なんか無理やりアル様の友達にされてしまったんだけど、良かったんだろうか？

うーん、友達だから良いよね。恋人として付き合っている訳でもないし。

まあ、平民の私とお貴族様のアル様が付き合うなんてとてもおこがましい事だし、最後は身分の差で別れるしかないのだ。お友達になったタチアナとも学園の間だけの付き合いだ。まあ、王宮に出仕すればまた会う事があるかもしれないけれど、その時は単なる一文官と高位お貴族様だ。身分はぜんぜん違うはずだ。そう、卒業したら友達ではいられないのだ。

そういえば母からは、学園にいる間にできるだけ多くの平民の男の子と親しくなって、その中から相手を探すのよ、と言われていた。やはり平民の相手は同じ平民が良いのだ。それは父と母を見てもよく判る。

しかし、しばらくタチアナ様の追っかけしていたから、平民の子らと全然知りあっていなかった。そろそろ、そちら方面もやらないといけないのかも。

と思ったのだ。

でも、授業中は兎も角、昼休みになった途端にタチアナが、また、迎えに来てしまったのだ。

「さ、シルフィ、お昼に行くわよ」

そう、公爵令嬢様に強引に誘われれば、どうしようもなかった。私はそのまま食堂に連れて行かれたのだ。

そして、食堂に行くと

「シルフィ、タチアナ嬢、こっちだ」

アル様が大声で呼ばれた。みんなの特にお貴族様の令嬢方の視線が怖いんだけど。皆の前で大声で呼ぶのは止めてほしいんですけど。

呼ばれたので仕方なしに私たちはそちらに向かった。

クンラート様も合流されて、結局4人で食べる。

基本学園の食堂の料理は肉か魚だ。私にはどちらも結構美味しいと思うんだけど、お貴族様にとってはどうなんだろう。青髪の山姥は味が合わないので専属のコックの作ったお弁当を毎日持ってきているとか。

話を振ると

「いや、俺は別にこの味でいいけれど」

アル様が答えられる。

「私も大丈夫よ」

「俺も別にこんな感じでいいと思うよ」

なるほどこの3人はまだ庶民派らしい。

「シルフィは？」

「私はもう少しお昼は、軽めでも良いかもしれません」

そう、私には多すぎるのだ。

「シルフィはちょっと痩せ過ぎじゃない。もう少し食べないと。アル様もそう思われるでしょう」

タチアナがアル様に振ってくれるが、

「いや、別にかまわない。俺はあるがままのシルフィで良いんだけど」

私はその言葉を聞いて赤くなった。

「ふう～ん、クンラート様はどう思われます」

ちょっと自分の意見に賛同しもらえなくて機嫌を損ねたタチアナがクンラートに聞いた。

「えっ、俺は別にどちらでも良いんじゃないかと」

「何それ。どっちかにしてほしいんですけど」

どっちつかずの回答に更にタチアナはむっとするんだけど

「いや、俺はタチアナ嬢以外の女の子のことはそんなに気にしていないから」

クンラートはなんか聞いているこっちの方が真っ赤になりそうなことを言ってくれた。もうご馳走様。私はお腹いっぱいになった。それを聞いてタチアナも赤くなっているし・・・・

「あれ、クンラート様は今日は嫌いなほうれん草を残していらっしゃらないんですね」

私が斜め前のトレイを見て言うと

「この前、お前に指摘されたからな。そう言う事を聞くと好き嫌いはいけないと思ったんだよ。それよりも、アルにほうれん草が残っているぞ」

クンラート様が指さした。

「アル様。好き嫌いはだめですよ」

私がムッとして言うと、

「苦手なものは仕方がないだろう。シルフィが食べさせてくれたら食べるけど」

「言いましたね」

私はそれを聞くとアル様のほうれん草をスプーンに山盛りにしてアル様の口の中に放り込んだのだった。

「えっ」

タチアナが目を丸くした。

「きゃ、嘘ーーーー」

「あの女、アル様に食べさせたわ」

私は外野の声を聞いて初めてやってしまったことに気付いてしまった。

「すいません。つい弟にいつもやっていたので」

私は真っ赤になって言い訳した。

「いや、別に良い。まさか本当にやってくれるとは思ってもいなかったから」

アル様も赤くなっておられた。

「シルフィ、弟ってもう結構大きいじゃない。まだそんな事しているの？」

呆れてタチアナが言ってきた。

「私、片付けしないといけないから、遅いと困るのよね。弟は人参が嫌いなので、時間がない時は強引に口の中に放り込んでいるのよ」

私は何でも無いことのように言い切った。

「あのピンク頭。私のアル様になんてことしてくれるのよ」

遠くから山姥の怒りの声が聞こえたように思えたのは気のせいだろうか？

何かただで済む気がしなくなってきたんだけど・・・・