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59.卵を囲んで

綺羅(ラーラ)は、卵の中で眠り続けた。


それほどの衝撃を受けたのだった。

地球が壊滅状態に陥った時ですら未来を見つめていた綺羅だが、自分のせいで誰かが犠牲になるなどとは考えたことすらなかったし誰かを犠牲にしてまで自分が助かりたかった訳ではない。


唯々、諦めたくなっただけだったのに。


部屋に鍵をかけ、閉じこもってから一週間という時間が流れていた。

綺羅の落ち込みは激しく、心に余裕はなかった。

”卵”の中での深い眠りの中、綺羅は時間の感覚が麻痺していた。


タマチャンはそんな綺羅の精神状態を異常と感じて、”卵”の中での深い眠りによる治療プログラムを発動していた。

綺羅の気持ちが落ち着くまで”卵”の扉が開くことは無い。

綺羅がある意味、この事に心の中で整理をつけ、悟りを開かねば出る事はかなわない。


その間にも、”卵”の外では閉じこもったラーラを心配して大騒ぎになっていた。

内側からかけられたラーラの部屋の鍵はラーラが閉じ籠ったその日の夜には、先王ロードによって破壊され、ロードや爺、侍女ズやサラ、皆が集まり、翌日には現国王であるバートまで、ロード邸を訪れた。


卵をこじ開けようと色々試みたが、剣も槍も卵に傷ひとつつける事は出来なかったし、ロードとバートの魔力をぶつけてみても何の変化も現れなかった。


「ラーラ…夢に怯えたあの夜…様子がおかしかったのに…仕事になど行かなければよかった…」ロードがそうつぶやく。


「そうですわっ!ルゼルジュ様!いいえ、先王ロード様!貴方様だけは、ラーラ様があの夜、側にいる事を許したのに!あんな事がった翌朝、遺跡調査などにかまけているから、こんな事になったのですっ!」


その不敬ともとれるサラの言葉に侍女ズや爺は固まった。

サラの目には涙が浮かんでいた!


「あの可哀想な小さな姫君を追い詰めた夢が何だったのかは、わかりませんが、それほどに辛い夢を見るほどの過去がたった三歳のあの姫君には、あったのですよ!父親を名乗るのであれば姫様をちゃんと守ってくださいませっ!」そう叫んだ。

その言葉は、ラーラがもともとこの世界の人間ではないと知るサラだから出た言葉だった。


そんなサラの過激な発言に爺や侍女ズは危機感を覚えたが、バート王はある意味感動していた。

あの父に、これほどの暴言を吐ける者が息子である自分以外居るなどとは夢にも思わなかったのである。

稀代の名君と呼ばれし先王ロードに!

この国の騎士団長や将軍ですら、口答えすらしないであろうに…である。


それも自分のラーラ()の為にデアル。

ラーラの時にも感じた感動をバートは、感じていた。

父や自分にこびへつらう者達とは違う!


ただひたすらにラーラを案じて先王ロードにすらかみつくサラにバートは心を打たれた。


そしてロードは心から悔いていた。

サラの言う言葉はもっともだと受け止めていた。

ロードもまたラーラが今の世界の人間ではない事を知っている。

そして前の世界がどうやら、ラーラに取ってあまり幸せでは無かったであろうことも感じていた。


それなに自分は、ラーラの様子がおかしかったのに呑気に遺跡調査に出かけていたのだ。

仕事とは言えラーラの大変な時に…何を呑気に…。


そんな中、バートが口を開いた。


「なぁ、でもこんな隙間も傷もない卵の中に本当にラーラが入ってしまっているのか?どこか外にでてしまったとかいう事はないのか?」


その言葉にサラが答えた。


「この中に間違いございませんわ!」


「何故そう思う?」


「この卵はラーラ様が中にいる時は淡く光を放っておりますもの!ラーラ様が中におられない時は黒っっぽい鈍い鉄の塊にしか見えないのです!」


「何と!一体この卵は何なんだ!父上っ!こんな中に入って一週間も!ラーラは食事すらとれていないのだろう」


「この中にいれば死ぬような事に刃ならないだろう。こおの卵はラーラを守る魔道具のようなものなのだ!」


「「「「ええっ!」」」」

バートや侍女ズ、爺が驚きの声をあげた。


そしてその時、卵が再びゴトリッと揺れた。

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