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016.銀色の卵~ルゼルジュ視点~1

 私はロード・キラ・シヴァネデル。

 つい先ごろまで、この国シヴァネデルの王だったが、王位を息子に譲り隠居した後、ルゼルジュと名乗り考古学者で魔法使いという設定で遺跡巡りをしている。

 ”宮廷魔導士”という肩書もしっかり付け足しておいたので国内であれば立ち入れない場所はほとんどないから研究三昧の夢のような毎日である。


 遺跡で発展された銀色の卵から銀色の髪の妖精のように可愛らしい子供が出てきたと騎士のボブとアルが慌てて知らせに来た。


 銀色の卵が発見されてから一週間、謎の生物が孵りそうな気配はなかったが、近隣の村人達がその大きさに一体どんな魔物が生まれてくるのかと怯えた為に、お飾りのつもりで三人の騎士を卵の側に配置した。


 リーダーの女騎士のサラと部下のボブとアルだった。

 そして、なんと卵から小さな女の子が出てきたというではないか!

 しかし、その少女は卵からでてくるとすぐに気を失ったという事だった。

 リーダーのサラはその少女を保護し近くにある自分の屋敷に連れ帰ったという。


 私はとにかくその卵の場所へもどったが、なんと驚くべきことに卵の中から少女が出たと聞いたのに卵はキズ一つない状態に戻っていた。


 そして卵を様々な方向から確認していた時に、少女を保護したというサラから”セーリィンフィーリ(魔法による通信)”が来た。


 淡い光の球体が現れその声を伝える通信の魔術である。


『ルゼルジュ様、緊急事態です!卵から現れた少女が目覚めたのですが、その卵が少女が生きる為の魔道具だったようです。少女は弱っています!直ぐに転移魔法で卵を我が屋敷まで持ってきて頂けませんか?』


 なんと!遺跡から現れた卵の中から現れた奇跡の少女の命が!

 そう言う事なら喜んで届けるとも!


 その少女にも会ってみたかったのである!


ターリエンゼ(転移)!」


 私は、そう唱えると卵に手をかざし、自分ごと卵と一緒にサラの屋敷に転移した。


 転移した先には、この世の者とは思えないほど愛らしい小さな小さな少女が何やら一生懸命自分の頬をつねっていた。


「そんな事をしたら痛いだろう?赤くなっている」


 そう声をかけると、その小さな女の子はいきなり現れたわたしに酷く驚いたようだった。

 魔法を見るのが初めてだったのだろうか?


 そして怯えたのか、卵を見てその少女は卵にかけよった。


 そして何と卵に少女が駆け寄ると卵がしゃべったのだ!


『オカエリナサイマセキラサマ!』と、良く分からない()()()()()のようだったが、あれは多分あの少女に向けられた言葉だったろう。


 そして傷ひとつなく元の卵の形だったそれは、少女を受け入れるかのように割れて開き、少女がその中に飛び込むと再びその入り口を閉じ僅かの隙間もないかのように閉じた。


 驚いたが、少女が生きる為に必要な魔道具であるらしい事を聞いた為、なるほどと一応は納得した。


 神々の文明と呼ばれしラビドニアの銀王の谷から発掘された銀に覆われし魔道具?

 いや、もしかして、これはラビトニアよりもっと前の太古の失われし高位魔法?


 失われた高位魔法の片鱗に触れたのだという感動が私を高揚させた。

 考古学者としての自分の知識欲もくすぐられた。


 そして私はサラ達と共に再び少女が現れるのを待った。

 二時間ほど後だっただろうか?大丈夫なのかと不安になってきた頃に再び、卵が割れ、少女が出てきた。


 そして、幼い可愛い声で話かけてきた。


「えっと…急に”卵に”帰ってごめんなしゃい…それと…さっきは、介抱してくれて、ありがとにゃの」

 まだ、小さいから上手く話せないのだろう、拙い喋りも可愛らしかった。


「どうしたの?どこか痛いの?」と、サラが聞き。


「お腹、すいてないですか?」と、侍女が優しく聞いた。


 私も少しでも少女の気持ちをほぐそうと、なるべく優しく体も低くして目線を少女に合わせて声をかけた。


「おじさんや、このお姉さんたちは味方だよ?怖くないから、こっちへおいで」


 少女は「あい」と可愛らしく答えると、なんと、この()()()近寄ってきた。

 自分で言うのも悲しいが私の体は大きく強面で子供受けしない。


 我が子ですらこのくらいの頃には、怯えられたものだったが…。


 いや、もしかしたら本当は怖いかもしれない?

 怖いからこそ、一番怖そうなわたしの言葉に従わないといけないと思ったのかもと思い至り、とにかくなるべく大きな声は出さずに穏やかに話しけなくては!と念入りに気遣いながら、さらに話しかけた。


「恐がらなくていいぞ、わたしは、ルゼルジュ。考古学者で魔法使いだ」

 そう言うと少女はコクリと頷いた。


 なっ!何なんだっ!この子供はっっ!!

 その仕草、ひとつひとつが異常なまでにに可愛らしい。


「ところで、記憶がないという事だけど自分の名前はわかるかい?」

 そう聞くと少女は答えた。


「えと…桐生(きりゅう)綺羅(きら)


「「「え?」」」


()()っていうの。きりゅうきら」


「「「キリィ・キラ?」」」


 わたしもサラも侍女も驚いた。

 それは、王家の名であり、その由来ともなった、女神の名前であるからだ。


 こんな幼子が…まさか伝説の女神?


 ははは…そんな訳ないよな。

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