022.可愛いは武器であり鎧である
翌日目を覚ました私は、しばらくベットの上で呆けていた。
『可愛いは正義だ!』と誰がいったか叫んだか!分からないし知らないが、私は思った。
『可愛い』は、武器であり鎧である!
攻撃は最大の防御と言うが、まさしくそうだ!
この見た目のはなつ可愛さと言う先制攻撃でノックアウトされた皆さんは、それはもう優しく甲斐甲斐しく世話をやいてくれる。
おじ様は今日は、私の事でお城になにやら顔を出すと言っていたので戸籍とか何かの書類の手続きに行ったのでしょうが、出がけに私と離れるのが心配だと名残惜しそうでした。
(ちょっと可愛いとか思ってしまった)
私の今のこの姿は元の私、桐生綺羅の細胞をこの世界の魔力を含んだ素粒子…魔素と混ぜ合わせて人工知能タマチャンに作られたものだ。
ちなみに、素粒子とは、あらゆる物質を形作る最小の単位の物質である。
人も物も草木もすべてがこの素粒子の集合体である。
その副作用とも言える効果が私のこの髪色や透けるような肌な訳だが、実際問題この副作用?的超絶な可愛らしさには、随分助けられている気がする。
皆が皆、私を擁護しようとしてくれるなんて…。
前世の見てくれの冴えない私だったら見向きもされず…いや、不審者として捕らえられてたかも?
まあ、(しつこいようですが)三十二歳のおばさんだったしね。
髪色くらいは標準にしてほしかったけど、こればっかりは、しょうがない。
だって副作用だしね。
そんな事を思ってため息をつくと、そのため息を聞いて部屋の隅っこの方に控えていた執事のセイバスさんが、とんできた。
「姫様、いかがしました?」
「ん、何でもないでしゅよ?」
「本当ですか?昨日はいきなり転移など、その小さな身体に相当な負担がかかった筈ですし、お疲れでしょう?」
「うううん?全然でしゅよ!昨日、ふかふかのお布団気持ちよかったでしゅ」
相変わらず、なかなか”す”の発音が上手く行かない私は照れ隠しで満面の笑みを大放出!
『笑って誤魔化せ!』である!
これは、前世で食堂のおばちゃんから伝授された必殺技だ!
初めて研究所の外の世界に出て一般人と関わった時も、研究のため言葉もろくに通じないジャングルの奥の集落に行った時も大変役立ったものだ!
思えば食堂のおばちゃんは私の心の師匠だった!
常々『笑う角には福来る!』と言っていた!
やはり、おばちゃんは偉大だった!
その証拠にほら、セイバスさんも私の笑顔につられて、それはそれは良い笑顔になってるもの!
うん、うん?でも顔が赤いけど大丈夫かな?
思うんだけど、この世界の人達って赤面症の人が多いのかな?
動悸息切れも激しそうだし心配だ。
動脈硬化とか心配だなぁ。
もしかしてここの食事、食生活大丈夫?塩分とりすぎとか…。
そんな事を考えているとセイバスさんが両手を組んで私に懇願してきた。
「姫様!わたくしのことは、どうぞ爺とお呼びくださいませ!」
「え?じぃ?でちゅか?でも、わたちのようなちびっこが、しちゅれいではありませんか?」
「何をおっしゃいますか?姫様はロード様のお子様なのですから!」
「んんん?ひめしゃまちがゆの!ラーラなの!おじしゃまってえらいのでしゅか?」
「姫さまですよ!ロード様のお嬢様なのですから!それに、おじ様だなんて!可哀想にそうに!お父様とおよびしていいのですよ?昨日、ロード様もおっしゃっていたでしょう?」
そうでした!
そういう設定でした。
昨日もさんざん”お父様”と呼ぶようにおじ様に言われたのだ。
三歳の脳みそにひきずられてなのか、記憶力が以前(前世)より悪いみたい???
まぁ、”卵”から再生したばっかりだしね。
昨日は、おじ様が私が今の三歳の年になるまで自分の子供だと知らされずに育てられていたせいだと誤魔化してくれてたけれど…。




