侯爵令嬢に虐められたので言い返したら、悪役令嬢に気に入られてお屋敷に連れて行かれました。
私はその令嬢の言葉に唖然とした。
アル様から婚約破棄されたところだって聞いたのに、嘘だったんだ。何故かそのことに少しショックを受けている自分がいる。平民の私には元々無理なのに・・・・
だからアル様に一緒のパフェはまずいって言ったのに。婚約者がいるなんて知らなかったわよ。
「ちょっと黙っていないで何とか言いなさいよ。私という婚約者がいながらアル様とジャンボパフェを分け合いっこするなんてどういう事なの?」
令嬢は普段は青髪の美人だと思うんだけれど、逆だった青い髪、つり上がった瞳、さながら青い髪の山姥だった。そう、後でアル様に言ってしまったがために、この令嬢は可哀想に、あだ名が青髪の山姥になってしまったのだ。本当に悪いことをしたと後で思った。
「その文句はアル様に仰ってください。私は誘われただけですから」
私はいけしゃあしゃあと言ってやった。だって事実だから。
「はああああ! そんなのアル様に言えるわけ無いでしょう」
青髪の山姥が言うんだけど?
「何でなんですか? 婚約者なら文句は御本人に言えるでしょう」
私がよくわからないという顔で言う。
「あなた、侯爵家の私、ステファニー・ソーメルスに逆らうっていうの?」
青髪の山姥が更に髪を逆立てて言うんだけど、それを私に言われても困る。
「そう言われても、そもそも私は、アル様に、婚約者がいらっしゃったらまずいんじゃないですかって聞いたんですよ。なのに、アル様は今は婚約破棄されたところだから婚約者はいないとはっきり仰ったんですけど。貴方様が婚約者と言われるなら婚約破棄されたんではないんですか?」
私はそこまで言われたので聞いてみた。そうだ、婚約破棄したのなら関係ないはずだ。
「そんな訳ないでしょう。私は婚約破棄はしていないわよ」
「じゃあ、婚約破棄されたとアル様が勘違いされたというのですか。それならばアル様に早急に訂正された方が良いですよ。本人は完全に婚約破棄されたつもりみたいでしたから」
私が親切に言って上げた。アル様が勘違いしていなければ、こんなことはしなかったのだ。
「そんなの言えるわけないでしょう。私は婚約破棄されたアル様の婚約者候補の筆頭なのよ」
ん? なんか侯爵令嬢のいう事は違ってきているぞ!
「えっ、じゃあまだ候補でしかないのならば、婚約者じゃないんですよね。じゃあ、さっきは婚約者だと嘘を言われたのですか」
「嘘じゃないわよ。今、お父様達が詰めているところよ」
青髪の山姥が慌てだした。
「でも、大公殿下のご子息のクンラート様も、公爵家ご令嬢のタチアナ様もその場にいらっしゃいましたが、何も訂正されませんでしたけど。特にそこまでお話が進んでいるのならば、クンラート様が訂正されたのでは」
私は至極まっとうなことを言ったと褒めてあげたい。
「何ですって、あなた私が嘘を言っていると思うの」
いきり立って青髪の山姥がまた叫びだす。
「それは判りませんが、高位貴族の方の言うことを信じろとおっしゃるなら、侯爵家よりも大公家や公爵家のほうが上だと思うんですけど、私何か間違っていますか」
侯爵家令嬢がなんか言っているけど、更に高位貴族の大公家や公爵家をだしたら文句は言えないはずだ。私もそれくらいは考えるのだ。
「な、何ですって、あなた平民のくせに侯爵家の私に逆らうっていうの!」
雲いきが悪くなってきたので、青髪の山姥は誤魔化してきた。だから、大公家や公爵家のほうが侯爵家よりも上なんだって。
「私の言うことを聞いておられないのですか? 私は高位貴族の言うこと聞けと貴方様がおっしゃるからあなた様よりも更に高位貴族の方の言うことを聞くって言っただけなんですけど」
私は青髪の山姥を睨みつけてやったのだ。
「な、何ですって」
言い返されるとは思ってもいなかったのか、青髪の山姥は震わせて怒っている。これはあの手で叩かれるかな。その場合は反撃しても良いんだろうか? 前世では取っ組み合いの喧嘩もしたのだ。侯爵令嬢なんてやわなお貴族様には取っ組み合いでは負けないけれど。私はやる気満々だったのだ。
「ふっふっふっふっ」
後ろから突然、笑い声が聞こえた。
「タチアナ様」
ムッとして青髪の山姥は唇を噛んだ。
「ステファニー様。あなたの負けよ。シルフィの言うことが正しいわ」
「な、何ですって。私が間違っているというのですか?」
「だって、ここにシルフィを連れてきたのはアル様ですし、分け合いっこしようと言われたのもアル様よ。シルフィは何も悪くないわ」
「しかし、アル様の婚約者候補の中で婚約者のいない高位貴族は私くらいしかいないんです」
「でも、それを決められるのはアル様であってあなたではないわ。シルフィに絡んだなんてアル様に知られたら、あなたの立場が悪くなるのではなくて」
「・・・・」
「お嬢様」
何も言えなくなった青髪の山姥に後ろから侍女らしきものが声をかけてくる。
青髪の山姥は唇を噛むと、
「失礼いたしました」
とタチアナ様にだけ礼をして立ち去っていった。
失礼な態度をとった私には何の挨拶もなしだ。
「何なのよ。あいつ、本当に失礼な青髪の山姥ね」
私は思わずムカついたので、言ってしまっていた。
「あ、青髪の山姥って、シルフィさん。あなた、本当に怖いもの知らずね。ステファニーを山姥って呼ぶなんて」
そう言うとタチアナ様は吹き出された。
「えっ、いや、その」
私はまずいことを言ったと気付いた。流石に侯爵家のご令嬢を山姥って呼んだのはまずいだろう。
「すみません。つい言ってしまいました」
私が素直に謝る。
「まあ良いわ。失礼な態度を取ったのはステファニーなんだから」
タチアナ様はそう言うと
「でも、青髪の山姥・・・・」
そうつぶやいてまた吹き出された。
「ちょっとタチアナ様」
「ごめんなさい。これだけ笑わされたのは初めてよ。あなた本当に面白いわね」
笑いながらタチアナ様は言われた。
「気に入ったわ。あなたの夢のことも聴きたいから、私の家にちょっと遊びにこない?」
戸惑う私はそのままタチアナ様の馬車に乗せられていきなり公爵家にお邪魔することになってしまったのだった。
1回目のザマーです。面白かった突きが読みたいと思われた方はぜひともブックマーク、評価よろしくお願いします!




