57.知る筈のなかった真実
脳内で小さな私が私を囲んで体を上下に揺らしながら行進しながら
『『『ヤバイワヤバイワヤバスギダバ~』』』と集団で繰り返しならくるくる回っている。
私は部屋に呼びこんだ”卵”の中に籠って、まだ悩んでいた。
今は亡きロイス博士の想いなど想像もつかなかったし考えても仕方ないと思っていたから考えなかった。
常に未来に向けてしか私は意識が向いていなかった。
けど、今はロイス博士が何を考えて私をこの世界に送りだしたのか…。
私は再度、タマチャンに話しかけた。
「タマチャン、ロイス博士は何故私を”卵”にのせたのかしら?ロイス博士が世界の…地球銀河の管理者だったと言うのなら”卵”に乗り込んで未来の行く末を見守るべきだったんじゃあ…」
『そうですよ。ロイス博士は自分が乗り込む筈だった”卵”に綺羅様をお乗せしたのです』
平然とそう答えるタマチャンに私は驚き問い詰めた!
「なっ!何故?なんで、そんな大事な事、教えてくれなかったの?」
『特に、そこは聞かれておりませんでしたので』
あくまでも冷静に答えるタマチャンはやはり人工知能…いや神工知能か…。
やはり機械なのだと改めて認識する。
「そこは、聞かなくても起きたときに教えてほしかったよっっ!」
『左様ですか?ロイス博士からも綺羅様から問われるまで特にロイス様自身の事は伝えなくても良いと言うご指示を受けておりましたので』
「そんな!でも、じ、じゃあ、聞けば答えてくれるのね?」
『はい!私の分かる事でしたら何なりと』
「じゃあ、聞くわ、何故、私だけを生き残らせたの?あれほどの科学力!この百億年でも持つと言い放った生命維持装置”卵”を作るほどの地球人とは違う階層の人類、ロイス博士が、自分はわずかに生き残った地球人類と共に死を選び私を…私だけを生き残らせたの?」
『それは、”卵”を作る材料が一人分しかなかったからです。綺羅様!』
その言葉に私は絶句した!
「え!何?それは、どういう事?じゃあ、ロイス博士は私の為に一つしか作れなかった”卵”を譲ったというの?何故?」
『それは、綺羅様が未来を夢見ていたからですわ!生き残った人類の中で地球が壊れ、銀河系すら危うい状態のあの状態でもまだ未来に目を向けて命の星の誕生を夢見ていらっしゃる綺羅様だけにロイス博士は心を大きく動かされたのです』
「そんな…ロイス博士は私を救って自分は…」
『そうです。悪しき方向に科学を発展させ続ける地球に、ロイス博士の世界の人々は審判を下しました。他の階層の銀河にまで影響を与える前に世界の再生を試みると…そして地球に隕石を放ったのです』
「そんなっ!それは!地球は神様たちに滅ぼされという事なの?」
私は絶望にも似た気持ちでタマチャンにそう問いかけた。
だったら何故、私だけが生き残ったの?




