29.待ちぼうけ
…なにか…寂しい!
卵から出てからというもの、一時たりとも一人きりになった事がなかった私は、今現在部屋にぽつんと取り残されちょっと呆然としてしまった。
三歳児から目をはなしちゃならんのでは?とか思うが、多分皆、ばらばらの方向に走り去って行ったので『誰かがついてるだろう』と我先に思いついた用事の為、慌てて出て行ったのだろと推測できる。
なるほど!乳幼児の不幸な事故は、こういう風な流れがきっかけで起きるのだろう。
まぁ実際の私の中身は大人である!
ほっといてくれても何の問題もないのだがね。
多少、この三歳の身体に引きづられてなのかやたら涙腺が弱かったり感情の起伏が激しかったり、後先考えなかったりとかは、あるのだが…。
はっ!もしかしたら前世の記憶はあっても知能指数とかは半分以下とかになってるんじゃなかろうか?
そう思って私は腕に着けられた”卵”の通信機に日本語で話しかけた。
日本語なら噛まないからね!
「ねぇ、タマチャン聞こえる?」
『はい、綺羅様!』
「私って今の知能指数ってどのくらいなんだろう?地球でいた頃よか低いのかしら?これからも無事にやっていけるか心配なんだけど…」
『綺羅様、綺羅様の知能指数自体はさほど変わらないでしょうが、この世界の常識はまだ分かってない部分も多いかと思われますし、科学よりも魔法の発達した世界なので知能指数よりも魔力量の方が重要視されますよ?』
「やっぱり、そうか~、でも私の体を構成するときに魔力の宿った素粒子、魔素とやらも練りこんでくれてるんだったわよね?」
『はい、それはもう極上の魔素を選りすぐって取り込んでおりますから、何世代も続いた現在の王族の持つ魔力よりも綺羅様の魔力の方が原始に近い純粋で濁りのない美しい魔力をお持ちですよ?』
「あ、じゃあ、今日の魔力測定も大丈夫かな?がっかりされたりしないよね?」
『王族の求める基準値に達するか?という事であれば問題ないかと』
「ほっ!良かったぁ、やっぱり喜んでもらいたいしね!やっぱり普通は”親”って子供が少しでも出来がいいほうが喜ぶものでしょう?」
『綺羅様は、そんなもの無くても愛されていらっしゃいますよ。綺羅様の周りにいるものは、皆、一様に体温が若干上昇し血行が良くなっております。口角も上がり幸福感を感じているようです』
「ええ~?タマチャンったらすごいわ!人工知能なのにお世辞まで言えるなんて!」
『お世辞では、ございません!それと人工知能と言っても人類の管理者別次元の人類、地球人類が”神”と呼ぶ種族のロイス博士のプログラミングの神工知能ですから、基本、根拠のない事は申しません』
「お…おぉぅ、ありがとうタマチャン、何か自信が出て安心ができたよ」
『よろしゅうございました』
何となくいい感じで通信を終えた頃、私に誰もついてないと気づいた侍女ズの三人が、慌てて入ってきた。
ああ、良かった。
タマチャンと話してたのは見られてなさそうだ。
さあて、まだまだ、発音が苦手だけど、この国の言葉で話さないとね!
「ああ!姫様っ!お寂しかったでしょう?」
「すみません姫様っ!」
「てっきり、誰かがついてるものと!」
「ああ、うん、だいじょうびよ!一人遊びしてまちた!」と笑顔で答えると三人は何とも言えない悲しい顔をした。
え?何で~?
平気だって言ってるのにぃ~!
何かとっても可哀想なものを見るような眼差しになっていたのである。
あれれれれ?




