54.ラーラのお昼寝タイム
ラーラは結局、あの後、泣きつかれて寝てしまっていた。
駐屯所の控室の仮眠ベットでお昼寝である。
三人の大人たちは、そんなラーラについて話しあっていた。
「あんな小さな子がずっと朝も晩もご飯も与えられずにすっと勉強ばかりさせられて来たなんて!」ボブが泣きそうな顔でそう言うとサラは既に涙目で語った。
「ええ、信じられない事よね?子供は国の宝だと言うのに!」
「あの卵から出る前の世界はどれほどあの子にひどい仕打ちをしてきたんだろう?」アルもそう言った。
「覚えていないんじゃなくて、忘れたい、しゃべりたくない過去なんでしょうね」
「「「あんなに小さいのに…」」」
(記憶は三十二歳なんだけど、それはタマチャンしか知らない秘密である!)
三人はそう語りながら深く沈んでいた。
特にアルは、落ち込んでいた。
あんな小さい子供に…俺は何を『警戒しなきゃ』とか思って…と。
アルは、皆が皆、可愛い可愛いと言うラーラに危機感のようなものを感じていた事に罪悪感を感じた。
自分だけは用心してやるぞ!と穿った目で見た事を後悔していた。
何よりこの国を安寧に導いた先王陛下や命の恩人で上司だったサラ隊長が守ると決めた少女を疑ってかかるような目で見たことも後悔した。
自分ごときが何を判断できるというのか!
皆、見たままを受け入れていたというのに!
アルは、先ほどのラーラの泣き顔が頭にこびりついて離れなかった。
アルとボブ!
ラーラを守ろうとする信者がまた二人増えたのだった。
***
そしてラーラが目覚めると、サラはまた転ぶ前に立ち寄ろうとした本屋へラーラを連れて行った。
ラーラはサラさんに絵の沢山入った植物図鑑を買ってもらい、屋台で串焼きやお菓子を食べ歩き街を満喫したのだった。
かりそめの親子ごっこはラーラにとってもサラにとっても、それはそれは素敵な思い出となった。




