48.はじめてのお出かけ02
サラさん…ママは、綺麗で格好いい!
騎士服姿のサラさんもすごく恰好よかったけど、女性らしい恰好もとても似合っている!
そんなサラさんと、お揃い姿でお出かけ♪嬉しいなっと
「ラァちゃん、ほら、あそこに見える白壁の建物、あれが私が昨日まで所属していた近衛騎士団の寮ですわ」
「ママ、娘に敬語はおかしいにょ!」
「ま、まぁ!ラァちゃん、そうね!き、気をつけるわ!けど、敬語とかラァちゃんは大人の使うような言葉をよく知ってるのねぇ」
「そうでしゅか?」
「あら、ラァちゃんこそ、ママに対して敬語なんておかしくてよ?朝の練習の時みたいに喋りましょう!」
「あい!ママ!」
「ふふふ、ラァちゃんは本当に可愛いわ~」
「ママは、カッコいいでしゅ!」
うふふあははと、二人して私達は『ママと娘ごっこ』を堪能しながら、城壁を越えたあと街の入り口付近までやってきた。
「そうだ、この先はもう直ぐにお店とかでにぎわっているし、寮に馬を置かせてもらって歩いていきましょうか?その方がお店も覗きやすいし、屋台とかで買い物もできるし!」
「屋台っ!見てみたいでしゅっっ!」
「ふふふっ!じゃあ決まりねっ!」
そう言って騎士団寮の厩の前で馬をさっと降りたママは、私を抱きあげておろしてくれた。
すると、向こうの方から驚きの表情で一人の騎士らしき人が現れてママに話しかけてきた。
「サラ?サラか?」
「あら?団長…休憩ですか?そう言えばもうお昼ですね?」
「やっぱりサラか!どうしたんだ、その恰好!まるで女みたいだぞ!」と、その人は言った。
何だか失礼なもの言いをするおじさんである。
「何だ何だ?昨日、退職したかと思ったらもう、騎士団が恋しくなったか?」
「そんな訳ないでしょう?ちょっと街にお出かけなので馬を置かせてもらおうと立ち寄っただけですよ」
「無理すんな無理すんな!お前、実家にも戻ってないって言うじゃないか?何なら今からでも退職を取り消して…」
「ママ?このおじしゃま、だあれ?」頭のはるか上で話し合う二人の邪魔をするように私はサラさんの裾を引っ張って上目遣いで聞いてみた。
さっきから、私はいないかのような立ち位置である。
「まぁ、ラァちゃん、このおじさんは、騎士団の団長さんよ?ママの上司だった人よ」
「ほぇ~、ママの元、上司の人でちゅか!」
足元にいる私に気づいた騎士団長さんは、驚愕の表情で目をむいて私を凝視した!
「なっ!おまっっ!ママって!お前っっ!何だ!そのちっこいのはっっ!」
「うふふっ!私の娘のラァちゃんですわ!」
そう言ってサラさんは私を抱きかかえて頬ずりしながら騎士団長さんに見せびらかした。
うん、なんか変な言い回し?だけど”見せびらかした”って言い方がぴったりな仕草で紹介された私はフードを少しだけずらしてサラさんとお揃いの淡い金髪を見せつつにっこりと微笑みつつ挨拶した。
「ラァでしゅ!いつもママが、お世話になってましゅ」と言った。
「ぐっっ!な、な、な、ななななっ!おっ!お前、いつのまに子供なんか!」
「ふふんっ!可愛いでしょう~?この髪なんて私そっくりで!服までおそろいにしてみたりして!」
「な、なんて事だ!いつの間に結婚していたんだ?」
「は?そんなものしておりませんわ!」
「なっ!」
「あら、団長もおっしゃってたじゃありませんか!サラなんかを嫁にもらう奇特な男なんていないって!」
「えっっ!このおじしゃまは、そんな事言ったのでしゅかっ!ママに!」
「そうよ~、失礼よね~?」
「おっ!お前っ!まさか結婚もせずに!子供だけ生んだのかっっ!」
「ええ!そうですわっ!それが何か?もう騎士団も退職しましたし団長には関係ないでしょう?さぁ、私はこれから娘とお出かけを楽しみますの!失礼いたしますわ!」
そう言ってサラさんは私の手を引き屋台の沢山出ているほうに進みだした。
「まっっ!まてまてまて!まだ話は終わってないぞ!」
「は?私は話など無いですが?」
「おまえっ!その子供の為に近衛騎士団を辞めたのかっ!」
「ふふっ!そうですわ!私にはこの子以上に大切で守りたいものなんて無いデスから!」と、サラさんは、極上の笑顔で言い放った。
何だかよく分からないけどサラさんと騎士団長の間には何かあった?
何だかもの凄いショックを受けたような表情の騎士団長さんが面白かった。
悪気はなくても女性に「お前なんか嫁にもらう奇特な男なんていない」なんて事を言うデリカシーのないおじさんには少しくらい罰があたるのもしょうがないのではなかろうか?
きっとおじさんは、サラさんを何度も傷つけるような事を言ってきたのだろう。
サラさんのものすご~くスカっちしたような表情と私を見せびらかした時のドヤ顔で何となく分かった気がした。
心の底から楽しそうなサラさんの表情とはうらはらに顔面蒼白の騎士団長を見て何だか気の毒な気もしたけど私は当然サラさんの味方である。
取りあえず、何だかよく分からないけど、サラさん的には、団長さんに『ぎゃふん』と言わせたみたいで良かったね?と私は心の中で思った。




