52.聞いてないっ!
サラは、思っていた。
ルゼルジュ様っ!聞いてませんっ!
ラァちゃんの魔力がそんな桁外れなんて全く聞いてませんけどっ!
いや、もちろん、どんな裏事情がでてこようとも私はラァちゃん命で守ってみせませけどね!
取りあえず、今解ってる情報はきちんと伝えといてほしかった!
報告、連絡、相談は下にもしてほしいっ!
(困った事にルゼルジュは、大概、大雑把である)
***
ボブは、思っていた。
何コレ!あり得ない!
こんな天使みたいな妖精みたいな女の子が、伝説級の制御の指輪つけてるって…。
何だか凄い事だけど、これって本当に大変なことだよね?
バレちゃ絶対、駄目なやつ!
それくらい、のんびり屋と言われてる僕にでも容易に想像できる!
で、でもまぁ、それなら生活魔法くらい教えても問題ないよね?
魔力不足で倒れる…なんて心配もなさそうだし。
きちんと使い方を学べばこんな封印じみた指輪なんか無くても自分で制御できるようになるだろうし、うん、ここはきちんとした魔法の基礎となる”理”を教えてあげなきゃだ!
(そんな風に気持ちをすぐに切り替えられるボブは、やっぱり”のんびり屋”だった)
***
アルは、思っていた。
伝説級の王家の至宝”獅子王の制御の指輪”を目にする事ができるなんて感激だ!
しかし、どれほど先王陛下は、この姫様を気にいったのか?
王家の至宝をやすやすとその身につけさせるなんて…。
それほどの魔力を保持していたという事か?まさか先王さまほどに?
(いや、実際はその何倍もだけどね)
サラ隊長もだが、この可愛いお姫様に皆、夢中だなと少し警戒した。
でも、確かに可愛い!こんな綺麗で可愛い生き物を僕は見たことが無い。
聖獣のユニコムの子供だって妖精の子供だってこの可愛さには及ばない気がする。
だからこそ用心しなければと思う。
だが、退職したとはいえ”サラ隊長の命令は絶対だ!”
それは俺とボブの中の『絶対のルール』だ。
隊長が隊長でなくなってもそれは変わらない!
これまで騎士団に入ってからと言うもの魔物討伐に出た時だって俺達は、何度サラ隊長に命を助けられたか分からない!
そう隊長は命の恩人なのだ!(それも何回も!)
だから、俺も全力で守ろう!この少女を!
だが、警戒だけは怠らないように!そう思いながら…。
かっ、可愛いからとか、そんなんじゃないからなっ!うん!そうだぞ!
俺は、そんなうわべの事では動かないんだからなっっ!…確かに可愛いけどっ!
***
それぞれの想いは微妙なものを含んでいたものの、皆、この”ラァちゃん”を守ろう!という事では一致していた。
そして、一番、深刻に考えていないボブが、ラーラの願いに答えて”水魔法”の”理”について説明しだした。




