、この国ではあり得ないような知識を携えて戻ってくる者もいるらしく、”時狭間”を経験したものは国や大神殿で手厚く面倒を見てもらえる制度があるらしい。
そして未だ解明されない”時狭間”は様々な学者や魔導士たちが研究しているという事だった。
ちなみに私のソレは当然ながら”時狭間”とは別物だ。
カプセルの中で体だけを成長促進しただけだし、体は新しいが中身は三十二歳の中身のままだ。
そして新しい体になっても幸い知能指数は、さほど劣化してないみたいだった。
何でも一度聞いたり見たら覚えてしまう私をサラさんは興奮気味に褒め称えてくれた。
まぁ、褒められるのはやっぱり嬉しかったので、はりきってしまった事もあるのだが…。
サラさん、褒め上手である。
前世で研究所での私は天才だと褒められた事もあったが、どこか嫉妬のような感情も含まれていた事をおもいだしていた。
サラさんや、侍女ズ達の賞賛はとても嬉しそうに弾んでいて心から嬉しそうに楽しそうに私の心に響き、ついつい頑張ってしまうのは仕方ないと思う。
あ、そうそう、文字に関しては卵を出た時にはもう読み書きできるようになっていた。
もともと覚えるのは得意な上に、卵に入っていた一週間の眠りの中でも睡眠学習を組みこまれていたようなのだ。
まぁ、ちょっとずるいような気もするけれど、普通に勉強しても三日とはかからないだろう。
この国の文字は五十音で別れているが日本語のようにカタカナや平仮名や漢字やローマ字みたいに沢山あるわけではなく一種類で、主語述語修飾語などの並べ方が日本語と同じなのでとても理解しやすかったのである。
まぁ、その分、文章を作るときにやたらめったら文字数を使っちゃうのが難点だが…。
数字も十進法で、非常に助かった。
(前世と一緒)
考えたくはないが、タマチャンによって誘導されてこうなった世界…何かと、私にとって都合の良い世界なのだろう。
まぁ、実際、助かるのは助かるのだが、何となくいたたまれない気持ちになってしまう。
何だか宇宙規模でえこひいきされてズルしている気分である。
ロイス博士の夢の中での言葉がなければ、今も尚、落ち込んだままだっただろう。
正直、納得いかない事もまだまだあるけれど、そこはもう深く考えない事にした。
そして、王城でいつも私を優しく見守ってくれていた侍従さんたちや、庭師の皆さん、すれ違うたびに優しい微笑みをむけてくれていた宰相さん達や貴族の人達がもの凄く心配してくれていると言う事を国王であるお兄様に聞いて私は何かとても申し訳ない気持ちになり、一度ちゃんと皆に心配をかけた皆にお詫びと感謝の言葉を伝えたいとお父様とお兄様に願い出た。




