王妃様の部屋に拉致されて、王宮に住むことになりました
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「母上何故ここに?」
アル様が困惑して聞かれた。
「そんなの決まっているでしょう。私のお気に入りのシルフィちゃんが襲われたと聞いて、いても立ってもいられなかったからよ」
笑って王妃様がおっしゃられたが、目が笑っていないんだけど。
「あなたに任せていたのに、何しているのよ。シルフィちゃんを危険な目に合わせて! さ、アル、あなたはさっさと仕事に向かいなさい。シルフィちゃんは私が預かるわ」
有無を言わせない口調で王妃様がおっしゃられるんだけど。
「いえ、母上。それは・・・」
アル様の抵抗虚しく、私は王妃様に捕まってしまったのだ。
やっとアル様との恥辱プレイは終わったのだが、今度は王妃様に拉致されてしまったのだ。
王妃様はアル様をあっさりと追い払うと、そのまま私を連れて王妃様の部屋に連れて行ったのだった。
そこは目の覚めるような立派な部屋で私はただただ目を見開いていた。
「パウラ、お茶にして」
王妃様が女官の一人に言われた。
「パウラ先生!」
私は驚いて女官を見た。パウラ先生は母が個人的に頼んでくれた礼儀作法の先生だったのだ。あの優雅な仕草は王宮の女官、それも王妃様付きだったんだ。私は納得した。
「あら、シルフィちゃんはパウラを知っているの?」
王妃様が驚いておっしゃられた。
「はい。パウラ先生には礼儀作法を教わっておりました」
「ちょっとパウラ、あなた、私に黙ってティナの所に行っていたなんて酷いじゃない。何故私も連れて行かなかったの?」
「妃殿下なら、そう言われると思いましたので、黙っていたのです」
「ちょっとそれ酷くない。あんた達がクラスメイトなように、私もクラスメイトなのに、私だけのけものにするなんて」
王妃様が怒って言われるが、パウラ先生は笑って流された。王妃様の権威も形無しなんだけど。何かここも元クラスメートの気安さがあるんだろうか? 私も、クラスメートのエンゲレンさんとかと仲良くしたら、王宮で働いた時、こんな感じになるんだろうか? もっとも、私が王妃になるなんてことはないから、同じ女官同士とか、もっと違う風になると思うし。もっとクラスメートとの交流に力を入れたほうが将来的には良いんだろうなってことはよく判った。
パウラ先生が高価そうなカップを出してくれてゆっくりとお茶を入れてくれた。
「さ、召し上がれ」
王妃様はそう言うと私を見られた。
「ありがとうございます」
私は王妃様にお礼を言った後、紅茶を見た。いい香りがする。
王妃様が口をつけられたのを見て私も口をつけた。
うーん、まろやかな香りが鼻を突いて、ゆっくりと頂く。
「シルフィちゃんのその優雅な仕草はパウラ仕込なのね」
「まだまだだと先生には言われていますけど」
王妃様の言葉に私が答えているとそこにノックの音がした。
「失礼します。騎士団長がいらっしゃっていますが」
別の女官が王妃様に告げる。
「ここに通して」
王妃様は優雅に指示された。
「失礼します」
そこに慌てた感じの騎士団長が入ってきた。話を聞き出そうとした私が今度は王妃様に捕まってしまって慌てて飛んできたという感じだ。
「ノルデン! あなた私の大切なシルフィちゃんを危険な目に遭わせたのですって」
「も、申し訳ありません」
王妃様の剣幕に騎士団長は慌てて謝った。
「私の意向に逆らって、シルフィちゃんに護衛を付けないなんてどういう事なの」
「も、申し訳ありません」
もう騎士団長としても王太子に叱責されるわ、王妃様に叱責されるわやるせないに違いない。
「今回の担当騎士には1ヶ月の減給と再教育を」
「・・・・」
王妃様の言葉に騎士団長は固まってしまった。
「何あなた、その不満そうな態度は。国境警備に送り出したほうが良くって?」
「いえ、そのようなことは」
「嘘おっしゃい。たかだか平民の警備と軽んじていたわね」
益々王妃様の目が釣り上がる。
「も、申し訳ありません」
騎士団長が頭を下げられるんだけど、まあ、私たちは今は平民だし、騎士達からしたら何故平民の護衛を騎士がしなればならないと軽んじられる理由もよく判るんだけど。
「あなた、この子がティナの娘なのを知っているの?」
「えっ、あのティナの娘なのですか」
驚愕した顔で騎士団長は王妃様と私を見比べた。
「何言っているのよ。ティナの旦那は財務省のバースでしょ。バースの家の娘なんだから当然ティナの娘じゃない」
「・・・・」
何故か騎士団長の目が死んでいるんだけど、何でだろう。
「王妃様、そのティナ様がいらっしゃいましたが」
その声にぎょっとた顔を騎士団長がされたんだけど。何故に?
