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021.初めての転移

 ラーラという名前を貰って私は新しい人生をこの世界で生き抜くと心機一転、志新たに気合をいれまくっていた。


 さて、どうしたものか…と思っていたらルゼルジュおじ様が、家に連れていってくれるといった。


「ラーラ、わたしには現在、妻はいないが、息子が二人いてな、一人は既にわたしの跡を継いで国の仕事をしていて、もう一人は全寮制の学園に通っているんだ」


 ほう、お子様がいるのか、国の仕事って公務員?

 安定してますね?

 しかし既にご隠居さんの身でしたか?あれ、じゃあ今の考古学者っていうのは第二の人生ってやつですか?

 はやっ!この世界って、そういう感じ?

 すごいな!

 それに、私がおじ様の子供になると言う事は必然的に兄弟が出来るという訳か?


「わたしに、おにいしゃまが、できゆのですか?」

 そう聞くとおじ様はにかっと笑った。


 思わずドキッとしてしまう。

 これがギャップ萌…と言うヤツなのだろうか?

 渋いおじ様の無防備な笑顔!何かグッと来るものがあり胸が苦しくなるよ!(ごめん、邪な三歳児で)


「おお!そうだ!ラーラは、賢いなあ!」


 そう言ってひょいと抱きかかえられて、おじ様は転移の呪文を唱えた。


 目の前が、きらきらと輝きだした。

 おおお!ファンタジーだ!

 私は初めての魔法『転移』と言うものに、ドキドキワクワクしていた。


 ***


 ほんの数秒の事だったと思うが、気が付くと初めて見る場所というかお部屋にいた。


 まぁ、どこに出てもほとんど初めての場所なのだが…。


 しかも、その場所は、伯爵令嬢であるサラさんのお部屋より更に立派なお部屋だった。


(おじ様、何者?考古学者ってそんなに儲かるの?)とか思った。


 しかし、初めての転移で、私はものすごく気持ち悪くなってしまった。


 高速エレベーターで移動したような浮遊感とブランコで揺られ過ぎたような、もしくは船酔いとか車酔いしたようなそんな感覚だ。


「う」私は口を押さえた。


「う?」と、おじ様が不思議そうにこちらを見た。


「うぇぇぇぇぇぇ」


 おじ様ごめんなさい…。

 めっちゃ吐いてしまいました。


 不幸中の幸いというか私の胃の中に食べ物はほとんどなかったのが、せめてもの救いでしょうか?


 カプセルの中で精製された人口体液が胃の中に詰まっていたせいで無味無臭?に近く、いわゆる一般的なゲロよりは…まし…だった?はず?と思いたい。


 私の嘔吐物をかぶったおじ様は、びっくりした様だが嫌な顔はしなかった。


 尊敬ですっっ!

 尊敬ですよ!おじ様っ!

 私は心の中で叫んだよ!


 おじ様は、真剣な顔で私の事を心配しているようで、慌てて人を呼んだ。

 そりゃーもう慌ててたさ!


 側にある呼び鈴を激しくならすと足早に数人の使用人らしき方々が入ってきた。


「セイバス!医者だ!いや、まず寝床だ!」


 セイバスと呼ばれたお爺さんは、おろおろしながら私に目をやり、驚きの声をあげた。


「そ、そのお子様は!?」


 混乱気味のセイバスさんへ私は慌てて声をかけた!

 年寄りに心配かけちゃいけないよね?


「だ、だいじょびなの!お医者しゃん、いらないの!お水ほしいの」と私が言うと、おじ様とセイバスさんは、側にいた女性の使用人の人に水とタオルを持って来るように言って、手近な部屋のベットに寝かせてくれた。


「ごめんなしゃい。おじしゃまの服、汚しちゃって」

 しゅんとして私が謝るとおじ様は、私の頭を撫でながら笑った。


「そんなの気にするな!こんなの全然平気だから!それより大丈夫か?」と言いながら使用人さんが持って来てくれた水をくれた。


 両手で水の入ったコップを受け取りこくこくと飲み干す。


 ぷはっと小さく息をついた私は使用人さんに向き直り、お礼を言った。


「うん、もう大丈夫でしゅ!お水ありがとうございました!」


 そう言って精一杯の笑顔で、コップを側にいた女性の使用人の人に渡すと、女の人は何故か真っ赤になって?はわはわしながら、コップを受け取った。


 ん?


 吐いたりしたからドン引きされてるのだろうか? 


 いや、その割りにはしっかりと距離をつめてコップを受け取ってくれていた。


 頑張って我慢してくれたのかもしれない。

 いい人だ。


 そして、人心地ついた私におじ様は尚も心配そうに声をかけてきた。


「ほ、本当か?しかし、いきなり吐くなんて…まだ調子が悪いのか?」


「ううん?”転移”って初めてで酔っちゃったみたいでしゅ」


 私のその言葉に使用人?のお爺さんが叫んだ!


「”転移”ですって!?」


「ロード様!こんな小さなお子様を転移させるなんて!」


「えっ?だ、ダメだったか?」


「ダメに決まってます!下手したら死んでますっ!」と使用人らしきお爺さんは、おじ様をしかりつけていた。


 周りの女の人達も真っ青になりながら首を縦にぶんぶん降っている。


「たとえ、本人が魔法を使わなくても転移するには最低限の魔力を有する者でなければ無理なのですよ!生まれつき魔力が豊富な者など殆どおりません!生まれつき魔力の豊富な王族ならばともかく!むしろ、生きてこのくらいで済んだのが奇跡です!」


 おぉぅ、私は死ぬかもしれなかったってか?

 いやいや、大丈夫だよ。

 車酔いくらいのもんだよ。


 いや、それよりは、ちょっとキツかったけど。

 初めて飛行機に乗った時くらいかな?乱気流に入っちゃった時の感じ?


 本当にやばかったら、この腕輪が赤くなって知らせてくれるしね。

 腕輪が体調管理までしてくれるなんて本当に凄いよね。


 いや、それより、『ロード様』って?

 私にはルゼルジュおじ様が、ロード様って呼ばれた方が気になるよ!


「おじしゃま?ロードって?」


 そう言いながら怒られているおじ様の服の裾を上目使い気味に、つんつんと引っ張ったら何故か周りの使用人の人達から変な声があがった。


「「はぅっ」」


「「「うぉっ」」」


 えぇ~?何ぃ~???


 ここの人達、集団で何か変な病気なんだろか?顔も紅いし涙目である。


 ちょっとドン引きしてしまった…いや、心配になった私である。

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