27.知られざる誕生日
バート兄様が私を妹と認めてくれた事でつい嬉しくて泣きに泣いた私は、なんと王であるバート兄様に抱っこされたままでスピスピ寝息を立てて眠ってしまったらしい。
後から転移したせいも、あり体に大変な負担がかかっていたのだろうと言われた。
そして目覚めた時には爺と三人の侍女たちドレン、ミーファ、ソラにこっぴどく叱られた。
「姫様っ!いきなり、転移の魔法を使うなど!しかも見よう見まねで!命に関わったかもしれないのですよ!」爺がそう言い、侍女たちはコクコクとすごい勢いで首を縦にぶんぶんと振りまくった。
ミーファ達の首がもげそうな勢いの頷き加減で、その本気さが窺えた。
「ごめんなしゃい…」しゅんとして下を向いたら爺とドレン達は「うっっ」と狼狽えた。
「そ、そんなお顔をしてもこれに関しては譲れませんからね!」と爺が言う。
うん、本当に心配してくれてるから言ってくれてるんだよね?うん、わかってるよ。
食堂のおばちゃんが言っていた。
ホントに大事に思ってない相手には怒ってなんてくれないんだって…。
「しかし、ラーラの魔力は凄いな…このわたしですら自分で転移したのは十歳を過ぎてからだったと思うぞ?他の誰かに転移させてもらった事はあっても自分じゃできなかった」
お父様がそう呟くと爺が、それに答えた。
「ロード様の場合はきちんと誕生日ごとに魔力測定をされておりましたから!だからこそ、十歳になってからようやく転移することを許されたのです!それまでは魔法を習うことも止められておりましたよ!」
「な?ラーラ、そういう事だ!元国王のこのわたしでさえだ!そのくらい大変な事なんだぞ?」
「あい、ごめんなしゃい」
「あ、じゃあ、姫様もお誕生日ごとに魔力測定をしませんと!」とミーファが言った。
ドレンとソラも頷く。
「そう言えば、姫様のお誕生日っていつですか?」
爺が聞くが、そんな事聞かれても分かる訳がない。
細胞の数とか測定すれば大体の予測はつくだろうがあくまでも予測だしなぁ。
「え?…しらにゃい…」
「「「え?」」」
そう、前世でも正確な自分の誕生日など知らなくて良く分からないので、大体、正月ごとに年を数えてたっけ…。
「ロ!ロードさまっ!父親の貴方様も姫様の誕生日を知らないのですか?神殿では聞かなかったのですか?」
「や、まぁ、そうだな…知らんな」
「「「ひ!ひどいっっ!」」」
あ…爺と侍女たちのお父様を見る目が凍りついた。
「あ、あ~そうだ、じゃあ、私と初めて会った日を誕生日という事にしないか?」
お父様は思いついたようにポンと手をついて言った。
ちょうど”卵”から出た日である。
なるほど!うん、ちょうどいいかも?
卵から孵った日…みたいな?
「そんな、てきとうな!」と爺や、ミーファ達は不服そうな顔をしたが私はご満悦である!
何しろ初めて、ちゃんとした?誕生日をもらえる?のである。
「誕生日!決まって嬉しいにょ!」
「よし!じゃあ、遅ればせながら一昨日の誕生日祝いと魔力測定は、今日やってしまおう!」
「えっ?いいの?」私があからさまに嬉しそうな声をあげると、皆は「「「「もちろん!」」」」と返してくれた。
ああ、まじで嬉しい!そう思うとまた泣けてきた。
どうやら、やはりこの体は涙腺が、やたら弱いようである。
「あ!ありがとうなにょ~!」と、泣き笑いしながら伝えると皆はちょっと驚いたような顔をしてから笑顔で頭を撫でてくれた。
そのあとは、皆、何か物凄い勢いで準備をしはじめ、私はぽつんと部屋に取り残されたのだった。




