34.噂のラーラ姫02
王の謁見の間。
この国の将軍クルディガン・ドゥグァルガは、そこにいた。
先王の時代からこの国に仕える重鎮である。
国王に辺境の治安の報告と陳情書を提出しに来ていたのである。
そして、もうひとつ、噂のラーラ姫と会ってみたいと王に願い出たクルディガン・ドゥグァルガ将軍に国王バートは、このまま部屋に留まれば会えると言ったのだ。
将軍は、新たな王族の子供の出現に警戒していた。
事の成り行きはわからぬまでも何かしらの陰謀があるか危惧していたのだ。
そしてクルディガンは、驚いていた。
本当にこの王族にしか”許し”なくは入れぬ『王の謁見の間』に何の断りも許しも無く、まるで普通の扉を行き来するかのように、結界にはじかれることもなく入ってきた幼子に!
まさしく王家の血筋と認めざるおえない事実だった。
よもや先王が外で子供などあり得ないと思っていたが、事実だったのだと認識した。
そして驚いたのは、それだけではなかった。
その幼子は、全く自分を恐れなかったのである。
将軍は、それこそ先王ロード(ルゼルジュ)よりも更に大きな体つきでまるで熊のような体つきに額には大きな傷痕があった。
肩からかけた鎖も、特別性の甲冑も周りに威圧感を与えると言うのに、その小さな姫はなんとにっこりと微笑みかけたのである。
そして、その姫君はぺこりと頭を下げたのである。
そしてくるりと国王陛下の方へ向き直り、言ったのだ。
「おにいしゃま、まだお仕事でしたか?お客様がいらっちゃるなら、お外でまってましゅよ?」
クルディガンは、その状況に困惑した。
その子供の幼さからは考えれれない程の賢そう言葉とふるまいと物おじしない態度にである。
屈強な騎士たちですら自分の前に立つと緊張した面持ちになるというのに、この初対面の小さな姫君はにっこりと笑って見せたのだから。
これには兄である国王陛下も驚いた。
まぁ、強面の父にもあれほど懐いているのだから、さほど心配はしていなかったが、少しくらいは人見知りするかと思ったのだがそんな心配はさらさらいらなかったようだと、思わずぷっと噴き出してしまった。
「ぷっ…あはは!いや、ラーラ、大丈夫だ。仕事の要件は終わったからな!ラーラにも紹介しよう!おいで」
そう言ってバートは両手を広げラーラを手招きした。
「あい!」ラーラは国王陛下の広げる手の中に飛びついた。
そして、それはそれは幸せそうな表情でその幼子を抱きかかえた。
クルディガンはこの事にも相当驚いた。
驚きの連続連打に頭が真っ白になりそうなクルディガンだった。
幼子とは言え女子である姫君に側近内では有名な女嫌いのバート王がそんな優し気な表情をみせるとは思ってもみなかったのである。
「我が国の重鎮であり要の将軍クルディガン・ドゥグァルガだよ。ラーラ!クルディガン、妹のラーラだ!」王は抱っこしたままのラーラをクルディガンの方に向ける。
「くるでぃがん将軍?ラーラともうちます。宜しくお願いしましゅ」
はにかむような可愛らしい笑顔でつたなくもしっかりとした言葉で挨拶をしたラーラに将軍はひざまづき頭を垂れた。
「はい。クルディガン・ドゥグァルガでございます。ラーラ姫様、こちらこそ宜しくお願い申し上げます」
ラーラは、満面の笑浮かべている。
ただただ、クルディガン・ドゥグァルガ将軍は驚いていた。




