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50.街ですってんころりん

街は様々なお店や屋台で溢れ活気に満ちていた。

「あっ!ママ!あのお店!綺麗な飾りがいっぱい!あっ!あっちには美味しそうなパンがっ!」


はしゃぐラーラにサラは目を細めて微笑む。(っていうか悶える?)


「ふふっ!何か欲しいものがあれば言ってね?ママが買ってあげるから」


「本当でしゅか?あっ!ママ!本っ!本屋さんがありましゅよっ!」


「まぁ!でも、ラァちゃんはまだ字なんて読めないでしょう?」


「すぐ覚えましゅ!本っ!本がほしいでしゅっ!特に植物図鑑とかほしいでしゅ!」


「まぁ!ふふっ!じゃあママが読んであげるわね!絵もいっぱい載っているのを探しましょう」


「ママ!大好きでしゅっ!」ぱぁっと輝くような笑顔で母に抱きつく娘と愛しそうに抱きあげる若く美しい母の姿!


はい!そりゃあもうね!

当たり前と言えば当たり前なんだけどね!


この綺麗な親子は、これ以上ないって言うくらい目立っていた。

はしゃぐラーラはフードなんか全開にはだけていたし、そのはしゃぐラーラの可愛さに、愛しさを抑えきれないサラは顔がほころびっぱなしである。


周りも、その微笑ましい光景に思わず顔をほころばせる。


この国は他のどの国よりも治安が良い。

それは先先代からなされてきたこの国の偉大な王たちの、そして先王ロードの活躍に寄るものだ。


先代から続く平和になれた人々は平民でもそれなりに裕福で満ち足りていて皆穏やかである。

交番のような騎士の駐屯所も所々に配置され、それこそ道案内から迷子の保護も行うほど治安への配慮が行き届いている。

酒場などが賑わう夜ともなれば別だが昼間なら街の子なら子供達だけでもでも普通に出歩いている。


まぁ、そうでなければ()がつくほどの親馬鹿と化したルゼルジュ(ロード)が外出を許す筈もないのである。


そして、あまりに興奮したラーラは、本屋さんに駆け寄ろうとして、道端の段差に躓いて転んでしまった。

「あっ!ラァちゃん!」


「痛っ!」


すってんころりんと思いっきり転んだラーラの膝から血が流れた。

大したことは無いものの擦った傷には小石や砂が付いていてざらっとした痛々しい傷である。


「まぁっ!大変っ!」サラが顔色を変えてラーラを抱きかかえて、周りにいた人達も心配そうに声をかけた。


「「大丈夫?」」

「そこに騎士団の駐屯所があるよ!手当してもらったら?」


すると見回りの騎士達も女の子が怪我をしたと聞きつけ様子を見に来た。(本当に平和な街である)


「大丈夫かい?ほら、すぐそこの駐屯所までこれるかい?手当しよう」

「ああ~可哀想に、血が出てるじゃないか」


「ああっ、ありがとう!あら、ボブとアル?」


「って、ええっ?サラ隊長?」


「って、あれっ?この子もしかして!あの卵の!」「え?あ、ほんとだ!卵の…」


そう、たまたま、そこに居合わせたのは、サラと一緒に卵を発見し、あの卵から何か危険な生き物が生まれはしないかと用心の為、見張っていた騎士の二人でサラの部下だったボブとアルの二人である!


「ああっ?あんた達、それは極秘だとルゼルジュ様に言われてるわよね?めったな事言うと首と胴体が離れると思いなさいっっ!」ともの凄い迫力で一喝した!

さっきまでラーラの傷を見ておろおろしていた人と同一人物とは思えない凍りつくようなドスの聞いた声色で或る!


「「ひっ!はいぃぃぅ!」」二人の騎士たちは背筋を伸ばし敬礼しながら、コクコクと頷いた!


「分かれば良し!」サラは、そう言うとラーラに再び目をやる!


「と、とにかくラァちゃんの手当をっっ!」二人を一喝した後のサラは、再び、泣きそうな顔になり慌てた。


ラーラは痛かったが、ぐっと堪えた!

泣かない泣かない!

だって中身は大人ですもの!

でも、痛いものは、痛かった。


そして、あたふたしながらも、ラーラは最寄りの騎士駐屯所に連れて行かれた。


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