019.ラーラの親権争い?
どっちが私の後見人になってくれるかという現状の問題は???と私が不安になっていると、なんとメイドさんから、声があがった。
「お二人とも、落ち着かれませ!とにかくラーラ姫様の今後の事が先ですわっ!」
おお、冷静な判断ありがとう!
もう、いっそメイドさんの子でもいいんですけど…。
あと、姫様って何?
「ラ、ラーラ、心配しなくてもおじさんの奥さんは、十年以上前に亡くなってるんだよ。わかるかな?死んじゃっていないんだ。だからその、とにかく、異国で生まれたおじさんの子供って事にしちゃえば、その髪色も瞳の色も遠い国の異国人との血のせいって事に出来ると思うんだよ」
なんと…そういう事でしたか…。
さすがは、おじ様です。
とっさにそこまで考えられるとは!
しかし、奥様は昔に亡くなっておられたのですね…。
まだ若かったでしょうに…。
それは、なんというか…本当に…ご愁傷さまでした。
私には物ごころついた頃から家族もいなかったし恋人もいなかったから分からないけど、いたものが、いなくなるなんて悲劇にちがいない。
私など食堂のおばちゃんが死んだと思った時ですら超絶悲しかったのだから、きっと想像を絶する悲しみだったに違いない。
「おじしゃま、寂しい?大丈夫?」私はつい涙目でそう言った。
子供の体のせいなのか、どうも涙腺が弱いようだ。
前世では赤ん坊のころくらいにしか流さなかったであろう涙がにじむ。
「「「!」」」
「まぁ…自分こそこんな見も知らない世界で目覚めて不安でしょうに…」
「なんて優しい子なんでしょう」
あ!サラさんとメイドさんがいきなり涙目に!
な、泣かしちゃった?あああ、ごめんよぉ~。
泣かせたかった訳じゃないんだよぉぉぉ~。
「わたしは、もともと、ひとりだから、だいじょうぶなにょ…いたひとが、いなくなる方が可哀想なにょ」
そう言うといきなり、おじ様が私をがばっと抱きしめてきた。
おおぅ!照れますがな!(だって、おじ様しぶいんだもん。わたしゃ見た目は三歳だけど記憶は三十二さいですからね…ドキドキです)
しかし、何か、まずい事を言ったのかサラさんとメイドさんの目からは大量の涙が…。
あ、失敗した?心配ないって言いたかっただけなんだけど…う~ん、前世も今もコミュニケーションって難しい。
私のまわりは普段の会話が元素記号だったり数式だったりの奇人変人の学者や研究者しかいなかったしな…。
「おじさんが、ラーラのお父さんになるから、今からラーラはわたしの娘で家族だよ」とおじ様まで大量の涙を流している。
なんというか…三人とも前世で私に家族を持てと言った食堂のおばちゃんくらい情が厚くていい人みたいである。
他人の私の為に、いもしない悪者に想像で怒ったり泣いたり…。
私の知能のデータをとったり勉強だけしていればいいと言い放っていた大人たち(綺羅の育った天才児研究施設のスタッフ)とは全然違うなぁと思うと何だか心の中がほっこりした。
気が付くと私はおじ様の頭を小さな手でなでなでしていた。
なんか見た目が怖そうで渋いのに可愛い。
これが前世で噂に聞いた”ギャップ萌え”というものなのだろう!
う~ん、新鮮だ!
「おじしゃまと、かぞくになりゅの?」
「ああ、そうだ、家族だ」
「うれしい」私は純粋に喜んだでおじ様の首に抱きついた。
あっっ!やましい気持ちじゃないからね!
嬉しかっただけだからね!
だって!だってね?前世からずっと望んでも手に入らなかったものが転がり込んできたのだから…。
私がはしたなくも好みのおじさまに抱きついても許してほしい。
(まぁ、三歳児の私におじ様がときめく事はないでしょうけどね)
そして、私は、考古学者で魔法使い(それも宮廷魔導士という偉い人だったらしい)の娘になりました!
そう、私はこの時まだ知らなかったのです。
彼が宮廷魔導士なんて肩書よりも、もっとずっとすごい人だったという事を…。




