004.~目覚め -2~
”卵”の壁越しに聞こえる声は少しばかりくぐもって聞こえるものの、なんとか聞き取れた。
「卵…孵るのか?…まさか」
「…危ないかも…」
「村人…」
「襲われる前に…」
すごい、会話してる!やっぱり人類?らしきもの?が存在してるんだ!
…なんだかこの卵を怪物か何かの卵かもしれないと怪しんでいるらしい。
今の内に割ってしまった方がいいかもしれないと何やら不穏な事を言い争っているようだ。
えっ?なんで?なんで言葉わかるの?とか思ったが、すぐにこの生命維持装置の機能の素晴らしさを語っていたロイス博士の言葉を思いだした。
この”卵”には文明を感知したらその言葉や風習などを探り、眠っている間に睡眠学習させる機能があるとかなんとか…。
冗談かと思ってたよ…。
荒唐無稽すぎでしょう!
どんだけ、ご都合主義なのよ?
いや!しかし!
すごい!すごいじゃないか!”卵”いやさ、発明者のロイス博士!
”卵”恐るべし!だよ!
本当に言葉が理解できるよ私!と感心していると、何やら卵をガンガンと何か金属のようなものでたたきつけるような音がした。
「ちょっ!何してくれるのよ地球科学至高の結晶を壊す気?」と私は焦った。
まぁ、冷静に考えたら地球と太陽がぶつかって核融合やら何やらを起こした宇宙大爆発でも壊れなかった"卵"が金属で叩かれたくらいで壊れる筈もないのだけれど。
さて、どうしよう?と私が困って目の前の機器類を見渡し、外にいるのが危ない連中だったら…と考えを巡らしていると、なんと”卵”が中にいる私にしゃべりだした。
『おはようございます。綺羅様、私、卵型生命維持装置の人工知能で”タマチャン”と申します』
「え?あ、おはよう」小さな卵型の空間の中、目の前に小さな羽の生えた卵が立体映像で映し出され可愛く挨拶する。
『私の事はタマチャンとお呼びくださいませ。綺羅様、お体の調子でおかしい処はございませんか?』
正直、まだ頭も体も重い感じがするけれど、生命維持装置の中で目覚めたばかりのわりには元気な方だろうと思いタマチャンに答える。
「あ、大丈夫…みたい。ちょっとまだ頭がぼうっとするけど」
『外界が綺羅様の目覚めに支障ないというデータが出ましたので五十時間ほど前に生命維持装置を通常の睡眠状態に切り替えて目覚めに備えておりました』
「ほぇ~、そうなんだ?」
『この世界での言葉も睡眠学習により、インプットも終了いたしました。これで、この世界での生活に最低限の対応は出来ると思われます』
「あ、やっぱり、そうなんだ?すごいね!でも、なんか、さっきからこの”卵”を壊そうとしている人達が外に、いるみたいなんだけど…出ちゃっても大丈夫かな?」
『大丈夫でしょう。この国の騎士らしきものが三名、一人は女性で、二人は男性のようです。ここは遺跡の発掘地帯となっていてこの”卵”が掘り出された訳ですが、見た目は銀色の大きな卵型ですので、竜とか魔物の大型生物の卵で卵が孵ったら、村人を襲うのではないかと心配しているようです』
「騎士?騎士がいるの?ふぇぇ!あ…じゃあ、出てって敵意がない事を示せば大丈夫かな?」
『そうですね。人間だと分かればいきなり襲うような輩ではないかと思われます。発掘に来た住民やこの国の研究者達の護衛や遺跡の盗難予防の警備の為に配備されている者達のようです』
「なるほど!しかし騎士って…」と、私は若干困惑した。
何それ…地球でタイムスリップした訳じゃ無いんだよね?と思う。
『地球でいうところの中世ヨーロッパ風の文明が発達しております。似ていますが全く別の文明です』
「へぇえ~」なにこの”卵”!タマチャンってば、すっごい役に立つんですけど!
半端ないんですけど…。
こんなすごい発明がありながら「地球よ!何故、滅んだ!」って感じ?
そんな感じで感心していると、この卵への攻撃が激しくなってきた。




