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006.~目覚め -4~

 再び目を覚ますと、そこはまるで王女様のお部屋か?と思うような豪華で綺麗なお部屋だった。

 美しいレースのカーテンのような布に仕切られている。


「お目ざめですか?」

 私が起き上がった気配に気づいたのか、この家のメイドらしき?メイドさんっぽい?女性が布をもちあげ声をかけてきた。

 まぁ、この世界にメイドさんという概念があるかすらも謎だが…。


「はい…ここは?どこでしゅか?」あ…またかんだ。

 んもうっ、発音難しいなぁ~。


 この世界の…というかこの国の言葉の聞き取り(ヒアリング)は問題ないのだが発音になれるのにはもう少しかかりそうである。

 そんな私の拙い言葉にも優しくほほ笑むメイドさんっぽい人は良い人のようである。


「ここは、サンキス伯爵様のお屋敷です。お嬢様をお連れしたのは、ご令嬢のサラ様で…あ、サラ様」


 言葉の途中でそのご令嬢サラ様とやらが、ひょっこり顔をだし私の様子を窺った。


「良かった。目が覚めたのね」


「あっ!しゃっきの人!」…あ、また噛んだ。

 さっきの騎士の女の人である。

 ぶつけた鼻の頭がまだ少し赤い。


 さすがに連続でかみかみの自分が、ちょっと恥ずかしくて照れ笑いでごまかしてみた私に、さっきの女性騎士さんとメイドさんらしき?っぽい女性が、何故か固まった。


「「か!」」二人が同時に口を開いた。


「か?」


 ”か?”ってなんだ?何なんだ?ハモッてるよ?ときょとんとしていると何やら二人の女性がふるふると小刻みに震えだした。

 な、何がどうした?新種の病症か???


「「可愛いっ!」」


「へ?」何が?え?まさか、私?


「えええええっ?」私は盛大に驚いた!


 私は三十二歳で眠りにつくまでに、自慢じゃないが頭脳を誉められた事はあっても見目を誉められた事など一度たりともない!

 そう私は”可愛い”とは無縁の人間だ!断言できる!


 常に、凄い!賢い!天才!神童!等ともてはやされてきた私だが、(いや、うぬぼれとかじゃないよ!知能指数六百だったしねっっ(通常七十~百二十位)綺麗可愛いは、本気で言われた事がなかった私は、そうかっ!私の視界に入ってないだけで可愛い何かが側にいるのかっ!と、まわりをきょろきょろと見渡してみたが、誰も何もいない。


「?ん?可愛いの、いにゃいの…」と、またまた、拙いかみかみの言葉を発すると騎士の女性がぎゅっと私にハグしてきた。

 びっくりである!


「あなたの事を言っているのよ。可愛いお姫様!あなた!卵から生まれたばかりなのに言葉がしゃべれるのね?あなたは精霊か何かなの?」と聞いてきた。


「わたし…可愛いちがうの…」


「「えっ!」」

 二人はさも意外そうに声をあげる。

 よく気の合う主従だなと感心するハモり具合には感心してしまう。

 しかし、可愛い可愛くないは、この世界の価値感とかもあるだろうからまぁ、可愛いと思ってもらえるならそれはそれで嬉しい。


 それより私は人間で、この世界が生まれる前から眠っていた既になくなった世界の人間であって…そんな荒唐無稽な話、どう説明して良いのやら…。

 うううう~ん。

 両手を組んで、うんうん悩んで考える。


 二人の女性は拝むように手を組んでうんうんと頷きながら気長に私の次の言葉を待っていてくれるようだ。

 優しい…。


「卵は…卵の形をした、わたち…わたしのベッドで…寝てただけにゃの…え…と…私のいた世界…国はなくなっちゃったの…でも博士が…私の一番尊敬する先生がわたしは、生きなさいってこの卵に入れて眠らせたから…えっと~」


 そんな私の苦しい拙い説明にサラさんは、勝手に何やら解釈したらしく言葉を重ねてきた。


「まぁ!ひょっとして千年以上眠る事が出来ると言われる眠りの魔法ね!聞いたことがあるわ!」


 ん?魔法?何だそりゃ?漫画じゃあるまいし!


「サラ様!では、このお嬢様は、もしかして銀王の谷の生き残りの!」


 もしかしてって、何っ!?何それ?


「そうだわ!きっとそう!なんて素晴らしい!」


 だから、何!

 なんか勝手に激しく誤解されてるような?


「遺跡の中から、生きた王女が表れるなんて!すごい魔法だわ」


 いやいやいや、魔法じゃなくて科学でしょ!


「神々の文明と呼ばれしラビドニアの銀王の谷から発掘された銀に覆われし卵に、亡国の姫!きっとそうに違いありません!」


 いや、違うし!


 って、言っても、まてよ。いや、しかし…

 自分の本当の事の方が、もっと荒唐無稽で説明のしようもない?

 この星のこの国の文明の進み具合…科学より魔法を信じちゃうあたり…下手な説明はかえって不審人物認定されかねない?

 とりあえず、可愛いだの素晴らしいだのと割と好印象?な誤解をしてくれてるんだから、いっそその設定でいっちゃう方が良いのか?と私は悩みつつ、とりあえず否定も肯定もせず、わからないで通そうと判断した。(なんか、良い人達そうだし)


「え…と、ごめんなさい。細かい事は、よく、わかんにゃいのです…えっと、あとは自分の名前くらいしか…」


「「記憶喪失っ!」」


 あ!また勝手に誤解された!

 ああ、でも、ちょうど良いや!そういう事にしちゃお!

 らっきー♪とか一瞬、思ったが…。


「「可哀想にっ」」と、二人がうるうると瞳をにじませた。


 うわ!罪悪感!何この人達!良い人達すぎるでしょ!私みたいな、まあまあ、三十路も過ぎたいい年齢のおばさんに…と思いつつ、ふと自分の手の平を見て私は固まった!

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