「すぐに通して」
王妃様の声に慌てた感じの母がやってきた。
「妃殿下にあらせられてはご機嫌麗しゅう」
母が入ってくるなり王妃様に挨拶した。
「堅苦しい挨拶は良いわ。ごめんなさいね。ティナ。この度は王家の不始末で、バースとシルフィを危険な目に合わせてしまって」
なんと王妃様が立ち上がって頭を下げられたのだ。
それをぎょっとして騎士団長が見ていたが、慌てて頭を下げる。
「そのような。王妃様が頭を下げられるなど、お止め下さい」
母が慌てて言った。
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。まあ、かけて」
母は私の隣に腰掛けた。騎士団長は立たせたままだ。
「この、ドリースの馬鹿が、油断したからこうなったのよ。本当にいつも抜けているんだから」
王妃様の言葉に騎士団長も形無しだ。
母が微妙な笑みを浮かべたんだけど。
「まあまあ、妃殿下。ドリース騎士団長も彼なりに頑張っているのですわ」
パウラ先生がフォロー・・・・うーん、この言葉はフォローになっているのだろうか。
「本当に単純よね。ドリースも昔から私達に散々出し抜かれて」
「本当に妃殿下は容赦がなかったですから」
「あら、一番容赦がなかったのはティナ、あなたじゃない。ねえ、ドリース」
「そんな事ないですよね。騎士団長様」
「え、いやあ」
曖昧な答えを騎士団長がしているんだけど、何でだろう?
母の声がなんか怖いんだけど。騎士団長もなんか怖れているし、一体母は昔何やったんだろう?
「でも良かった。初めて、ティナが私の部屋に来てくれて」
満面の笑みを浮かべて王妃様が言われた。
「今まで、何度誘っても来てくれなかったのに」
「平民の分際で、このようなところに来るなど畏れ多くて」
母が言い訳するが、
「あーら、ティナ、あなた、もう、子爵夫人になるんだから、気にする必要はないわ。それに安全の面からもしばらくここに住むことになるのだから」
「えっ、何を言っているのよ」
驚いた母は友達モードに戻っていた。私も固まる。王宮に住む? 私達が?
驚愕の話なんだけど。
「だってまだ黒幕が捕まっていないもの。あんなところにおいておいてあなた達を危険な目に合わせる訳にはいかないわ」
「いや、でもそんな」
母は必死に抵抗しようとするんだけど。
「だって仕方がないじゃない。子爵家の家に引っ越すまでは安全面が保証できないもの。でないと今度は騎士団長に送り迎えさせるわよ。ね、ドリース」
「いや、まあ、ご命令とあれば」
王妃様の言葉にドリースは口を濁した。
王妃様は何言っているんだ。そんなの絶対に無理に決まっているだろう。
「そんなの出来ないでしょう。だから、ティナ、申し訳ないけれど、騒動が落ち着くまではコチラに部屋を用意したから、そこに住んでね」
王妃様はいたずらっ子のように微笑まれたのだった。
嘘ーーー! 王宮に住むことになってしまった。私達はただただ呆然としたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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